2014年10月アーカイブ

歯根間距離が大きくなると、骨縁下欠損の頻度が高くなる。

歯根間距離も骨欠損形態に大きく影響する。
Talらは344か所を調べ、骨頂レベルで根間距離を骨縁下欠損の発生に相関があり、根間距離を0.5ミリで区切り、1ミリ未満から7.5ミリ以上の範囲で分類すると、2.6ミリより大きくなるとその頻度が高くなる(20-57.1%)と報告している。
(参考文献)
Tal H. Relationship between the interproximal distance of roots and the prevalence of intrabony pockets. J Periodontol 1984 ; 55 (10) : 604-607.
*****
歯根間の距離が特定の部位だけが広く空いているところは、その部位には歯槽骨がなくなる場合が多いという趣旨の論文です。
そのような歯は動揺度が大きい場合も少なくなく、それゆえ、インプラント治療の適応になる場合もあります。
しかしながら、その一方で、歯根間距離を歯列矯正等の手法で、適正な状態とすることで、インプラント治療を回避できる場合もあります。
患者さんの価値観に合った治療を提供したいものです。

2014年10月30日

hori (08:50)

カテゴリ:インプラントについて

日中の噛みしめが歯の崩壊に関与

日中の噛みしめが歯の崩壊に関与
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の川上滋央助教と皆木省吾教授らの研究グループは、日中の無意識の噛みしめが、歯の喪失や歯並びの崩壊に影響するとの研究成果を発表した。
8月26日に米国オンライン科学雑誌「PLoS ONE」(7月14日)に掲載されたと公表した。
同研究グループは、高精度の筋電計を用いて、昼夜を通して咬筋の働きを解析。
無意識に噛みしめている中でも、1-2Hzの周期的収縮が、歯の喪失と高い感度と特異度を持って関連付けられると判明した。
この研究成果により、虫歯や歯周病以外の歯を失う原因の解明に役立つとして、予防や治療の発展に期待がかかる。
(アポロニア21 2014年9月号)
*****
日本人は程度の差はあれ、何らかの歯列不正があることが多いように思います。
また、現代はスマートフォンやパソコンを日常的に使用されている方が多いので、それらによるストレスもかなりのものと推測できます。
もろん、日中の無意識の噛みしめをやめることができれば、歯の喪失や歯並びの崩壊の程度を減少させることができるかも知れません。
ただ、仮に噛みしめをやめることができた場合、それとは異なる問題が発生する場合があるのではないかと、個人的には危惧しております。

2014年10月25日

hori (08:30)

カテゴリ:インプラントについて

P.g.菌感染度で悪玉コレステロール値が上昇

・P.g.菌感染度で悪玉コレステロール値が上昇
歯周病原因菌のP.ジンジバリス(P.g.菌)に対する血中の免疫グロブリンG抗体価が高い歯周病患者は、動脈硬化に関わる悪玉コレステロール値が高い。
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の工藤値英子助教と高柴正悟教授らの研究グループが、臨床観察研究によって突き止めた。
動脈硬化は日本人の死因の上位を占める心疾患や脳血管疾患の原因となるため、予防のためにもメカニズムの研究が求められている。
研究グループは、東京都と千葉県の開業歯科医師・内科医師と共同で、3年2か月の間、平均年齢60歳の男女各45人を観察。
P.g.菌の感染症度を血液で検査すると同時に動脈硬化の状態を超音波検査と血中因子検査で分析した。
結果、P.g.菌に対するIg-Gの値が高い患者では、悪玉コレステロール「低比重リポタンパク(LDL-C)」の値が高いことが判明した。
LDL-Cは、高脂血症を含めた脂質代謝異常にかかわるもので、P.g.菌の感染後によって、LDL-C値が上昇する可能性が示された。
*****
重度の歯周病に関係するといわれる3菌種は、"レッドコンプレックス"と呼ばれており、その一つが、P.g.菌です。
このP.g.菌に対するIg-G値が高いと、悪玉コレステロール値が高いことが明らかになったようです。
P.g.菌は、インプラント周囲炎にも関連しますから、インプラントの成功率を上昇させるために、まずは患者さんの高脂血症改善しようという動きが歯科と内科を中心に起きるかも知れませんね。

2014年10月20日

hori (15:38)

カテゴリ:インプラントについて

上顎洞底拳上術を行ってはいけない症例とは?

上顎洞底拳上術を行ってはいけない症例とは?
1.隣在歯に根尖性歯周炎や残根、歯根膿疱が認められる症例
2.上顎洞内に細菌感染があることが確実な症例
3.術後の粘膜浮腫によって上顎洞自然口が閉塞する可能性が高い症例
(クインテッセンス デンタルインプラントロジー 2014 vol.21 5)
*****
上顎臼歯部にインプラント治療が必要なケースでは、そのほとんどで上顎洞底拳上術が必要になります。
確実な上顎洞底拳上術を行いたいものです。

2014年10月15日

hori (11:01)

カテゴリ:インプラントについて

インプラントには、関連痛は生じるのか?

筋・筋膜性歯痛とは、非歯原性歯痛の中で最も多く認められる。
筋・筋膜痛症の患者の約11%が非歯原性歯痛を訴えており、その多くは咬筋に原因があるといわれている。
筋・筋膜性歯痛の臨床症状は、自発痛であり持続性の鈍痛を呈する。
咬筋以外に筋・筋膜性歯痛の原因となる筋肉には側頭筋、顎二腹筋、胸鎖乳突筋などがある。
筋・筋膜痛症では筋肉の触診にてトリガーポイントと呼ばれる筋肉のしこりを触れることができる。
このトリガーポイントを圧迫することで異所性の歯痛が誘発される。
患者が原因不明の歯痛を訴え、打診、温度診、麻酔診に明確に反応しない場合には、頭頸部の筋肉を十分に触診し、トリガーポイントを認めた場合に5秒間圧迫することで歯痛が再現されるかを確認することが重要である。
・咬筋の筋・筋膜痛症では上下顎臼歯部に、側頭筋では上顎の歯に関連痛を生じる。
顎二腹筋の前腹では下顎前歯部に関連痛を生じる。
胸鎖乳突筋では顔面頬部または臼歯部などに関連痛を生じる。
(参考文献)
Kim ST : Myofascial pain and toothaches. Aust Endod J, 31 : 106-110,2005.
Simons DG, Travell JG, Simons LS : Travell and Simons myofascial pain and dysfunction : the trigger point manual vol. 1. second ed, Williams & Wilkins, Baltimore, 1999.
*****
噛みしめの方向によって、どの部位の歯が咬合力を受け止めるのかは、当然のことながら変化します。
またその方向によって、どの筋肉がメインで働くのかも変化しますから、筋肉痛の部位も変化します。
ただ面白いのは、咬合力をそのときは受け止めていないはずなのに、筋肉の触診をすると、持続的な咬合力を受けていた歯の方も痛みを感じるということです。
これには、歯根膜-咬筋反射なども関連しているのだと思います。
脳内では、特定の筋肉痛と特定の歯痛を関連付けているということなのでしょう。
この関連付けは、おそらく歯根膜が関係しているでしょうから、歯根膜が介在しないインプラントでは、過大な咬合力がかかっても、脳内での筋肉痛との関連付けは起きない。
そしてさらに、インプラントは、歯よりも痛みを感じにくい構造になっているために、天然歯であれば壊れてしまうような咬合力がかかっても、痛みを感じにくい。
その結果、患者さんサイドが異常を感じるときには、手遅れの状態になっている場合があるのかもしれません。
やはりそのような意味でも、定期的なメインテナンスは必要ということになるのでしょう。
常に変化する天然歯と、変化量が少ないインプラントが共存するのが、口腔内なのですから。

2014年10月10日

hori (08:12)

カテゴリ:インプラントについて

インプラント周囲炎やインプラント体破折の原因の一つに、フッ素が関係している。

・チタンは耐久性に優れているので腐食しないと考えている臨床家は多いと思います。
しかし、チタンは本来、活性な金属であるため非常に腐食しやすいのです。
耐腐食性および生体親和性に優れている理由は、酸化膜(TiO?)がインプラント表面を覆っているからです。
もし、その酸化膜が破壊されるようなことが起きれば、チタンはすぐに腐食が生じてしまいます。
実は、インプラント表面の酸化膜が破壊される原因は「フッ素」にあるのです。
・インプラントを埋入した場合、インプラント周囲ポケットや粘膜貫通部は外気から遮断されていますので、酸素濃度が1/10以下になるといわれています。
溶存酸素濃度が低い環境で酸化膜が破壊されると、酸化膜の再生が遅れ、耐食性が低下します。
したがって、口腔内で?フッ素?酸性化?低溶存酸素、この3つの条件が重なることで腐食が起こります。
・腐食が生じた場合の影響として、1つは腐食孔ができます。
腐食孔が開くと、それを起点とした応力集中が起こり、インプラント体が破折してしまうことがあります。
2つ目は、インプラント表面の粗造化です。
粗造化によって表面がざらつき、プラークがより付着しやすくなる状態を生成してしまうのです。
3つ目は、チタンアレルギーを誘発する可能性があります。
チタンが溶出することによって、皮膚に炎症がおこったケースもあります。
・インプラント体に付着した石灰化物を純チタン製以外の器具で除去すると、インプラント表面に鉄やクロム、ニッケルといった異種元素が残留してしまいます。
異種元素が残留すると、フッ素によってチタンの腐食をさらに促進してしまい、再骨結合に影響を及ぼす可能性が高くなると考えられます。
そのため、汚染された石灰化物は必ず純チタン製のキュレットで丁寧に除去することが基本となります。
(新聞 QUINT 2014年9月)
*****
『インプラント治療を受けた部位は、フッ素入り歯磨き剤で歯磨きをするべきではない。』という趣旨の記事です。
健康に良いと思って行っていることが、逆に思わしくない結果を導いているということの一例ではないかと思います。
正しい情報を収集したいものです。

2014年10月 5日

hori (07:36)

カテゴリ:インプラントについて

このページの先頭へ