2013年7月アーカイブ

固定性インプラント装置vs可撤式インプラント装置

Bryantらは、無歯顎者に用いたインプラントの上部構造にインプラントの部位を関連づけて調査し、固定性補綴装置では下顎より上顎の方がインプラント生存率が低いこと、上顎では固定性補綴装置よりも可撤性補綴装置を用いた方がインプラント生存率が低いことを報告した。

また、後者に関しては、可撤性補綴装置選択群では術前の骨量の不足が明らかになった。

(参考文献)
Bryant SR, MacDonald-Jankowski D,Kim K. Does the type of implant prosthesis affect outcomes for the completely edentulous arch? Int J Oral Maxillofac Implants. 2007; 22(Suppl): 117-139.


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やはり長期に安定したインプラント治療には、上顎が下顎に負けないような設計が不可欠です。

具体的には、上顎に固定性インプラント装置と下顎には可撤式インプラント装置といった設計にしたり、上下顎ともに固定性インプラント装置を選択するなら、上顎には下顎よりも使用するインプラント本数を増やしたり、しっかり増骨を行うといったような配慮が必要です。

2013年7月31日

hori (07:15)

カテゴリ:インプラントについて

喫煙はインプラント周囲炎の発症を31倍上昇!

Rinkeらは89名のインプラント患者を対象に、インプラント周囲疾患の横断的調査を行った。

歯周炎の既往がない場合は、プロフィラキシス(予防処置)を含むメインテナンスプログラムを実施し、歯周炎の既往がある場合は、サポーティヴぺリオドンタルセラピーを行った。

インプラント埋入後、最初の1年は3か月ごと、その後は6か月ごとにリコールし、2-11年後のインプラント周囲炎に罹患率を調査した。

その結果、89名のうち10名がインプラント周囲炎に罹患していた。

これら10名のうち2名は非喫煙者であるが、この2名はメインテナンスに定期的に来院していなかった。

残り8名は歯周炎の既往のある喫煙者だった。

また、喫煙はインプラント周囲炎の発症を31倍上昇させた。

(参考文献)
Rinke S, Ohl S, Ziebolz D, Lange K, Eikholz P. Prevalence of peri-implant disease in partially edentulous patients: A practice-based cross-sectional study. Clin Oral Implant Res 2011;22:846-833. 

2013年7月20日

hori (08:22)

カテゴリ:インプラントについて

インプラント治療よりも優先される治療とは

歯のないところにインプラント治療を行うことは必要なことですが、それよりもなぜその部分の歯を失うことになったかを考える必要があります。

堀歯科医院に来院される患者様のお口を拝見していると、歯にトラブルが絶えない方の多くは、前歯の働きが悪いために、奥歯の負担が大きくなりすぎていることに気づかされます。

一見歯並びが良いように見えても、咬み合わせの平面が左右で傾いていたり、その傾きが前後的に急峻な場合に、前歯と奥歯のバランスが悪くなっているケースが少なくありません。

そのため、私たち歯科医師には、インプラント治療を行う部分の骨の質や量を評価するミクロな視点と、顎関節を含めた、骨格的に無理のない状態にどのように近づけるかというマクロな視点の両方が必要となります。

例えば、何らかの原因で右咬み傾向が続いていた方が、歯根破折を起こして、右上の臼歯にインプラントが必要になったというようなケースを考えてみましょう。

この方の場合、他の歯の形態や位置、方向などを一切修正せずに、右上にインプラント治療を行うのが最もシンプルな治療計画ということになりますが、これでは数年前の右咬み傾向に戻るだけではないでしょうか。

次に起こりうることは、右上のインプラントにしっかりした治療を行えば行うほど、右下の天然歯が破壊されることが予想されます。

やはりなぜ右咬み傾向にあったのかを考えるために、歯と臼歯のバランス、左と右のバランスを診査・診断しなくてはなりません。

右に咬合力が集中することを少しでも回避するために、プロテクションスプリント(夜間の歯ぎしり・食いしばりでインプラントやセラミックスが破壊されるのを予防するために使用するマウスピース状の装置)を使用するのも重要ですが、まずは咬み合わせを可能な限り左右対象に近づけることが大切なのです。

そして咬み合わせを左右対称に近づけるためのツールとして、歯列矯正や補綴治療(被せ治療)、インプラント治療が存在するのです。

最初に"インプラントありき"ではないのです。




2013年7月 3日

hori (08:18)

カテゴリ:インプラントについて

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