2014年11月アーカイブ

外科用テンプレートの設計のリスク

サージカルガイドの設計
ケースにより治療計画を正確に外科手技に反映させたいときはソフトウエア上でサージカルガイド(外科用テンプレート)を設計する。
しかし、アーチファクトやドリルシリンダーの高さ制限または患者の開口量などの問題点が多く存在することがあり、注意が必要である。
(参考文献)
Rosenfeld A, et al: Use of prosthesis-generated computed tomographic information for diagnostic and surgical treatment planning.J Esthet Dent10(3): 132-148,1998.
*****
サージカルガイド(外科用テンプレート)を口腔内に装着した状態でCT撮影したデータが必要であるために、どうしても画像データはアーチファクトを含むものとなり、読影が相対的に困難になります。
また、外科用テンプレートを使用する時点で、ドリルシリンダーの高さの分、長いドリルを使用する必要が あるために、開口量が少ない患者さんでは、外科用テンプレートを途中から外して、フリーハンドでドリリングする必要が出てきます。
(歯を失っている人は、口を大きく開いているのに、術者には開口量が不足していると感じる、いわゆる"骨格が悪い患者さん"が多いので、ドリルシリンダーの高さの分さらに長いドリルを使用することが、事実上無理という場合もあります。)
そうなると、インプラント手術前に用意してあったプロビジョナルを改造しないと入らない場合もあり、実際には頭で考えていたものより手術が難航するリスクがあります。

2014年11月30日

hori (08:13)

カテゴリ:サージカルガイドの埋入誤差

ダナハーが、ノーベルバイオケアを買収!

・ダナハーが、ノーベルバイオケアを買収
米国・ワシントンに本社がある産業・医療機器大手のダナハーは、スイスのインプラントメーカー、ノーベルバイオケアグループの買収が22億ドルで最終合意したと9月15日に発表した。
(アポロニア21 2014年 11月号)
*****
インプラント業界のリーディング・カンパニー、ノーベルバイオケアが、医療機器大手のダナハーに買収されました。
ノーベルバイオケアで販売されているインプラントは、タイユナイトという表面性状を有しているのですが、このタイユナイトが他の表面性状のものよりも、インプラント周囲炎を惹起しやすいことが、近年明らかになってきています。
また、ノーベルバイオケアのインプラントには、40度まで傾斜埋入が可能なマルチユニットアバットメントがあるため、既存骨にインプラントを傾斜埋入して上部構造を構築することができます。
(ちなみに、他社の多くは17度の角度付アバットメントで、ノーベルバイオケアはこれについての特許を持っています。
もっと言うと、特許の期限が切れたとも聞きます。
また、オールオンフォーという治療を行う場合は、このマルチユニットアバットメントがないと治療が行いにくいため、結果としてノーベルバイオケアの製品を使用することになります。)
そのため、骨造成を必ずしも必要としないということが"ウリ"だったわけですが、元々、垂直埋入よりも傾斜埋入の方が清掃性が難しく、さらに、表面性状がインプラント周囲炎を惹起しやすいというのでは、通常、傾斜埋入を行うオールオンフォーという術式には不安があると言わざるを得ません。
しかし、買収が決まったことで、今後、ノーベルバイオケアのインプラントは、いい方向で改善される可能性があると個人的には考えています。

2014年11月25日

hori (17:28)

カテゴリ:インプラントの偶発症

ストリッピングパーフォレーション、根管のトランスポーテーションでは、最初からインプラント治療も視野に入れるべきではなかろうか。

・Gorni FGらは、再根管治療において根管の解剖学的形態が維持されているケース、破壊されているケースに分けて2年間の予後分析を行った。
その結果、全体の平均の成功率は69.0%であったが、前者では86.1%まで成功率が上がったものの、後者では48.3%と低い成功率を示した。
また、後者を細かく分類したところ、ストリッピングパーフォレーション(28.0%)、根管のトランスポーテーション(35.6%)の成功率が低いことを示した。
さらに、術前に根尖部に透過像のあるケースの成功率は、40.0%であった。
つまり、再根管治療では、根管が以前の治療で大きく破壊されていると成功率が低いことが分かる。
まず成功率の低いトランスポーテーションは、裸眼では修正することが非常に困難。
一度根尖部で主根管を外湾、内彎に離れてパーフォーレーションを起こすと、主根管の感染源が残ってしまい、病変の治らない原因となってしまう。
ストリッピングは、根管の内彎側で起こることが多く、歯質が菲薄化している。
また根管内であるがゆえに部位の特定が困難で、その周囲の感染源を取り除く適切な機材は今まで存在していなかった。
このように、再根管治療において、歯質が大幅に破壊されているケースでは、現在問題が分かっても処置する方法がないというのが、この成功率に現れている。
マイクロスコープの普及とともに、われわれは従来の裸眼での処置ではない得なかった鮮明な拡大視野を手に入れた。
しかし、その得られた拡大視野を充分に活かせるツールの開発は遅れているのが現状である。
(参考文献)
Gorni FG, Gagliani MM. The outcome of endodontic retreatment : a 2-yr follow-up. J Endod 2004 ; 30 : 1-4.
*****
今回のデータは、平均的な歯科医師が行った治療成績ではなく、海外の歯内療法専門医の行ったデータでしょうから、再根管治療の中でも、ストリッピングパーフォレーション、根管のトランスポーテーションが原因となっている歯牙については、日本の歯科開業医の治療成績はもう少し低いものと考えられます。
そうなると、根管のストリッピングパーフォレーションやトランスポーテーションは、最初から、インプラント治療を視野に入れるのも一つかと思います。
私たちは、マイクロスコープで鮮明な拡大視野を手にすることに可能になっても、根管を無菌化するツールの開発はまだまだ遅れているので、結果として、根管治療が更に難治性になっているように感じます。

2014年11月20日

hori (17:05)

カテゴリ:インプラントと歯内療法

喫煙者では、浅いポケットでも、歯周病原細菌が定着しやすい。

喫煙者では深いポケットだけでなく、比較的好気的環境条件の浅いポケットでも、嫌気性菌である歯周病原細菌が定着しやすくなるという報告もある。
これらは天然歯における報告であるが、歯肉溝の喫煙に対する変化であり、インプラントにおいても同様であると思われる。
(参考文献)
Van der Velden U, Varoufaki A, Hunter JW, Xu L, Timmerman MF, Van Winkelhoff AJ, Loos BG. : Effect of smoking and periodontal treatment on the subgingival microflora a retrospective study. J Clin Periodontol. 30(7) : 603-610,2003.
*****
私たちは、歯周病の進行リスクをプロービングの数値やBOPなどにより把握しています。
ところが、喫煙者におけるインプラントでは、プロービング値が浅かったり、BOPが認められなくても、インプラント周囲炎のリスクが高い場合があるようです。
すなわち、喫煙者のインプラントが長期に亘り安定した状態で管理するためには、インプラント周囲の状態が安定しているように見える部位でも、注意深く観察し続ける必要があるということになります。

2014年11月15日

hori (15:30)

カテゴリ:インプラントと喫煙

テンプレートを用いたコンピュータガイドインプラント治療の精度

・テンプレートを用いたコンピュータガイドインプラント治療の精度および臨床結果のシステマティックレビュー
テンプレートを用いたコンピュータガイドインプラント治療の精度および臨床応用に関する文献を本システマティックレビューの目的とした。
メタ解析分析で示された平均差が起始点および根尖部でそれぞれ1.07ミリ(95%Cl : 0.76-1.22ミリ)と1.63ミリ(95%Cl : 1.26-2ミリ)だった。
テンプレートの製法とテンプレートの支持および安定性に関して各研究の間に有意差は認められなかった。
症例中の早期の外科的合併症の発症率はフラップレスでインプラント埋入後、おもに即時荷重で行われた537本のインプラントの12-60か月間の生存率は91-100%であった。
テンプレートを用いたコンピュータガイドインプラント埋入は91-100%ほどの高いインプラント生存率を示した。
しかしながら、多数の技術に関連する術中の合併症が観察された。
妥当な平均精度が臨床前および臨床研究で示されたが最大偏差は比較的大きかった。
より長期な経過観察を含む臨床研究を増やし、術中の操作性、精度および補綴的な合併症などの観点からシステムを改善する必要がある。
(参考文献)
A systematic review on the accuracy and the clinical outcome of computer-guided template-based implant dentistry. Schneider D, Marquardt P, Zwahlen M, Jung RE. Clin Oral Implants Res 2009 ; 20 Suppl 4 : 73-86.
*****
テンプレートを用いたコンピュータガイドインプラント埋入は91-100%ほどの高いインプラント生存率を示しましたが、やはり気になるのが、多数の術中の合併症です。
精度のばらつきが大きいのも気になります。
同じく『テンプレートを用いたコンピュータガイドインプラント埋入』とは言っても、中間欠損における歯牙支持タイプなのか、総義歯に近い欠損様式における粘膜支持かによっても、精度のばらつきの程度は異なることでしょう。
また、『テンプレートを用いたコンピュータガイドインプラント埋入』があると助かるケースは、総義歯に近い症例に対して、傾斜埋入を積極的に行う治療計画を"是"とする場合ともいえるかもしれません。
個人的には、フラットな咬合平面に対して、垂直にインプラントを設置していく(垂直埋入)方が、メンテナンスを考えても妥当と考えているので、傾斜埋入もガイドサージェーリーも今のところ行っていません。
(傾斜埋入をしないということは、オールオンフォーも私の主義主張には合わないために、当院では行わないということです。)

2014年11月10日

hori (15:21)

カテゴリ:インプラントについて

1歯欠損補綴治療についての再考

1歯欠損補綴治療における経済評価:インプラントと固定性ブリッジの比較
結論として、インプラント治療の費用はブリッジによる治療よりも$251-325高く、治療部位にもよるが生存率も10.4%高いことが示された。
(参考文献)
Economic evaluation of single-tooth replacement : dental implant versus fixed partial denture. Int J Oral Maxillofac Implants : 29(3) : 600-607. Kin Y, Park JY, Park SY, Oh SH, Jung Y, Kim JM, Yoo SY, Kin SK
・上顎洞底拳上術を行うにあたって隣在歯が生活歯である場合には、その隣在歯の根尖部を被う上顎洞底粘膜を剥離しないように注意することが重要である。
生活歯の根尖部を被う粘膜を剥離した場合には、根尖孔から入る神経や欠陥が切断され、失活する可能性がある。
また、根尖孔から歯髄に感染がおよび歯髄の壊死や壊疽が生じる可能性もある。
(クインテッセンス デンタルインプラントロジー 2014 vol.21 5)
*****
1歯欠損に対するインプラント治療を行う際、歯槽骨が十分に存在するケースは必ずしも多くはありません。
そのような場合、GBR併用のインプラント埋入手術を計画することになります。
特に、歯槽骨が不足した上顎臼歯部インプラント治療では、上顎洞底拳上術が必要になりますが、隣在歯が生活歯の際には、その部位の上顎洞粘膜を剥離しないように配慮する必要があります。
また、他の論文で、『インプラント治療の費用はブリッジによる治療よりも$251-325高く、治療部位にもよるが10年生存率も10.4%高い。』ことが分かりました。
生存率が、10.4%違うからインプラント治療を選ぶという選択がある一方で、10.4%しか違わないからブリッジを選択するという場合もあるかと思います。
技術の日々の向上はもちろんですが、患者さんの満足のために、いろいろな角度から、有益な情報を得る努力を続けたいものです。

2014年11月 5日

hori (09:15)

カテゴリ:インプラントについて

このページの先頭へ