2014年6月アーカイブ

10歳若返る方法

・MohindaとBulmanは、咬合高径を回復することにより、多くの症例で見た目が5‐10歳若く見えるようになったことを報告している。
(参考文献)
Mochinda NK, Bulman JS. The effect of increasing vertial dimension of occlusion on facial aesthetics. Br Dent J 2002 ; 192(3) : 164-168.
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インプラント治療で見た目が10歳以上若返るケースは、奥歯がないまま長期間経過したものを治療したケースです。
通常、奥歯がなくなると、垂直的に咬合力を受け止める力が弱くなるので、前歯が倒れる力がより多くかかります。
若いころはそうでもなかったのに、50歳を過ぎたあたりから、出っ歯になってきた方は、「奥歯がない」あるいは極端に「奥歯が低い」状態であるはずです。
また奥歯がなくなることで、"老け顔"になりやすい理由はどのあたりにあるのか考えてみましょう。
まず、奥歯がないことにより変化するのは、食事の内容です。
食べ応えのある食事は回避するようになりますから、楽に食べることができる炭水化物と脂肪の多い食事が多くなります。
(ここで、問題なのは、食事の準備をしている女性の多くは、自分の食べやすいものを家族に食事として出すので、家族全員がメタボリックシンドロームになりやすいということです。)
これにより、当然、体脂肪率は増加します。
("中年太り"という言葉がありますが、中年だから太るのではなく、中年になり、歯の治療をおろそかにしているから、太るのではないか?とすら思います。)
またそれだけでなく、咀嚼筋を鍛えることができないので、顎周辺に脂肪が付き、二重顎になります。
そして、さらに"老け顔"になる原因には、身体の姿勢があります。
咬み合わせと身体の姿勢には密接な関係があるので、身体の姿勢が正しい方向に変化していきます。
(大臼歯がなくなり、咬み合わせに問題を抱えている人は、姿勢にも問題を抱えるだけでなく、身体の重心が定まらず、どこかふらふらした印象があります。)
これらが、インプラント治療をすることで、10歳若返ることと関係していると考えられます。
また、インプラント治療を受ける方に共通する特徴とは、治療前の状態が肌の張りや艶がなく、死んだ魚のような目をしているという点です。
咬めないということが、どれほど身体の不調に影響を与えているかを考えさせられます。
健康などうかは、0.5秒で見た目で判断できますが、どこか問題を抱えている人のうちの何割かは歯の問題を抱えているかもしれません。

2014年6月30日

hori (08:17)

カテゴリ:インプラントと若返り

歯周病で歯を失い、喫煙をしている人は、インプラントを失う可能性がある。

6th European Workshop on Periodontology でのコンセンサスでは、インプラント周囲炎は細菌感染を伴う炎症と、それに続く支持組織の喪失であり、リスクファクターとして明らかなものは、1)不十分な口腔衛生状態、2)歯周病の既往、3)喫煙とされている。

糖尿病やアルコール過剰摂取等がリスクとなる科学的根拠は弱く、遺伝的素因、インプラント表面性状はまだ議論の余地があるとされている。
(参考文献)
Lindhe J, et al : Peri-implant diseases : Consensus Report of the Sixth European Workshop on Periodontology. J Clin Periodontol, 35(8 Suppl) : 282-285,2008.
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インプラント周囲炎に対しては、患者さんが"糖尿病であるかどうか"よりも"喫煙の有無"の方が結果に影響を与えることが分かりました。

2014年6月26日

hori (08:19)

カテゴリ:インプラントについて

酒飲みは、麻酔が効きずらい。

お酒を大量に飲んでいる人が麻酔が効きにくいのは、血液が酸性に傾いているためか、あるいは分解酵素が多いためだという考え方がある。
最近、この考え方とは異なるMTBC(1-methyl-1,2,3,4-tetrahydro-β-carboline)というアルカロイドが飲酒によって増加し、このMTBCが非イオン型麻酔薬の膜内流動性を阻害するために、麻酔効果が発現しにくくなることが分かってきた。
(参考文献)
林 秀明 : 局所麻酔薬の膜流動化作用とアセトアルデヒド-インドールアミン縮合物との相互作用. 岐歯学誌, 34 : 1-20, 2007.
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インプラント埋入手術の際に、麻酔が効きづらい方がいます。
また、効きずらい方でも、麻酔効果持続する方とすぐに麻酔がさめてしまう方がいます。
やはり一番治療がしにくいタイプは、麻酔が効きづらく、効いてもすぐにさめてしまう方です。
これまでの歯科治療の際に、『麻酔が効きづらかった』という経緯をお持ちの方には、お酒を大量に飲んでいるかどうかの問診を追加する必要があると考えています。
麻酔がまったく効かず治療ができなかった方でも、3日間断酒していただいた後に、インプラント埋入手術をすると、治療可能であったというケースもあるようです。

2014年6月20日

hori (08:50)

カテゴリ:インプラントについて

マイクロスコープがあっても、MB2は必ずしも治療可能ではない。

・Sempiraらのclinical studyでは、顕微鏡下で200本の上顎6・7に根管治療を行うも、MB2が治療できた割合は6で33.1%、7で24.3%であった。
しかも、それらは根尖から4ミリアンダーまでしか治療できなくても「治療された」とカウントしている。
また、MB2の出現率は、上顎6で約80%、治療できるMB2は約33%である。
(参考文献)
Sempira HN, Hartwell GR. Frequency of second mesiobuccal canals in maxillary molars as determined by use of an operating microscope : a clinical study. J Endod 2000 ; 26 : 673-674.
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歯科の技術は、歯科材料や機器の進歩とともに、技術改革を続けてきました。
ただその一方で、それらを販売する業者が、販売を促進する目的で、一部情報を歪めているように、個人的には感じていました。
これまで、マイクロスコープがあれば、例えば、根管治療の成績が格段に向上すると繰り返し、伝えられてきましたが、それが必ずしも正しくはないというエビデンスに出会うことができました。
業者にとって都合の良い医師・歯科医師が、バイアスのかかった情報を流し、多くの同業者がその情報に翻弄されてしまう。
幅広い情報収集が、患者さんの幸せにつながっているのだと痛感させられました。
根管治療の技術向上に努める必要はもちろんありますが、治らない根管治療を続けることは、患者さんの不幸につながる場合もあるということになります。
マイクロスコープは確かに根管内の状態がよくわかりますが、根管内をきれいにするのは、従来のツールです。
(歯科材料や機器は日進月歩ですが、歯内療法の基本的なところは、以前とあまり変わっていません。)
良く見えるけれど、内部をきれいにすることが困難なケースも少なくないのです。
外科的歯内療法をすればいいのでは?という意見もあるとは思いますが、外科的歯内療法に適さない歯牙部位や歯牙形態である場合や、3?ルールに従った結果、歯冠歯根比が悪くなるケースなどもあるので、適応症を見極めなくてはなりません。

2014年6月15日

hori (16:33)

カテゴリ:インプラントについて

重度歯周病患者では咀嚼によっても歯原性菌血症が生じる。

・重度歯周病患者では咀嚼によっても歯原性菌血症が生じる。
歯周病の重症度と咀嚼による菌血症(血中エンドドキシン量)の関係。 単位はpg/ml
歯周病の重症度(PIRI評価)   咀嚼前(n=67)  咀嚼後(n=67)  差(n=67)
低リスク(n=25)          0.62         1.8          1.17
中リスク(n=27)          1.33         2.4          1.11
 
高リスク(n=15)          0.56         6.1(p=0.037)    5.58(p=0.034)
(参考文献)    
Greerts SO, Nys M, De MP, Charpentier J, Albert A, Legrand V, Rompen EH. Systematic release of endotoxins induced by gentle mastication : association with periodontitis severity. J Periodontol 2002 ; 73(1) : 73-78.
                         
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咀嚼によっても、口腔内細菌が血中に侵入します。
つまり、歯原性菌血症の予防は、地道な口腔衛生活動と歯周病治療であることがわかります。
歯原性菌血症は、以下のような全身疾患と関連があります。
すなわち、アルツハイマー病、関節リウマチ、アテロームプラークが形成されることによる臓器の老化などと関連します。
重度歯周炎でも、抜きたくないという思いが強い患者さんは少なくありません。
しかしながら、体のためにも特に症状が重い歯をインプラントに置き換え、インプラントに咬合力を負担してもらうというのは、その他の歯の寿命を延ばすことに繋がります。
そのような意味では、インプラント治療は予防歯科であるという見方もできます。

2014年6月10日

hori (09:16)

カテゴリ:インプラントについて

根分岐部病変と骨隆起、アブフラクションの関係

〇骨隆起の存在有無と根分岐部病変の発症
骨隆起の有無で比較してみると、下顎においては骨隆起のあるほうが水平的な根分岐部病変の進行傾向が認められる。
また、垂直的な進行に関しても骨隆起のある方が割合的には多い。
上顎においては骨隆起のあるものに、水平的にも、垂直的にも根分岐部病変の進行が下顎より顕著に多いことがわかる。
これは解剖学的な骨の構造や咬合力などが関係していることを示唆しているのかもしれない。
〇アブフラクションの有無での根分岐部病変の発症率
上顎、下顎ともに、アブフラクションのあるものが垂直的にも水平的にも根分岐部病変が進行していることがわかる。
また、アブフラクションの有無による根分岐部病変直下の骨縁下ポケットの存在の関わりをみてみると、アブフラクションのあるほうが明らかに根分岐部直下の骨縁下ポケットを発症している。
(もう迷わない根分岐部病変 より)
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歯牙が負担する咬合力が相対的に過大である場合、その歯牙の周囲の歯槽骨が代償的に肥大した骨の高まりを骨隆起といいます。
また、歯牙に過大な咬合力がかかると、歯頸部付近にエナメル質のチッピングが生じることをアブフラクションといいます。
やはり骨隆起がある場合の方が、根分岐部病変が認められる頻度は高く、アブフラクションがある場合の方が根分岐部病変の認められる頻度は高いようです。
(ということは、骨隆起や骨隆起が認められるケースでは、そうではないケースと比較して、歯周病の進行も早いでしょうし、その部位にインプラント治療を行う場合も、力の要素が大きいと考え、慎重に治療を進めなくてはなりません。)
さらに、上顎・下顎での比較では、根分岐部病変の発症頻度は、下顎の方が多いようです。
同じように過大な力を受けても、下顎では歯槽骨が硬い分、根分岐部に応力が集中し、上顎は相対的に歯槽骨が柔らかいので、歯牙自体が移動するのかもしれません。

2014年6月 5日

hori (15:16)

カテゴリ:インプラントについて

長いブリッジ治療よりも、インプラント治療

欠損部の長さに対する"たわみ"を1とすると、欠損部の長さが2倍になれば、その"たわみ"は8倍となり、欠損部の長さが3倍となれば、"たわみ"は27倍となる。

欠損部の垂直的な厚みに対する"たわみ"を1とすると、その厚みが半分になれば、"たわみ"は8倍となる。
すべてのブリッジは長短に関わらず、ある程度は曲がるものである。
ポンティックを経て支台歯に加わる咬合力は、単冠のそれと比較して、大きさも方向も異なる。
(参考文献)
SHILLINBURG HT, Fundamentals of Fixed Prothodontics. 2nd edition. Chicago : Quiniessense Publishing, 1978.
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このエビデンスは、長いブリッジが長期的に安定しない根拠となるでしょう。
また、ブリッジの垂直的な厚みが相対的に薄くなりやすいのが、虫歯で歯を失った際のブリッジです。
この場合、咬合面もフラットなものとなるため、歯根破折が発生しやすいと考えられます。
こうして考えると、Anteの法則に従っている補綴設計の中にも、長期に安定しないブリッジの設計は、行うべきではありません。
やはりこのようなケースほど、インプラント治療が第一選択となるのです。

2014年6月 1日

hori (08:50)

カテゴリ:インプラントについて

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