2010年4月アーカイブ
オールオンフォーは、天使か悪魔か?
オールオンフォーという術式に個人的には疑問を感じています。
この術式は、4本のインプラントですべての咬合力を負担させるというもの。
この術式を積極的に行っている歯科医師は、メリットばかりを強調しますが、果たしてこの術式は患者さまにとって、天使なのか悪魔なのか。
実はこのオールオンフォーという術式は歯槽骨が十分に存在する患者さまが適応になる術式です。
というのも、このオールオンフォーという術式は、実は十分に使用できる歯牙を抜歯して、そこにインプラントを埋入することの多い術式なのです。
ちなみに、オールオンフォーでは、18ミリもの長さのインプラントが多用されます。
(4本のインプラントだけですべての咬合力を負担させるという時点で、径は太く長さも長いインプラントを埋入する必要があるのですが、歯槽骨が十分に存在する部位というのは、歯牙周囲に歯槽骨が十分に存在している部位なのです。)
私の中での歯科治療におけるインプラント治療は当り前のことですが、残存歯牙の保存に役立てるというものです。
すなわち、歯牙を可能な限り保存して、保存できない場所あるいは、すでに欠損となっている場所にインプラント埋入を行い、残存歯牙の保存に役立てるというものです。
インプラントの本数を少なくするために、保存できる歯牙を抜歯するというのは、私の中では本末転倒と言わざるを得ません。
しかも、何かしらの原因で4本のうちの1本が撤去せざるを得なくなった場合、そのままの状態にしておけば、それ以外の3本のインプラントも負担過重が原因でロストという結果になると考えられます。
4本という本数は全体の咬合力を支えるうえで、おそらく最低限の本数だからです。
(私が、"おそらく最低限の本数"という表現をする理由は、オールオンフォーで長期に安定した状態を維持できている症例もあるからです。)
個人的には、オールオンフォーという術式は、自然と数年前に耐震偽装でメディアに取りざたされた姉歯偽装事件を連想してしまいます。
(しかしながら、天然歯をそれほど重要視していない患者さまにとっては、少ないインプラントの本数で奥歯まで咬めるようになるということは朗報かもしれません。
この場合は、オールオンフォーは患者さんにとって"天使"なような存在と言えるでしょう。)
話は少しそれますが、インプラントが撤去されるときに、何が原因となるのでしょうか?
その原因には、インプラント周囲炎やインプラント体の破折などが挙げられます。
インプラント周囲炎の場合、歯周病と同様に、辺縁骨からバクテリアによりダメージを受けますので、あまりにも頻繁にインプラント周囲の軟組織が炎症を起こす場合には、インプラントを除去し、それとともにインプラントの再埋入が必要となるからです。
(もちろん、インプラント体の破折の場合にも、再埋入が必要となるケースも多いです。)
インプラント周囲炎が発生して、どうしてもインプラントを除去しなくてはならない場合、長いインプラントはそれ自体が"リスク"になります。
すなわち、可能な限り長いインプラントあるいは太いインプラントが埋入されている場合、インプラントを除去し、再度インプラントを埋入出来ないケースは少なくないからです。
やはりどこまで行っても、患者さまの価値観によって、治療のゴールが決定されるということには変わりはないのかもしれません。
私たち歯科医師はあくまでアドバイザー的な役割となるでしょう。
そして私の考える 患者さまにとって生涯にわたり最もリスクの少ない治療方針は、天然歯牙を可能な限り残し、歯牙が欠損している部位に対して、そこにインプラントを埋入することで、最大限咬合力を負担させることで、残存天然歯の負担を可能な限り増大しないことであると考えております。
今回はセラミックスによる審美補綴とインプラントという治療方針
セラミックスのセットがありました。
今回のセラミックスは下顎左側臼歯部。
この方は20年前に施術を受けたゴールドクラウンが虫歯になり、被せをやり直すことになった方です。
前回同様ゴールドクラウンを選択するという治療オプションもありましたが、『せっかくなので白いきれいな歯にしたい!』という希望で、セラミックス矯正の予定となりました。
この方は右側にも治療が必要なところがあり、大臼歯をしっかりと咬めるようにするために、インプラント治療を計画しております。
本当は前方歯牙の叢生を改善するために、歯列矯正もご紹介したのですが、今回はセラミックスによる審美補綴とインプラントという治療方針になりました。
代わりにというわけではないのでしょうけれど、この方のお子さんは歯列矯正で治療を進める運びとなりました。
やはり歯列矯正が最善とは分かっていても、成人ではセラミックス矯正とインプラントを併用したプランになることも少なくありません。
その方の価値観に合致したプランを選択していただければと考えております。
昨年インプラント治療を受けられた方も絶好調!
先日、仙台市内の百貨店に出かけたところ、遠くの方から『堀せんせーい!』という声が聞こえました。
振り返ってみると、昨年堀歯科医院でインプラント治療を受けられた新井陽子(仮名)様さまがいらっしゃるではないですか!
お話をしてみると、お口の状態もすごく調子が良かったので、病院の外にも関わらず、つい報告したくなったそうなのです。
話をお聞きする前の表情から、その方のお口の状態は概ね把握できましたが、それにしても最高の笑顔でした。
その方のお子さんも当院で歯並びのチェックを受けているのですが、今回はお子さん二人と一緒でした。
ついこの間までベビーカーに乗っていた女の子が、ちょっと見ない間に大きくなっていました。
小学校が春休みでなかなか歯科医院に来院しにくい状況かもしれませんが、ぜひ時間を作ってチェックに来院してほしいものだと思いました。
インプラント上部のセラミックスのセット
インプラント上部のセラミックスのセットがありました。
上顎大臼歯部のインプラント治療です。
抜歯を行うと、歯槽骨吸収は上顎洞まで進んでおり、不良肉芽を除去していくと上顎洞と口腔内が交通しているという症例でした。
根先が上顎洞に穿孔してはいるものの、上顎洞底の形態が湾曲の強い症例だったために、そこそこの初期固定を得ることが出来ました。
インプラントが上顎洞に迷入するリスクをはらんでいるために、最初から最後まで気を抜くことができないインプラント埋入オペとなりました。
そのような症例の場合、丁寧に不良肉芽を除去し、シュナイダー・メンブレンを丁寧に剥離していく必要があります。
剥離され、挙上されたシュナイダー・メンブレントと上顎洞との間にスペースを維持していると自然と骨に置き換わってくれるので、その部分に人工骨とインプラントをそっと差し込んでおくことになります。
自前の骨が十分ある場合の方がやはり早くインプラントが最終補綴まで移行するまでの期間が短いことが多いですが、期間を長めに設ければこのようなケースでも、インプラントはインテグレーションします。
今回はピエゾサージェーリーというイタリアから個人輸入した機器を使用して、低侵襲にソケットリフト併用のインプラント埋入を成功させることが出来ました。
咬み合わせについては、たまたま前後の歯の被せもやり直す予定となっていたので、金属ブリッジのプロビジョナルレストレーションを10カ月間使用しました。
インプラントがインテグレーションさえしてしまえば、最終印象までの期間はあまり必要はありません。
これまで構築してきた咬み合わせに変化を与えることなく、インプラント上部のセラミックスも咬合を付与しました。
これからは咬み合わせの変化をつぶさに観察していきながら、メンテナンスに移行します。
セラミックスのセットは、一見、インプラント治療のゴールですが、ある意味これからが始まりです。
Hさん、これからも一緒に歩んでいきましょう!