2016年3月アーカイブ

支台歯の色、セメントの色、セラミックスの厚みが、CAD/CAMセラミックス冠の視覚的色彩に与える影響

・支台歯の色、セメントの色、セラミックスの厚みが二ケイ酸リチウム強化型モノリシック(一体構造型)CAD/CAMグラスセラミックスクラウンの視覚的色彩に与える影響
1. 4つの支台歯色(light, medium light, medium dark, dark),
2. 二つのセメント色(variolink?,のtranslucentと opaque)
3. セラミックスの厚み(1.0?、1.5?、2.0?、2.5?)である。
それぞれの色の組み合わせで分光測定器を用いて測定し、色の違いを計算する。
結果:二ケイ酸リチウム強化型モノリシック(一体構造型)CAD/CAMグラスセラミックスクラウンの色の違いは、支台歯(P<0.001)、セメント色(P<0.001)、セラミックの厚み(P<0.001)に、有意に影響を受けた。
また相互作用もこれら3つの変数間でみられた(P<0.001)。
ダークカラーの支台歯は他の変数と比較し、最も大きな色違いを示した。
セラミックスの厚みに伴い、色の違いの有意な減少が見られた。(P<0.01)。
クラウンをオペークセメントで接着した際、色の違いはわずかに減少した。
(参考文献)
Chaiyabutr y, et al. J Prosthet Dent 2011 ; 105(2) : 83-90.
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セラミックスクラウンの接着の際に、セメントの色調の違いで、最終的な補綴物の色調が変化するとされていました。
そのため、色調の異なる複数のセメントと、その色調は同じであるけれども接着力がないペーストが販売されていました。
今回の報告により、セメント色の違いよりもセラミックスの厚みを厚くするという対処方法の方が、術者のイメージ通りの色調を再現できることが分かりました。
また、セラミックスの厚みを最大限厚くしても、支台歯の色調が暗い場合は、完全にはリカバーできないということもわかりました。
そのような支台歯の色調が暗いケースでは、そもそもCAD/CAMグラスセラミックスクラウンを選択しなければよいということにもなるでしょう。
一方、インプラントでジルコニアアバットメントを使用する場合には、支台歯の色調には全く影響されないので、色調に関しては、インプラントより天然歯の補綴の方が一手間多くかかると考えてもよいかもしれません。

2016年3月30日

hori (10:54)

カテゴリ:上顎前歯部のインプラントの

HbA1cが8%以下の糖尿病患者でのインプラント治療は、何も問題なし。

・2型糖尿病患者におけるインプラント周囲溝滲出液中の炎症性サイトカインレベルと臨床パラメータの評価
〇諸言
オッセオインテグレーションを阻害する代謝異常の一つに、高血糖に特徴づけられる糖尿病がある。
糖尿病による単球、マクロファージの異常反応の結果、IL-1β、TNF-αのような炎症性サイトカインやメディエーターが過剰産生される。
これらのサイトカインの過剰産生は歯周組織やインプラント周囲組織を破壊に導く。
本研究の目的は、インプラント周囲の状態を評価するだけでなく、良好にコントロールされた2型糖尿病患者と健常者において、インプラント周囲溝滲出液と歯肉溝滲出液中のIL-βとTNF-αのレベルを比較し、評価することである。
〇材料と方法
13名のコントロール良好な2型糖尿病患者(HbA1c<8%;グループD)と7名の全身的に健康なグループ(グループC)
HbA1c、空腹時血糖値、ランダム血糖値濃度、総コレステロール値、中性脂肪、善玉コレステロール、悪玉コレステロールが2型糖尿病患者のベースライン時と治療後7か月に測定された。
プラーク指数、歯肉歯数、プロービング時の出血、クリニカルアタッチメントは1歯および1本のインプラントにつき6点法で測定した。
合計39本のインプラントを20名の被験者に埋入した。
27本はグループDの13名に、12本はグループCの7名に埋入した。
〇結果
グループDのHbA1c、空腹時血糖値、ランダム血糖値濃度は、グループCと比較してベースライン時で有意に高い値を示した。
プラーク指数、歯肉歯数、プロービング時のポケット深さ、プロービング時の出血、角化歯肉幅はグループ間でベースライン時とそれ以降においても有意差は認められなかった。
グループDにおいて、インプラント周囲のプラーク指数は歯と比較して4か月および7か月で有意に減少した。
バイオマーカー分析ではインプラント周囲溝と歯肉溝のIL-1βとTNF-αの濃度と総レベルを評価した。
グループ内の歯とインプラント周囲やグループ間でベースライン時またはそれ以降に有意差は認められなかった。
〇結論
本研究には限界はあるものの、HbA1cが8%以下の糖尿病患者でのインプラント治療に臨床上の障害はなく、重篤な合併症も生じないことが示された。
さらに、グループ内やグループ間、またインプラント周囲や歯とで、IL-1βやTNF-α濃度や量に違いはなかった。
本研究の結果は、先行研究で示されている、良好にコントロールされた2型糖尿病患者はインプラント治療が可能であるという根拠を支持するものである。
(参考文献)
Evaluation of clinical parameters and levels of proinflammatory cytokines in the crevicular fluid around dental implants with type 2 diabetes mellitus. Dogan SB, Kurtis MB, Tuter G, Serdar M, Watanabe K, Karakis S. Int J Oral Maxillofac 2015 ; 30(5) : 1119-1127.
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糖尿病はインプラント治療を行ううえで、リスクファクターであると言われています。
ただ、実際のインプラント臨床では、糖尿病の方にインプラント治療を行っても、その程度が軽度であるならば、特に何も問題はないのではなかろうかと個人的には考えていました。
そんな折、HbA1c(正常値:4.6-6.2%)が8%以下の糖尿病患者さんにおけるインプラント治療は問題がないことがエビデンスとして報告されました。
糖尿病の患者さんには朗報かもしれませんね。

2016年3月25日

hori (17:09)

カテゴリ:インプラントと糖尿病

インプラントは天然歯より100倍鈍い?!

・無歯顎患者の咬合圧による口腔内触覚(能動的・受動的条件)の研究においてMericskeは、歯牙粘膜負担による義歯とインプラント支持によるオーバーデンチャーの比較において、能動的条件(口腔内触覚閾値)はインプラント支持が低下しており、受動的感覚(天然歯およびインプラントに直接触れたときの知覚能力)において、インプラントは天然歯と比較して100倍の咬合圧が必要と大きな違いがあると報告している。
また咬合圧の試験では第二小臼歯が最も高く、これはインプラントに過剰な負荷がかかる可能性を示すものである。
したがって、下顎無歯顎に対しインプラント支持のオーバーデンチャーを応用する際には、第二小臼歯より前方のオトガイ孔間にインプラントを埋入するすることが推奨される。
・オーバーデンチャーの機能
       能動条件   受動条件    第一小臼歯    第二小臼歯    大臼歯
天然歯根   10-100μm  1-4g      112.1       131.2       119.1
インプラント  N.D     100-400g    130        142.6       135.5
                                     最大咬合圧(平均値:Newton)
インプラント ジャーナル 2016  65 )
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この報告により、インプラントの触覚閾値は天然歯の100倍の咬合力を必要とすることが明らかになりました。
『インプラント治療を受けたら、天然歯の頃よりすごくよく咬めるようになった。』と喜びの声を聞くことは少なくありせんが、これはインプラントの感覚がある意味天然歯よりはるかに鈍い(このデータでは100倍)ことと関連していると思います。
すなわち、インプラントが強く咬んでも咬んでいる認識が薄いために、インプラント治療後のトラブルは引き起こされているといっても過言ではありません。
インプラントと対合する天然歯を破壊したり、インプラント上部のセラミックスを破損したりするのも、皆インプラントの触圧感覚が鈍いことと関係があるのです。
そのため、インプラント治療後には、特定の歯やインプラントに力が集中しないように、定期的な咬合調整が必要となるのです。

2016年3月22日

hori (09:47)

カテゴリ:インプラントと過剰な力

インプラントと天然歯とでは咬合時の沈下量が異なる。

天然歯同士が嵌合する場合の沈下量は50μ、天然歯とインプラントでは30μ、インプラント同士で嵌合する場合では10μ沈下するとされています。
また正常な天然歯に荷重が加わると50-100μの範囲で咬合時の衝撃を吸収する許容量がありますが、インプラントにおいては10-50μ程度であると言われています。
しかし、これは歯槽骨の歪みによる二次的な偏位であって、実質的な被圧変位量は上下的に3-5μ程度であり、限りなくゼロに近いと考えておくべきでしょう。
(咬合治療 失敗回避のためのポイント38 より)
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天然歯とインプラントが混在した口腔内では、場所によって、インプラント-インプラント、インプラント-天然歯、天然歯?天然歯と3つのパターンの咬み合わせが存在します。
咬合時の沈下量がそれぞれで異なるので、咬み合わせの調整が容易ではないと考えられてきました。
そのため、インプラントの上部構造部は咬まないように低い被せ物がなされてきました。
ただ意図的にインプラントの咬み合わせを低くしても、良い状態を維持できないこともわかってきました。
そうして現在では、日本補綴歯科学会でもインプラントは天然歯と同程度咬ませるべきであると考え方が変化してきたのです。

2016年3月20日

hori (16:02)

カテゴリ:インプラントについて

下顎前歯の形成は便宜抜髄を行う方が無難かもしれない。

アテネ大学の卒前学生が患者33名の有髄歯120歯を形成し、クラウン装着時までの間無症状に失活する頻度を調べた前向き研究
・形成後に電気診で歯髄の生死を判定した。
・臨床症状が出現したような歯は対象歯から除いた。
・無症状の失活は術前に齲蝕や歯冠修復歯のある歯で頻度が高かった。
・下顎前歯は小さいために形成により象牙質が薄くなり、術前が健全歯でも失活しやすかった。
術前が健全歯
上顎前歯 100%
上顎臼歯 100% 
下顎前歯 89.4%
下顎臼歯 100%
術前に齲蝕、修復物、クラウンあり
上顎前歯 84%
上顎臼歯 89.4%
下顎前歯 66%
下顎臼歯 90.4%
(参考文献)
Kontakitotis EG, et al. Aprospective study of the incidence of asymptomatic pulp necrosis following crown preparation. Int Endod J. 2015; 48(6): 512-517.
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オールセラミックス等の自由診療の被せ物を行う場合、最初に神経を除去するかどうかは、各歯科医師が経験則で判断していました。
しかしながら、今回の報告により、特に下顎前歯の審美治療では、便宜抜髄後に歯冠形成を行った方が無難であることが分かりました。
また、それ以外の部位でも10本に1本あるいは2本は、修復治療が終了した後に失活するリスクがあるために、患者さんと相談の上、治療方針を決定する必要性があるといえます。
仮に修復後に失活歯、不快症状が続く際には、上からアクセスして根管治療を行うこともできますが、メタルセラミックスなどのメタルを使用した冠で再補綴を行わない場合には、根管長測定がしにくい問題や根管充填後の封鎖性が確実ではないなどの問題も出てきます。
迷ったら、根管処置を行う方が無難ですね。
中間欠損部位にインプラント治療を行う際には、前後の歯も形成し、インプラント上部に仮歯を手術当時から用意することも可能です。
(即時インプラントや暫間インプラントの利用など他にも仮歯を用意する方法はありますが。)
そのような場合、埋入したインプラントと根尖病巣のある天然歯が近接するリスクが生じる場合があるので、インプラントを長持ちさせるためにも、予後に不安のある天然歯は根管治療を済ませておいた方が良いと考えています。

2016年3月15日

hori (15:27)

カテゴリ:抜歯即時インプラント

WHOも危惧する『薬で治す歯周病』

・歯科医師はすべからく内科医的になるべきだという風潮が生まれました。
例えば、歯周病をアジスロマイシンの内服によって抑えようというのような歯科医療
これは日本でも見られますが、世界保健機構(WHO)が「多剤耐性菌の発生が保健政策上の最大の危機」と警告している中で、歯周病のコントロールの目的に強い抗生剤を使うのは、リスクとベネフィットとの関係上、妥当なことなのか疑問が生じます。
歯周病を抑えるのであれば、プラークコントロールを第一に考えるのが、一般的ではではないでしょうか。
それならばコストもかかりませんし、健康上のリスクもありません。
アポロニア21 2015年2月号 )
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世界保健機構(WHO)が多剤耐性菌の発生を危惧しているようです。
そのような状況から考えても、薬で治す歯周病は行うべきではないでしょう。
もちろん、インプラント周囲炎も薬では治りません。

2016年3月10日

hori (15:00)

カテゴリ:インプラント周囲炎

根分岐部病変の予後

・近年の研究で、Johanssonら(2013)は、3-4か月に一度のメンテナンスを受けた患者の場合、13-16年間で、根分岐部病変がない場合は15%、1度の場合は27%、2度の場合は40%、3度の場合は100%。
また、Salviら(2014)は、平均11.5年間のSPT期間において、根分岐部病変がない場合は9.4%、1度の場合は9.6%、2度で23.7%、3度で43.5%。
また歯根切断抜去を行ったうちの38.5%の歯が喪失したことを報告した。
これらのことから、治療のゴールとして、根分岐部病変に面した歯肉に明らかな炎症の兆候がない場合は、1度の状態でも長期的保存が可能であると考えられる。
したがって、問題となるのは、特に2度以上の根分岐部病変と考えるべきである。
根分岐部病変 より)
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文献による若干の数字の違いはありますが、メンテナンスを受けている方の根分岐部病変の予後に関するデータです。
当然のことながら、メンテンスを受けていない方は、根分岐病変の予後はこれらのデータ以上に不良となるということは言うまでもありません。
インプラント治療を希望される方の中で、大臼歯の根分岐病変を有する歯牙をお持ちの方は少なくありません。
また根分岐部病変を有する歯をお持ちの方は、力の要素が強い方が多い印象が個人的にはあります。
力の要素が強いだけに、入れ歯で咬めるレベル以上にしっかりと咬みたいという希望があるために、インプラント治療を希望されている場合もあることでしょう。

2016年3月 5日

hori (09:16)

カテゴリ:根分岐部病変

インプラント周囲炎を抑制する菌株?!

・あまり歯を磨かないのに齲蝕になったことのない人を探し、唾液を採取した結果、齲蝕罹患歴のない子供からお年寄りまで13名の唾液を採取できました。
その唾液から乳酸菌株を42菌分離して、スクリーニングを行いました。
その中で、1.虫歯菌であるミュータンス菌に対して抑制効果の高いもの、2.歯周病菌であるP.g菌への抑制効果のあるものを、さらに3.カンジタ菌にも効果があるものということで、三段階の試験を経てKO3株・YU3株・YU4株の3菌株を発見したのです。
16sリボゾームRNAのシークエンスを行った結果、KO3株はラクトバチルス・ラムノーザスに、YU3株はラクトバチルス・カゼイに、YU4株はラクトバチルス・パラカゼイに分類されることがわかりました。
歯科口腔抗菌考 より)
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歯をあまり磨かないのに齲蝕になりにくいタイプの人がいます。
そのような方を集めて唾液を採取し、口腔細菌の種類を特定したところ、虫歯菌、歯周病菌、カンジタ菌をそれぞれ抑制する細菌が発見されたという報告です。
仮にそのような細菌を、リスクのある患者さんに移植することが可能であれば、歯でお困りの方を減らすことが可能と考えられます。
インプラント周囲炎予防にも歯周病菌であるP.g菌の抑制効果のあるYU3株を移植すれば、そのリスクが減少させることが可能かもしれません。
今後に期待したいですね。

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