2014年8月アーカイブ

歯科用石膏

・基本的に歯科用石膏は、
1)混水量を小さくすると、凝固時間は短くなり強度・膨張は大きくなる。
2)水温を下げると、凝固時間は長くなり、強度・膨張は大きくなる。
3)撹拌時間を長くすると、凝固時間は短くなり、強度・膨張は大きくなる。
4)石膏と水以外の第三物質が混入すると、凝固時間・強度・膨張などの物性は変わる。
(生体と調和する歯周組織にやさしい歯冠修復物 より)
*****
歯科で石膏といえば、患者さんのお口を正確にコピーした模型を製作するためになくてはならないものです。
その模型上で技工士さんが作業をして、患者さんのお口に装着する人工物が出来上がるのです。
その石膏一つとってみても、混水比や温度、撹拌時間などの条件が変化することで、模型の精度が変化します。
より正確な状態を記録して、技工士さんにそのあとの仕事をしっかり遂行してもらうために、私たち歯科医師も最終的に誤差となりうる要素を一つ一つ潰していかなくてはなりません。
知識を吸収するだけでなく、実際の仕事に反映させていかなくてはなりませんね。

2014年8月30日

hori (16:34)

カテゴリ:インプラントについて

クラックが原因で治療受けた歯は予後不良。

Krellらの歯内療法医を訪れた8175歯の6年間調査によると、クラックトゥースは全体の9.7%であった。

さらにそのクラックトゥースの中で可逆性歯髄炎と診断されてクラウン処置が施された歯の約20%は、半年以内に不可逆性歯髄炎となり抜髄が必要となった。
また、クラックが原因でクラウン処置を施した歯に関するKimらの調査では、なんと83.3%に歯髄処置が必要になったと報告している。
他の報告からも、クラックトゥースは一度歯髄が保存できると診断されても、後に歯髄処置が必要となる可能性や、抜歯に至る可能性があり、その確率は決して低くないとある。
すなわち、クラックトゥースの診断・治療・フォローアップは、歯髄および歯の保存において密接な関係があることがわかる。
(参考文献)
Krell KV, Rivera EM. A six year evaluation of cracked teeth diagnosed with reversible pulpitis: treatment and prognosis. J Endod 2007 ; 33(12) : 1405-1407.
Kim SY, Kim SH, Cho SB, Lee GO, Yang SE. Different treatment protocols for different pulpal and periapical diagnosis of 72 cracked teeth. J Endod 2013 ; 39(4) : 449-452.
*****
『クラックが原因でクラウン処置を施した歯で、83.3%に歯髄処置が必要』というデータには、私も驚かされました。
現代はストレス社会であるからか、クラック由来の可逆性・不可逆性歯髄炎でお悩みの方は多いです。
また、本人は歯列不正を気にしていないけれど、私がお口を拝見するとほぼ確実に咬み合わせの左右差に直結する歯列不正が認められます。
そのような状態で、歯のないところだけインプラント等の治療をしても、長期に安定した咬み合わせは構築できません。
歯科医師も、お口を"総合的に診る眼"がないと、真の患者さんの満足にはつながらないと考えています。

2014年8月25日

hori (15:11)

カテゴリ:インプラントについて

肉食でインプラントの長期安定が可能か?!

糖尿病の危険率は痩せている人の方が太っている人よりも高い。
この研究では、痩せをBMI22.4以下としている。
日本の厚生労働省ではBMI22を勧めているが、この値では糖尿病は増えている。
さらに、BMIが22.5-30までの危険率に有意差はない。
つまり、肉食がたとえ肥満をもたらしても、糖尿病の危険率は高くならないのである。
また、糖尿病患者に高タンパク食を摂取させると、HbA1cが劇的に低下し、HbA1cが10ぐらいだった人が5週間後には7以下になったのである。
(アンチエイジング医学―日本抗加齢医学会雑誌 2014 vol.10 No.3 より)
*****
糖尿病と歯周病は関連があるといわれています。
糖尿病が悪くなると、歯周病も悪くなるようです。
またそれとは逆に、歯周病が良くなると、糖尿病もよくなるそうです。
インプラント患者さんが糖尿病の場合、そうではない場合と比較して、インプラント治療の長期安定は困難となります。
インプラント周囲炎になりやすくなるからです。
HbA1c値が改善し、インプラント周囲炎に罹るリスクを低下するならば、『食事の内容を肉食に変える』という食事指導は有効といえるかもしれません。

2014年8月20日

hori (16:28)

カテゴリ:インプラントについて

なぜ7番は6番よりも6年遅れて萌出するのに、一番先になくなるのか?

1987年、1999年歯科疾患実態調査「歯の平均寿命」で、歯が失われた順番に注目してみた。
どちらの調査結果でも最初に失われるのが下顎7番、次が上顎7番、そして3番目に失われるのが下顎6番であり、各歯種の失われる左右的な時間差はほとんどないことが分かる。
しかし奇妙ではないか?
7番(12歳臼歯)は6番(6歳臼歯)に比べておおよそ6年遅れて萌出するにも関わらず、一番最初に喪失している。
これはいかに7番の喪失リスクが高いかを示す根拠となる。
下顎7番の治療予後が他の歯に比べてあまり思わしくない原因は、樋状根など根管治療の予後を不安定にさせるような解剖学的要因もあると思われるが、やはり構造的に7番は顎関節に近く、破壊的な咬合力を最も強く受ける場所だからであろう。
(デンタルダイヤモンド 2014年 6月号 )
*****
大臼歯を失う方のお口を拝見していると、前歯の働きが弱い方が少なくないことに気づかされます。
前歯と大臼歯は形態が異なるとともに、その役割も異なります。
前歯の働きが弱いとその力が大臼歯にかかるために、その力は大臼歯を破壊する力なのです。
7番を失い、そこにインプラント治療を行った場合、やはり7番が問題なく機能していた数年前に戻るだけで、歯のなくなくなるスピードは変わらない可能性があります。
やはり、歯のなくなるスピードを可及的に遅くするために、総合的にお口の状態を把握し、機能を改善していくことが肝要といえるでしょう。

2014年8月15日

hori (15:55)

カテゴリ:インプラントについて

光造形サージカルガイドの埋入誤差

・インプラント埋入用の光造形サージカルガイドの臨床応用
計画時とインプラント埋入後の埋入軸の差は平均7.25度±2.67度で、埋入位置の差はインプラントショルダー部で平均1.45±1.42ミリ、インプラント根尖部で平均2.99±1.77ミリだった。
すべての患者において、インプラント頂部に比べて、根尖部の方により大きな差が認められた。
臨床的なデータからインプラント埋入時のコンピュータ支援ラピッドプロトタイピング法のサージカルガイドの有用性が示唆された。
しかしながら、片側骨支持型や非歯牙支持型のガイドを用いる際には、手術時のより高い安定性を提供するために本技術の更なる発展が必要である。
インプラント治療に対する光造形サージカルガイドの本当の効果を究明するために、より多数の患者を対象にしたさらなる研究が必要である。
(参考文献)
Clinical applaication of sterolithographic surgical guides for implant placement : Preliminary results DI Giacomo GA, Cury PR, de Araujo NS, Sendyk WR, Sendyk CL. P Periodontol 2005 ; 76(4) : 503-507.
*****
計画時とインプラント埋入後の埋入軸の差は平均7.25度±2.67度で、埋入位置の差はインプラント根尖部で平均2.99±1.77ミリだったとのことです。
このデータを見る限り、個人的には光造形サージカルガイドは危険なものに感じられなりませんが、この分野の技術は日進月歩です。
今後使いやすいものになるのか、注目したいです。

2014年8月10日

hori (14:50)

カテゴリ:インプラントについて

インプラントは脳への影響もある。

インプラントオーバーデンチャーでは総義歯と比較して、前頭前皮質、一次感覚運動皮質および小脳で賦活の減少が認められた。
(有意差が認められたのは前頭前皮質)
この減少の理由はいまだ研究過程であるが、咀嚼中に動揺する総義歯では咀嚼運動が不規則かつ不安定になりやすいが、インプラントオーバーデンチャーでは安定するため同部位の賦活が減少すると考えられている。
(参考文献)
Kimoto K, Ono Y, Tachibana A, Hirano Y, Otsuka T, Ohno A, Ymaya K, Obata T, Onozuka M, Chewing-induced regional brain activity in edentulous patients who received mandibular implant-supported overdentures : apreliminary report. J Prosthodont Res 2011 ; 55(2):89-97.

2014年8月 5日

hori (08:58)

カテゴリ:インプラントについて

このページの先頭へ