2015年5月アーカイブ

マイクロエキスカによるエンド治療

根管の3つの治療法
1.アンダーめに治療する。
抜髄症例の場合にはほとんど問題ないであろうが、感染根管治療の場合には、細かく分岐した根管には細菌が残る。
実際には抜髄症例の歯髄の中にも細菌がいることが証明されている。
2.垂直加圧根管充填による治療
良く洗浄すると太い方の根尖分岐には根管充填することができるであろう。
しかし、細い方の分岐に根管充填するのは難しいかもしれない。
やはり細かく分岐した細菌が残る可能性がある。
3.マイクロエキスカによるエンドが目指している治療
問題のある部分をほとんど処置することができる。
欠点としては、根管が太くなること、根尖孔が大きくなるため、MTAで根管充填しなくてはならないことである。
症例の感染の重症度に応じ、3つの治療法を使い分けるのがよいと思われる。
(エンド難症例への挑戦 より)
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3による治療でなければ治癒しない歯牙はどれほどあるのでしょう。
この本の中には根管洗浄についての記載はほとんどありません。
主根管をきっちり根管拡大し、洗浄するという古くからの方法の技術レベルをまず向上させることが重要であると考えています。
若い歯科医師は、まずマイクロスコープ、マイクロエキスカ、MTA等の高価な機材やマテリアルを購入するかもしれません。
そして、『購入したからには、元を取らなければならない。』という気持ちになり、3の治療の割合を増やす方向で採算を合わせようとする可能性もあります。
(当然のことながら、保険診療では3の治療はコスト的にも時間的にも非常に困難です。)
win-winの関係とはよく聞きますが、業者:win(++)、歯科医師:win(+)、患者さん:win(±あるいは-)にならないようにしなければなりません。
日本の歯科では、根管洗浄を行う時間が欧米より少ないと聞きます。
(治療費が保険で低く押さえられているので、時間が十分にはかけられないという状態が、日本の歯内療法の平均的な姿です。)
まずは根管洗浄を昨日よりも少しだけ頑張る、根管洗浄が容易になるように、その根管を確実に拡大する方向で、歯科治療の質を変えていけたらと思います。
ただ実際問題、当院では、"総合治療"を受けられている患者さんの根管治療に限っては、"自由診療の根管治療のつもりで治療を行う"のが現状となっています。
根管治療が日本の保険診療から外れてくれたら、インプラントの治療費と同じか少し高めに治療費を設定したいくらいです。
何でもそうですが、良い面と悪い面があるものですね。

2015年5月30日

hori (07:57)

カテゴリ:インプラントと歯内療法

抜歯で、注意が必要なケースとは?

智歯の歯根が下顎管に近づくと、下顎管の骨皮質によって発育中の智歯の歯根は偏り、歯根の湾曲を起こす。
このため、下顎埋伏智歯で遠心に湾曲した長い歯根を認める場合、その歯根は下顎管に近接している証拠と考え、抜歯に注意が必要である。
(参考文献)
Pederson GW. Oral surgery. 1st ed. Philadelphia : WB Saunders, 1988.
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インプラント治療の偶発症に、下歯槽神経損傷があります。
しかしその頻度は、インプラントよりも抜歯の方がはるかに多いという報告を以前聞きました。
また下顎の親知らず、特に智歯の歯根が遠心に湾曲した長い歯根の抜歯は、下顎管に歯根が近接しているので注意が必要とのことです。
当院では、抜歯とインプラント埋入を同時に行う抜歯即時インプラントを行っていますが、インプラント埋入よりも抜歯の方が時間がかかるというケースも少なくありません。
インプラント周囲の骨の条件を悪くしないように、より丁寧な抜歯操作が必要となるからです。
インプラントはもちろんですが、今一度抜歯の技術レベルの向上を考えていきたいものです。

2015年5月25日

hori (10:35)

カテゴリ:インプラントについて

咬み合わせが悪い方は、第二大臼歯の生え方に異常がある場合が多い。

・第二大臼歯が1本以上生えていない大学生は0.9%、生える方向や位置が正常でないのは、12.4%に上る。
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科教授の森田学氏らは、18,19歳の大学生2205名を対象にし横断調査し、第二大臼歯の異常と咬み合わせの異常との関連性を明らかにした。
調査では、12歳ころに上下左右に計4本生える第二大臼歯が、大学生18人に1本以上生えておらず、240人の生え方に異常を認めた。
ロジスティック回帰分析の結果では、咬み合わせの悪い群は、正常な群と比較して、第二大臼歯の生え方に異常が出るリスクが男性で3.9倍、女性で3.2倍となっている。
研究グループは、横断研究のため因果関係があるとは言えないとしたうえで、「咬み合わせを正常にすると、適正な時期・場所に歯が生えるようにできるかもしれない。第二大臼歯の生え方が悪いと、第一大臼歯の歯周病に影響を与える可能性もあることから、正常な咬み合わせにすることで歯の疾病予防にもつながる」と成果について考察している。
(アポロニア21 2015年4月号)
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正常な歯列では、第一大臼歯と第二大臼歯には、ほぼ同じくらいの咬合力を負担しています。
ところが、第二大臼歯の生え方が不足している場合、第一大臼歯の負担割合が増大するので、歯周病や歯牙破折、クラックを伴う虫歯等のトラブルが第一大臼歯に続きます。
(大阪大学のM教授が仰るように、第二大臼歯が欠損していると顎関節が不安定になるためよくないそうです。)
また、第二大臼歯の位置に異常が認められる場合には、クロスバイトあるいはシザースバイトなどがあると思います。
このような異常咬合は、顎偏位をもたらしたり、顎関節周囲の異常を惹起したりすることになるでしょう。
個人的には、第二大臼歯の生え方が不足しているケースやクロスバイトやシザーズバイトのように歯ぎしりがしにくい咬み合わせでは、相対的にくいしばりの程度や頻度が大きいような気がしています。
またその一方で、よく噛んでいる部位がそうではない部位よりも先行してなくなっているという現象は、歯科治療ではよく拝見します。
歯がなくなったからその部位にインプラント治療という発想はもちろんですが、その歯がなぜなくなる運命にあったかまで考えることによって、同じようにインプラント治療を行っても、長期に安定した状態を維持できるのではないかと考えています。

チョコレートでインプラント周囲炎予防?!

チョコレートは糖尿病を増悪させない?!
チョコレートは高エネルギー食品であり、GI値は91と高く、糖尿病にとって控えるべき食品とされてもおかしくない。
しかし、多くの動物実験や臨床実験では、チョコレートはインスリン感受性を改善させる報告が多くみられる。
Greenbergは、7802人の対象者を平均13.3年間追跡調査し、チョコレートの摂取量と糖尿病発症リスクとの関係を観察している。
1回28gのチョコレートを月に1回以下しかほとんど摂取していない群に比較して、月に1-4回摂取する人は13%、週に2-6回摂取する人は34%、毎日1回以上摂取する人は18%糖尿病発症リスクが低かったと報告している。
この結果、チョコレートは適度に摂取することが好ましく、1回約28gのチョコレートを週に2-6回ほどの頻度で摂取するのが、最も糖尿病発症予防に効果があるとしている。
糖質摂取後の血糖上昇時には血管内皮機能の低下、酸化マーカーの増加などがみられ、これらが食後化血糖に伴う動脈硬化の促進、糖尿病の発症リスク増大をもたらすと考えられる。
Grassiらは、OGTT時の血管反応などを、ダークチョコレート摂取時とホワイトチョコレート摂取時と比較して観察している。
ホワイトチョコレートに比較して、ダークチョコレート摂取時にはflow-mediated-dilatation, endothelin-1, 8-iso-PGF2αなどの改善が有意に認められた。
この研究から、ダークチョコレートに含まれるココアフラバノールが食後化血糖に伴う障害を抑制する作用があることが示されている。
膵β細胞を使った実験で、ココアフラバノールは酸化ストレスによる膵β細胞の障害を抑制することが観察されている。
これらの研究から、適度なダークチョコレートの摂取は、耐糖能障害の抑制に効果のあることが考えられる。
(日本抗加齢医学雑誌 2015 vol 11 No.1)
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歯周病と糖尿病には密接な関係があり、糖尿病が悪化すると歯周病も悪化するといわれています。
また、歯周病が悪化しやすい方は、インプラント周囲炎にもなりやすいと考えられます。
そのような意味でも、1回約28gのダークチョコレートを週に2-6回ほどの頻度で摂取すると、インプラント周囲炎予防にも効果的かもしれませんね。

2015年5月15日

hori (09:46)

カテゴリ:インプラントと糖尿病

60%もの義歯が装着後5年で使用されなくなる。

1970年代前後に、東京医科歯科大学歯学部部分床義歯補綴学分野で、5年間、2000症例程度のクラスプ義歯装着患者への大規模な経過観察・予後調査が行われた。

この調査から、『60%もの義歯が装着後5年で使用されなくなる』ことが明らかになった。
これを解析すると、使用中止に至る原因として以下の3大要因があることが示された。
1.義歯部(有床部・支台装置)の不適合 (24.4%)
2.齲蝕・歯周病による支台歯の喪失 (22.5%)
3.義歯の破損 (29.3%)
・義歯不使用の3大要因を招いていた主な原因
原因1:義歯設計の概念として、当時は「緩圧性」の義歯の動揺を許容する設計の在り方が"良し"とされていた。
原因2:プラークコントロールという概念が歯科補綴領域で希薄であった。
原因3:使用材料とその複合化(金属構造とレジン構造の最適使用)が十分でなかった。
・パーシャルデンチャー治療における設計の3原則
原則1:「義歯の動揺」の最小化→動かない
原則2:予防歯科学的な配慮→汚さない
原則3:破損への対応→壊れない
(パーシャルデンチャー成功のための設計3原則 より)
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1970年代のデータとはいえ、『60%もの義歯が装着後5年で使用されなくなる。』というのは、歯科医師としてはショッキングな内容です。
保険診療で多用されるものに、レジン床義歯、クラスプがあります。
レジン床義歯は咬合力が伝わった際にたわむので、歯牙を揺さぶりやすく、それゆえ寿命を短くします。
また、クラスプ(レジン床義歯を動かないように止める金属の金具)、特に二腕鉤タイプのものは、歯牙を欠損方向に倒す力がかかるので、設計を良く考えないと、同じく歯牙寿命を短くします。
歯牙に対して優しい設計にするには、全体がたわみが少なく、歯牙が傾斜する力がかからない維持装置が必要となります。
また、さらに追加するなら、異物感が少なく、清掃性の優れた義歯設計が重要であることは言うまでもありません。
こうして考えると、歯牙に優しい義歯はレジン床義歯ではなく、金属床義歯の方が良いようにも思いますが、この本の中に次のような記載があり、同じく個人的には愕然としました。
(義歯の不使用率に関してはレジン床義歯と金属床義歯の差異も示され、約10%程度金属床義歯の方が良い成績であった。)
自由診療である金属床義歯でも、たった10%しか義歯の使用率が上がらないことが分かったからです。
メンテナンスが定着した現代ではもう少し数字が改善されるとは思いますが、"使用率"(10年間で95%前後)という側面で考えても、義歯よりインプラントに軍配が上がると言えそうです。

2015年5月10日

hori (17:27)

カテゴリ:入れ歯の悩み

歯周病が悪化すると、口がネバネバするのにも意味があった。

・歯周病研究において、ラット大臼歯に糸を結紮する歯周炎に関する動物実験の結果から、歯周炎の誘発は唾液腺細胞にアポトーシスを引き起こし、唾液分泌能を低下させるというものであった。
つまり、疫学調査において報告されている歯周病患者の唾液分泌能はもともと低かったわけではなく、歯周病発症により低下した可能性が出てきたのである。
九州歯科大学 健康増進学講座 生理学分野の研究では、歯周病モデルラットは耳下腺腺房細胞レベルの受容体、細胞内情報伝達、水輸送分子発現に何ら異常を認めなかったため、腺房細胞の減少が唾液唾液分泌能低下の主な原因であると結論づけた。
興味深いことに、結紮糸を撤去して歯肉炎症の消失を待ったところ(歯槽骨吸収は残る)、唾液腺体積と唾液分泌能は対照群と同程度まで回復した。
つまり、歯周炎発症による唾液分泌能の低下は可逆性であった。
ということは、歯周疾患者で明らかな唾液現象を認めた場合でも、適切な治療により歯肉の炎症を抑えれば、患者の唾液を正常な状態まで戻すことが可能であるかもしれない。
唾液腺は水分泌とタンパク分泌量が少ないとむしろ唾液中の保護成分の濃度を上げることになる。
前出の日本での高齢者歯周病患者での調査では、唾液の分泌能低下に加えて、曳糸性が報告されている。
この性質は唾液中のムチン濃度に依存しているので、歯周病患者の唾液ムチン濃度は高いようである。
また、歯周病患者の唾液中免疫グロブリンAの濃度が高いことから、歯肉炎による唾液分泌能の低下は、むしろ唾液中の保護成分の濃度を上げるための歯肉炎防御反応といえるかもしれない。
唾液分泌能の低下が可逆的であったことは、病理的というよりは生理的な変化であることを示唆している。
シェーグレン症候群や放射線治療を受けた患者並びに唾液腺摘出ラットでは、唾液が過度に分泌されなくなるために唾液の口腔保護作用まで失われるが、歯周炎による唾液分泌能の低下はそこまで深刻ではない。
(日本歯科評論 2015年2月号 )
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まとめると、歯周病の状態が悪化すると、
1.唾液分泌量が減少する。
2.唾液が減少すると、歯肉の保護成分の濃度を高める。
3.歯肉の保護成分は、それ自体がネバネバする成分なので、お口がネバネバする。
一方、また、歯周病発症による唾液分泌能の低下は可逆性であったということですから、歯周病の状態が改善すると、
1.唾液分泌量が増加する。
2.唾液が豊富にあるので、ネバネバした歯肉の保護成分の濃度を減少させる。
3、その結果、お口がサラサラした状態になる。
こうして考えると、口臭でお悩みの方は、口がネバネバすると仰る方が多いのですが、ネバネバするのにも"きちんとした意味"が
あるということが今回の文献で分かりました。
また、唾液が少なくてネバネバした状態が増長しているのであれば、唾液分泌が増大するようにすればよいということになります。
具体的には、歯周病の歯があるのなら歯周病治療を受け、インプラントがあるのならメンテナンスをしっかり受けて、歯肉の状態を改善すれば、自然と口臭の悩みも払しょくすることができるということになりますね。

2015年5月 5日

hori (09:55)

カテゴリ:歯周病の悩み

傾斜した大臼歯は特に側方力に弱い。

・歯の欠損を放置すると、特に下顎の遠心側隣在歯には通常近心傾斜が生じる。
これに伴う垂直方向の機能圧に対する抵抗能力は、歯軸が25°傾斜した条件では、およそ1/2-1/3となる。
このことからも十分に認識し、支台歯として用いる場合に容易な対応は避けなければならない。
・健康な歯の支持能力は、歯軸方向への力に対する抵抗性に対して側方力に対する抵抗性は、およそ犬歯で約1/16、切歯で1/20、小臼歯で1/25、大臼歯で1/32である。
ヒトの歯根は円錐形をしており、垂直圧に対しては歯根膜全体に機能圧が分散するため大きな力に抵抗できるが、側方圧に対してソケット辺縁の1か所に機能圧が集中するため、歯周組織の破壊を招きやすい。
(基本クラスプデンチャーの設計 より)
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このところ、アブフラクションおよび歯髄充血による歯痛を訴える患者さんが増加傾向にあるように感じます。
これらに関係すると考えられるのは、大臼歯の近心舌側偏位に伴う側方力が相対的に増大し、歯周組織の破壊が惹起されているものと推察されます。
歯牙が傾斜していることが問題ならば、歯列矯正を行い歯軸を改善するのが第一選択ですが、近年、患者さんの顎骨が小さいがゆえに、骨密度が高すぎる下顎骨体部に後方臼歯が存在し、それゆえに歯牙移動が困難なケースが見受けられます。
そのような場合、歯自体は健康でも、トータルの咬み合わせに問題を生じている場合は、歯軸改善を目的としたインプラント治療を行う場合があります。
やはり、インプラント治療でも歯列矯正でも良好な咬み合わせの構築を行うためのツールに過ぎないのです。

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