2011年5月アーカイブ
インプラントの難症例を前に
複雑な隔壁のある上顎洞への増骨処置を行うこととなりました。
上顎臼歯部には副鼻腔のうちの一つ、上顎洞があります。
上顎洞は上顎臼歯の歯根が中に入っている場合も少なくないため、抜歯をした時点で、お口と上顎が交通するのは珍しいことではありません。
またその時点でインプラントを埋入するために必要な歯槽骨量が不足することも多く、日本人での上顎臼歯部には上顎洞内への増骨処置は必要となることが多いのが現状です。
今回依頼を受けた患者さまの上顎臼歯部は、歯槽骨量が1ミリと極端に歯槽骨量が不足しているために、先に上顎洞内に増骨処置を行ない、治癒期間をはさんで、インプラント埋入を行なう予定となりました。
パノラマレントゲンでは隔壁の存在はある程度把握できましたが、ステントを装着してCTによるシュミュレーションを行なった結果、複雑に隔壁が入り込んでいることが3次元的に把握することができました。
この難症例に対して、うまく増骨処置ができたならば、インプラント学会で症例提示ができるくらいハイレベルのものであることが分かりました。
(私も様々な学会、あるいはセミナーで、多くのインプラントロジストとの発表を拝聴していますが、今回のケースを超える難易度のものを拝見したことがありません。)
前医からは『この部位にはインプラントはできない。』との説明があったそうですが、個人的には時間は少し多めに必要となるけれど、できないことはないだろうと考えています。
その日のうちに歯が入る即時負荷インプラント
今回のインプラントは下顎前歯部。
下顎前歯部には、解剖学的には大きな血管や神経がありませんが、歯槽骨の幅が狭いので、しっかりと歯槽骨内にインプラントを埋入することが肝要であると考えています。
今回は歯肉をめくらず(フラップレス)で埋入オペを行い、その後すぐに仮歯を入れる即時負荷インプラントを行いました。
インプラントは通常、歯槽骨と結合する期間には負荷をかけず、安静な状態で治癒を待つのが一般的です。
ただ、歯槽骨の質と量が十分ある場合には、埋入したその日に負荷をかける場合もあります。
負荷をかけるというのは、埋入したインプラントの上に仮歯を立てるところまで行なうということです。
臼歯部、特に上顎では困難な場合もありますが、下顎ではこの即時負荷は可能な場合も多いです。
全く歯がなかったところに、その日のうちに歯が入ることになるので、患者さまはとても喜ばれます。