2014年4月アーカイブ
チタンとジルコニアアバットメントにおける破壊抵抗
チタンとジルコニアアバットメントにおける破壊抵抗
in vitroにおいて、アバットメント破壊までの繰り返し回数の平均値は、チタンはジルコニアと比較して3倍の値を示し、平均荷重値ではチタンはジルコニアの2倍の値であった。
試料は、荷重により破壊を生じたと考えられる。
ジルコニアアバットメントを用いる際は、レギュラーサイズの単独埴立インプラントにおいて、付与すべき咬合力は低く設定されるべきであることが示唆された。
(参考文献)
Foong JK, Judge RB, Palamara JE, Swain MV. Fracture resistance of titanium and zirconia abutment : an in vitro study, J Prosthet Dent 2013 ; 109(5) : 304-312.
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審美領域のインプラント治療では、チタンアバットメントを用いた場合、金属の露出や粘膜から金属色の透過が起こる可能性があり、ジルコニアアバットメントが注目されるようになりました。
審美領域のインプラント治療では、チタンアバットメントを用いた場合、金属の露出や粘膜から金属色の透過が起こる可能性があり、ジルコニアアバットメントが注目されるようになりました。
ジルコニアは当初"ホワイトメタル"と呼ばれ、審美的で強度的にも満足のいくマテリアルということで華々しくデビューした印象がありました。
それでも、数年後ジルコニアが破折するケースが相次ぐ結果となり、今回紹介した文献でも、in vitroの研究ではありますが、チタンと比較して、脆弱であることが明らかになりました。
なお、データによると、ジルコニアアバットとチタンアバットで破壊されている部位が異なり、チタンでは、インプラントとアバットを止めるスクリューに関するトラブルやインプラント体の変形が特徴であるのに対して、ジルコニアでは、アバットメント自体の破壊が特徴的でした。
『新しいものが常に良い』とは限らないので、新商品を治療に使用する際には、細心の注意が必要だと今更ながらに感じました。
上顎シングルデンチャーは、インプラント希望者が多い。
上顎に多数歯が残存している場合、咬合力が強く、下顎顎堤の痛みがなかなか治まらないときがある。
下顎シングルデンチャーにおける痛みの原因は、強い咬合力と健康有歯顎者と同様のチューイングサイクルで食事をすることにある。
上顎欠損のシングルデンチャーケースの咀嚼サイクルは、いわゆるチョッパータイプ、上下タイプの下顎運動に対して、下顎全歯欠損では横からチューイングストロークが入る涙滴状の運動経路を取るといわれている。
これらの理由から、下顎シングルデンチャーのケースでは、咀嚼中の義歯に加わる側方運動力が大きく、義歯が左右に揺すられ、特に顎堤吸収が進んだケースでは、義歯の痛みが出やすい。
(阿部次郎の総義歯難症例 誰もが知りたい臨床の真実 より)
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この本には、このように書かれていますが・・・。
下顎には歯が10本近くあるのに、上顎は総義歯という方がいます。
そのような方は、咀嚼サイクルがグラインドタイプであるため、義歯が側方に揺さぶられやすい状態となっているのでは?と思います。
そのため、義歯の動揺で、顎堤粘膜に痛みが発生することも少なくありません。
また、そもそもご自分の歯を失った原因も、このグラインドタイプの咀嚼サイクルが関与している可能性が高く、歯を折ってくるタイプの患者さんです。
ちなみに、上顎シングルデンチャーの方は、その反対の下顎シングルデンチャーの7-8倍多いといわれています。
もちろん、同じくインプラント治療を行う場合でも、下顎シングルデンチャーの患者さんの方が、インプラントのトラブルは少ないと考えられます。
でも、インプラントの希望がある方の多くは、上顎シングルデンチャーのタイプの患者さんの方が多いのです。
興味深いところです。
発語運動を指標にした咬合再構成
顎位の修正を行った治療後では、咬頭嵌合位の中心と発語運動領域の中心が一致して正常な領域を占めるようになることが多く、顎偏位と発語運動領域の間には密接な関係があることが分かった。
診断の一つの指標になりうる。
(咬合再構成とその理論と臨床 より)
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インプラント治療希望で来院される方の多くは、歯がなくなるたびに咬み癖側が変化し、現在に至るケースが散見されます。
そのような咬み合わせで、歯のないところにインプラントを入れて、咬み合わせを構築しても、長期に安定した状態を維持できるとは思えません。
そのような際に、咬合再構成が必要となります。
簡単に言えば、咬み合わせの中心の位置を修正してから、インプラント治療に入るという治療です。
(今現在咬んでいる位置で、インプラントの咬み合わせを構築しないということです。)
歯がなければ、インプラントを交えた咬合再構成が必要となりますし、歯がすべて存在して、前後的・左右的誤差が認められるケースでは、歯列矯正が中心の治療計画となります。
ちなみ、先日、顔の歪みを主訴にした方が、矯正相談で来院されましたが、その方は、「発音がしにくい」という隠れた主訴もお持ちでした。
現在の咬み合わせの中心がずれが大きい場合には、「発音がしにくい」場合もあるのかと思います。
顎偏位症の人は、どこか引っ込み思案な雰囲気をお持ちの方が多いのは、そもそも発声しにくい体の状態となっており、声がちいさいのかも知れません。
インプラント周囲炎の原因菌は何なのか?
・歯周病よりもインプラント周囲炎で高く検出されたのは、Dialister spp.,Enbacterium spp.,Porphyromonas spp.であった。
また、歯周病では認められず、インプラント周囲炎で検出されたものは、Parvimonas micra, Peptostreptococcu stomatis, Pseudorami-bacter alactolyticus, Solobacterium moorei であった。
(参考文献)
Comprehensive microbiological findings in peri-implantitis and periodontitis.
Koyanagi T, Sakamoto M, Takeuchi Y, Maruyama N, Ohkuma M, Izumi Y. J Clin Periodontol. 2013; 40: 218-226.
・Staph. aureus, Strep. intermedius, T. forsythia の3種類がインプラント周囲炎との関連性が示唆された。
また、年齢、性別、性別、喫煙(経験)、歯周病の既往について調整して分析したところ、年齢、Staph. aureus, T. forsythiani にインプラント周囲炎との関連性が示唆された。
(参考文献)
Cluster of Bacteria Associated with Peri-implantits.
Persson GR, Renvert S. Clin Implant Dent Res. 2013 Mar 25. doi : 10.1111/cid.12052.
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『歯周病とインプラント周囲炎の原因菌は異なるのか?』という内容をテーマにした論文の紹介です。
二つの論文で、『どのような状態をインプラント周囲炎と規定するのか。』という基準自体異なるということと、さらに、対象とする細菌が異なるため、両者の結果が一致していないのだと考えられます。
将来、明確にどの細菌が、どの程度、インプラント周囲炎の発症に関係しているのかが分かれば、インプラント周囲炎への対処法も容易なものへと変わることでしょう。
鉤歯の歯冠歯根比が悪いケースでは、インプラントが推奨。
部分床義歯の支台歯の喪失について、Tadaらが、236床の部分床義歯の支台歯856歯を分析し、直接支台歯の5年生存率は86.6%であり、他の残存歯よりも喪失しやすいことを報告している。
さらに、部分床義歯の直接支台歯の生存率に影響を与える要因を多変量解析した結果、影響の高い順に、歯冠歯根比、根管治療、ポケット深さ、支台歯の種類、咬合支持であったとしている。
この結果を概論すれば、咬合支持や歯周組織の状態などの支台歯の状況自体が生存率と関係することになる。
(参考文献)
Tada,S.,Ikebe,K.,Matsuda,K.I.,Maeda,Y. : Multifactorial risk assessment for survival of abutments of removable partial dentures based on practice-based longitudinal study. J. Dent.,2013.
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部分床義歯の鉤歯(バネのかかる歯)が他の残存歯よりも喪失しやすいというエビデンスです。
また、その生存率に影響を与える因子中でも、特に"歯冠歯根比"が鉤歯の予後に大きな影響を与えることが明らかになりました。
鉤歯の歯冠歯根比が悪いケース(歯が骨の中に埋まっている量に対する、骨から上の部分が大きいケース)では、積極的にインプラントを使用する治療プランをが推奨されるかと思います。
手術前1週間、術後8週間禁煙で、インプラントの成功率アップ!
Geursらによれば、上顎洞拳上術を行った場合、非喫煙者と喫煙者とでインプラントの生存率は喫煙により約10%程度低下することが示されている。
Bainらはインプラント手術前1週間、術後8週間禁煙をさせることで成功率が向上したことを報告している。
(参考文献)
Bain CA: Smoking and implant failure : benefits of a smoking cessation protocol, Int J Oral Maxillofac Implant 11:756-759,1996.
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喫煙がインプラントの生存率に影響があるということは、古くから知られていますが、インプラントの成功率を成功させるために、「インプラント手術前1週間、術後8週間の禁煙」をすると効果があるようです。
ただ、9週間も禁煙ができるのなら、そのまま禁煙するのが一番だと考えています。
歯肉の厚みと、インプラントの埋入深度
Linkeviciusらは、インプラント周囲粘膜の厚みが、埋入から1年後のインプラント周囲での骨吸収に及ぼす影響を評価した報告で、インプラント周囲粘膜組織の厚さは、インプラント周囲骨の安定性に対して重要な影響を及ぼし、周囲粘膜の厚さが2.0ミリ以下の場合は、インプラントとアバットメントの接合部の位置に関係なく、平均で1.61ミリ骨吸収が起きるとし、一方、周囲粘膜の厚さが2.5ミリ以上存在するケースでは、骨吸収は平均0.26ミリ抑えられたとしている。
(参考文献)
Linkevicius T, Apse P, Grybauskas S, Puisys A.: The influence of soft tissue thickness on crestal bone changes around implants: a 1-year prospective controlled clinical traial. Int J Oral Maxillofac Implants. 24(4): 712-19,2009.
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インプラント治療を行う際に、歯肉の厚みが薄い方が、骨吸収の程度が大きいというエビデンスです。
ということは、歯肉が薄い症例の方が、埋入深度を深めにしなくてはなりませんから、もともと歯槽骨の高さが不足している方の場合では、増骨と歯肉移植の両方が必要となることもあるでしょう。
ただ、インプラントを希望される方の中で、「義歯がうまく使えなかった」という経過をお持ちの方の場合、歯肉が薄いケースは少なくありません。
また義歯になってからの期間が長期にわたっている場合は、歯槽骨の吸収の程度も、やはり大きくなりますから、「いつかインプラント治療を受けたい」とお思いなら、より条件の良い"若い時期"に行う方が良いと考えています。