2014年7月アーカイブ

もしも、神経麻痺が生じたら・・・。

神経麻痺が生じた場合、院長も自院で何とかその患者の改善を期待して完結させようと努力する。

そこでビタミン剤、抗生剤、消炎鎮痛剤、ステロイド剤などを投与しながら、「経過観察期間」を設けられる。
しかし、「経過観察期間」が神経予後の命運を左右してしまう場合が時としてある。
それは、神経損傷直後から2-3週間が正常な修復機転が最も活発になる時期だからである。
ペインクリニックを担当するスタッフは、この時期をどう過ごすかが極めて重要と考えている。
この時期を逃すと患部の代謝は低下し、臨床上はいわゆる症状の固定化が認められるようになるが、紹介患者は発症後2-3か月以上を経過している場合が多い。
(デンタルダイヤモンド 2014年 5月号 より)
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当院では、インプラント治療の際の神経麻痺は経験がありません。
ただ、もしもそのような事態が生じた際には、いち早く、大学病院等の上位医療機関に紹介するのが良いと考えています。
(東北大学歯学部大学院に籍を置いていたこともあり、個人的には気兼ねなく大学病院に紹介をしています。)
紹介が遅れてしまうのは、自分のプライドが邪魔をするのかもしれませんが、医療従事者は、患者さんを中心に考えなくてはなりません。

2014年7月30日

hori (08:43)

カテゴリ:インプラントについて

三次元コーンビーム画像を用いた術前計画に基づいたインプラント埋入の正確性

埋入されたインプラント(長さ:10-15ミリ)には計画時と比べ、平均角度2度(SD:0.8、範囲:0.7度-4.0度)の差が認められ、さらにヘックス部に1.1ミリ(SD:0.7ミリ、範囲0.3-2.3ミリ)、根尖部に2.0ミリ(SD:0.7ミリ、範囲:0.7-2.4ミリ)の差が認められた。
コーンビーム画像がインプラント治療計画に用いられることは可能であり、その際、最大4度の角度および根尖部に2.4ミリの距離の差が生じる恐れがある。
(参考文献)
Accracy of implants placement based on pre-surgical planning of three-dimensional cone-beam images: a pilot study Van Assche N, van Steenberghe D, Guerrero ME, Hirsch E, Schutyser F, Quirynen M, Jacobs R. J Clin Periodontol 2007 ; 34(9) : 816-821.
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ガイディドサージェーリーによるインプラント埋入では、フラップレス手術となるため、治療時間の短縮や患者さんの痛みの軽減などのメリットがあります。
一方、最大4度の誤差、根尖部に2.4ミリの距離の誤差を大きいと考えるのか、小さいと考えるのか・・・。
"その程度の誤差が生じても問題ない症例を選んで、治療を行う"というのが答えとなるでしょう。
また、このガイディドサージェーリーもどちらかというとメーカー主導で価値を伝えられている感があるので、個人的には然るべきタイミングで導入したいと考えています。

2014年7月25日

hori (10:56)

カテゴリ:インプラントについて

インプラントの表面性状による違い

細菌汚染と洗浄後のさまざまなインプラント表面におけるオッセオインテグレーションの比較 : ウサギを用いた研究
方法:4つの種類のインプラント体表面が製作された。
機械処理(M)、プラズマ噴射ハイドロキシアパタイト(HA)、サンドブラストおよび粗粒子酸エッチング(SA)、陽極酸化チタン(TAO)
それぞれ対照群と実験群に細分された。
実験群はPrevotella intermediaとともに2週間培養された後、小綿球で清掃し生理食塩水に浸して洗浄した。
対照群は細菌汚染なしに同じ清掃手順を受けた。
非汚染HAとSA群は、非汚染M群よりも優位に高い除去トルクであった(P<0.01)。
汚染HAとSA群は汚染M群よりも有意に高い除去トルクであった(P<0.05)。
すべての汚染群は、それぞれの非汚染群に比較して低値であった。
汚染SAとHA群の除去トルクは、非汚染SAとHA群有意に低値であった(P<0.05)。
非汚染のHA群はもっとも高いBIC値を示し、続いて非汚染SA、TAO、M群の順であった。
非汚染HAとSA群は非汚染のM群よりも有意に高いBIC値であった(P<0.05)。
汚染群において、TAO群がもっとも高いBIC(骨接触率)値を示し、続いてM、SA、HA群であった。
しかしながら、汚染群間において有意差はなかった。
汚染HAとSAは非汚染の対照群よりも有意に低いBIC値であった(P<0.01)。
(参考文献)
Comparison of osseointegration on various implant surfaces after bacterial contamination and cleaning : a rabbit study. Int J Oral Maxillofac Implants 2013 ; 29(1) : 32-40. Yuan K/Chan YJ/Kung KC/Lee TM
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1.非汚染HAインプラントは、除去トルクが最も高い。
2.ただし、いったん汚染した場合、すなわちインプラント周囲炎になった場合には、骨接触率が小さいにもかかわらず、他の表面性状のインプラントよりも、除去トルクが高い。
ということが、HAインプラント使用する歯科医師は知っておく必要があるでしょう。

2014年7月20日

hori (17:23)

カテゴリ:インプラントについて

血液型と歯周炎

・GLT6D1遺伝子のイントロン2内にあるSNPが"クロ"と出たのだが、データベースを調べてみるとSNPrs1537415がどうも犯人らしい。
個々は通常シトシンなのだが、ここがグアニンに変わったSNPがあると、侵襲性歯周炎のリスクが50%くらい上がるらしい。
GLTは糖を転移する酵素で、血液型と関係する。
血液型は、細胞表面についている糖によって決まる。
A型のヒトの赤血球にはNアセチルガラクトサミン(GalNAc)が付いている。
それに対してB型ではガラクトース(Gal)が付いている。
これらの糖を引っ付けるための酵素がGLTである。
AB型はGalNAcとGalの両方が付いていて、O型ではどちらも付いていない。
(人はなぜ歯周病になってしまうのか? より)
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血液型により、歯周炎のなりやすさは異なる可能性があること分かりました。
しかしながら、今のところエビデンスといえる程のデータではないようです。
因みにその文献では、O型では歯周炎が多く、AB型では健全が多かったとのことです。
また、歯周炎で歯を失った人が、インプラント治療を受けた場合、インプラント周囲炎になるリスクが高いというエビデンスはすでに
ありますから、将来血液型とインプラント周囲炎の関係をテーマにした研究論文も出てくるかもしれませんね。

2014年7月15日

hori (09:42)

カテゴリ:インプラントについて

上顎前歯部インプラントの歯肉退縮

・上顎切歯部における単独インプラントの即時埋入・暫間補綴後の辺縁歯肉の変化について : 患者47名の5年間の後ろ向き研究
中切歯部には直径4.3ミリのインプラントを19本埋入した。
側切歯部には直径3.5ミリのインプラントを20本、直径4.3ミリのインプラントを8本埋入した。
辺縁歯肉の退縮量の平均は、最終補綴物装着時に0.16ミリ、3か月後で0.27ミリ、1年後および5年後で0.30ミリだった。
辺縁歯肉の退縮量は、中切歯部では5年を通して0.35ミリ、側切歯部では直径3.5ミリインプラント埋入で0.08ミリ、直径4.3ミリインプラントで0.82ミリを示した。
辺縁歯肉の退縮量は、側切歯部におけるインプラント直径4.3ミリと3.5ミリとの間で統計学的に有意な差が認められた。(P<0.05)。
術前に決定した歯肉バイオタイプは47本のインプラントのうち36本が厚い歯肉バイオタイプ、11本が薄いバイオタイプだった。
辺縁歯肉の退縮量は、厚い歯肉バイオタイプと薄いバイオタイプの間で統計学的に有意な差が認められた。(P<0.05)。
唇側よりに埋入したインプラントは口蓋側に埋入したインプラントより歯肉退縮の量および頻度が増加することを示す。
インプラントを適切な位置に埋入しても、より太い直径のインプラントを埋入した場合、インプラントが頬側の骨を侵害し、結果として歯肉退縮を増加させる。
歯肉バイオタイプは、インプラント補綴物周囲における辺縁歯肉の退縮について潜在的に強く関連している。
インプラント即時埋入アプローチ後に厚い歯肉バイオタイプと比較し、薄い歯肉バイオタイプでは大きな歯肉退縮が生じ、1ミリ以上の歯肉退縮を生じる頻度も増加するとChenらは報告した。
しかしながら、今回の研究では決定的な要因として強調されるべきなのは歯肉バイオタイプではなく、インプラントの直径であった。
インプラント即時埋入・暫間補綴(IIPP)における適切なカスタムアナトミックプロビジョナルアバットメントを用いることが歯肉退縮を減少させる因子である。
Touatiらは唇側面におけるアバットメントのエマージェンスプロファイルは、インプラント周囲歯肉の適切な成長および支持を高めるためにアンダーカントゥアで平坦にすべきであると強調している。
ほとんどの歯肉退縮がIIPP後3か月の治癒期間内に生じるため、最終補綴へ進む前にエマージェンスプロファイルを構築し、安定するまで待機時間を設けることは重要である。
(参考文献)
Gingival margin changes in maxillary anterior sites after single immediate implant placement and provisionalization : a 5-year retrospective study of 47 patients. Int J Oral Maxillofac Implants 2014 : 29(1) : 127-134. Ross SB/Pette GA/Parker WB/Hardigan P
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上顎前歯部におけるインプラント治療では、治療後の歯肉退縮がときに問題になります。
一般に歯肉が薄いと歯肉退縮の程度は大きくなりますが、歯肉の薄いタイプの方に歯肉移植を行うよりも、細いインプラントを口蓋側に埋入する方が、歯肉退縮を減少させることに寄与するというエビデンスが今回紹介する論文です。
適正な位置にインプラントを埋入しても、直径の太いインプラントを使用すると、歯肉退縮が起きやすいというのも臨床家は知っておかなければならない情報となるでしょう。

2014年7月10日

hori (16:42)

カテゴリ:インプラントについて

咬み合わせ治療としてのインプラント治療

・咀嚼困難スコアを用いた研究では、正常咬合と比較して、叢生がある場合は5倍、反対咬合と開咬では10倍以上の値が示された。
(参考文献)
齋藤壽彦,久野昌隆,松原望,雨宮賢,相馬邦道,咬合状態と各種食品の「食べやすさ・食べにくさ」 : 食品摂取アンケート調査と食品テクスチャー測定を基に. 日矯歯会誌 2005 ; 64 (3) : 173-185.
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インプラントを希望されて来院されている方のお口を拝見していると、気が付くことがあります。
元々歯列不正があり、咬み合わせのバランスが悪い状態で、特定の歯を失っているということです。
例えば、反対咬合や開口では、前歯の働きが弱い状態ですから、臼歯部の働きが相対的に強まり、臼歯が崩壊するケースが多いように感じます。
『その部分が咬めないので、インプラント治療を・・・。』というお気持ちはわかりますが、そのままの状態でインプラント治療をしても、そちらの側のインプラントか天然歯が破壊されるとは思いませんか?
咬み合わせ治療のツールとして、インプラントや歯列矯正があるという視点が重要なのです。

2014年7月 5日

hori (09:36)

カテゴリ:インプラントについて

ファイバーコアを使用することで、歯根破折頻度が半分程度に減少。

・ファイバーコアを使用した286本のうち17歯に歯根破折が起こり、歯根破折の頻度は約5.9%であった。
歯根破折の頻度に関しては、天川らは12.5%、山下らは10.2%と報告しているので、ファイバーコアを用いた築造体は歯根破折の防止に役立っていると思われる。
(歯界展望 2014年 5月号 より)
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メンテナンスを定期的に行うことで、虫歯や歯周病で抜歯になるリスクは低下しますが、歯根破折による抜歯は避けることができないそうです。
将来、歯根破折によってインプラントが必要となる場合のことを考えたら、築造体にはファイバーコアを使用した方が無難なようです。
ただし、このファイバーコアは、保険適応外の材料で、自由診療になります。
また、ファイバーコアを使用した場合の被せ物は、たとえそれが保険の銀歯と同じであろうとも自由診療になります。

2014年7月 1日

hori (08:42)

カテゴリ:インプラントについて

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