2016年11月アーカイブ

骨粗鬆症患者に対する、BP製剤の休薬について

・BP投与中患者でBRONJ発生のない予防的な休薬について、医科では休薬の必要性はないとしたが、米国口腔外科学会はBP製剤4年以上投与患者、または侵襲性歯科治療時における2か月間の予防的休薬の意義を唱え、日本口腔外科学会も準じている旨が明記された。
BRONJ発生時の休薬は「骨折リスク」ではなく、患者の全身状態が許すならば実施する、と訂正した。
(ザ・クインテッセンス 2016年11月号 )
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骨粗鬆症患者に投与されているBP製剤の休薬についての見解が大きく変わりました。
例えば、2012年のポジションペーパーでは、『骨粗鬆症患者にBP製剤を投与3年以上で、骨折リスクが高くなければ、休薬が望ましい。』との見解だったのが、2016年のポジションペーパーでは、『BP製剤を4年以上の投与で、骨折リスクが高い場合は、原則として予防的に休薬しない。』となりました。
また、BP製剤を、医科では『予防的な休薬しないと』いう見解であるのに対して、歯科では、『4年以上投与患者、または侵襲性歯科治療時における2か月間の予防的休薬をする』という見解で大きく異なります。
このままであると、インプラント治療を受けるために歯科に来院された患者さんが、医科で投与されているBP製剤の休薬を許可されず、その結果、歯科治療が受けられないということになります。
患者さんのQOL向上のためにも、早期の医科・歯科の緊密な連携を期待します。

2016年11月30日

hori (14:05)

カテゴリ:インプラントと骨粗鬆症

インプラント周囲炎に歯周炎と同じ治療法を用いても奏功しない。

・インプラント周囲炎を引き起こす細菌叢は、歯周炎と細菌種や細菌の比率、活動性の高い細菌種が異なる。
インプラント周囲炎に歯周炎と同じ治療法を用いても奏功しない理由の一つと考察している。
研究グループは、インプラント周囲炎と歯周炎の両疾患に罹患した成人12人を対象にし、歯およびインプラント周囲からプラークを採取。
細菌RNAを抽出し、次世代シークエンサーを用いて得られた遺伝子情報を基に両疾患に関わる細菌種の同定とその細菌叢の持つ機能を解析した。
細菌種の組成では、ほぼ同様の病態を示している両疾患で、細菌種の割合は異なり、原因細菌は異なると考えられた。
一方で、機能遺伝子の分析を調べると、両疾患ともに炭水化物やタンパク質の合成や分解に関連する遺伝子が多く発現していた。
しかし、バイオフィルム内でより活発な機能遺伝子を発現している細菌種については、両疾患で異なり、各菌間の共起関係を基に細菌間相互作用を調べると、両疾患で細菌ネットワーク網も異なると判明した。
また、両疾患で病原因子が類似しているものの、健康な歯の周囲に認められるプラーク細菌叢とは明らかに異なる病原組成だと分かった。
(アポロニア21 2016年10月号 )
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インプラント周囲炎を引き起こす細菌と歯周炎を引き起こす細菌が、それぞれ異なることが明らかになりました。
またそれにより、インプラント周囲炎に歯周炎と同じ治療法を用いても奏功しないこともわかりました。
インプラント周囲炎の治療は、近年様々な方法が報告されていますが、手技が簡単で効果的な方法というのは、まだありません。
今後の研究に期待したいところです。

2016年11月25日

hori (10:16)

カテゴリ:インプラント周囲炎

他院で装着されたノンメタルクラスプデンチャーの修理

・他院で装着されたノンメタルクラスプデンチャーを修理する場合は、その材料が分からないが、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネイト系樹脂およびアクリル系樹脂のいずれの熱可塑性樹脂にも有効であったロカテック処理後にスーパーボンド処理をする表面方法を応用し、その後、修理用常温重合レジンあるいはリライン用アクリルレジンで修理する方法が、考えられるベストな方法であろうと思われる。

(接着の論点 )

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これまでノンメタルクラスプデンチャーは、古くからの材料であると、義歯と顎堤との間に隙間が生じた場合、再製作以外の方法はないとされてきました。

しかしながら、接着の分野の研究報告により、材質が何であろうとも、ロカテック処理にスーパーボンドで処理を行い、その後通常通りリラインすれば、再度義歯が使用可能となることが明らかになりました。

以前の常識が、現在の非常識になる一つの例であろうと考えています。

そのような意味でも日々の研鑽は必要ですね。

2016年11月20日

hori (11:01)

カテゴリ:インプラントの禁忌症

Bコンタクト喪失で、歯牙傾斜。

・もしも、Bコンタクトが失われると、上顎が頬側に傾斜し、また下顎は舌側へ傾くようになります。
そのため、歯はBコンタクトにより位置的バランスが保たれるということになるのです。
これがBコンタクトがイコライザーと呼ばれる理由です。
(補綴に強くなる本 上 )
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Bコンタクトが失われると、上顎臼歯は頬側に、下顎臼歯は舌側に傾斜するそうです。
上下顎の歯牙がともに傾斜の程度が増大するということは、咬合力を受ける方向と萌出方向の相違が増大することになりますから、歯牙に対する側方圧も結果的に増大することになります。
近年アブフラクションが問題となってきているのも、このBコンタクトの咬合接触が不足していることと関係があるのかもしれません。
また、上顎大臼歯が頬側に傾斜すると、鋭利な機能咬頭が下顎大臼歯の破折を惹起しているようにも考えられます。
上顎大臼歯の強度を増大させる機能があるとされているカラベリー結節は、上顎大臼歯には認められるものの、上顎小臼歯には認められません。
そのようなことが関連しているのか、歯牙破折は、大臼歯部では下顎に、小臼歯部では上顎に多いとされています。
個人的には非常に興味深い分野であると考えています。

2016年11月15日

hori (10:47)

カテゴリ:インプラントと過剰な力

BP治療下患者に対するインプラント治療および骨増生

・ビスフォスフォネート治療下における自家骨を用いた大規模骨造成およびインプラント埋入 : 15のケースシリーズ
BP治療下にある患者は、ビスフォスフォネート関連顎骨壊死(以下 BRONJ)との関係性のために、インプラント治療および骨増生に対し高リスクとなる。
個人のリスクプロファイルに従って選択された。
問診より骨粗鬆症のためBP製剤を服用中との15名の患者に対し、大規模骨増生および歯科インプラント埋入を行った。
47部位においては、採取した下顎ブロック骨をブロック骨分割テクニックに従って移植し、14部位には上顎洞底拳上術を施した。
71本のインプラントを埋入し、4か月後に補綴治療を行った。
大部分の移植骨は期待通り治癒し、計画通りの部位にインプラントを埋入できた。
2名の患者に移植骨の不完全な治癒を認めたため、インプラント埋入時再度骨増生を施した。
他の2名に軟組織の限局した壊死を認めたが、局所麻酔で問題なく対応できた。
即時荷重を行ったインプラントが1本喪失した。
すべてにおいて治癒は順調であり、BP製剤使用の既往がない患者と同等であった。
最長6年のフォローアップ期間中、重度の骨吸収、BRONJ、感染もしくはインプラント周囲炎は生じず、すべてのインプラントは臨床的にもX線学的にも良好なオッセオインテグレーションを維持した。
個人のリスクプロファイルに応じてBP治療を制限することで、骨増生を成功裡に行うことが可能であった。
さらなる調査研究が必要である。
(参考文献)
Extensive Autogenous Bone Augmentation and Implantation in Patients Under Bisphosphonate Treatment : A15
-case Series. Founad Khoury, DMD,phD / Herman Hidajat,DMD Int J Periodontics Restorative Dent 2016; 36:9-18. doi: 10.11 607/prd.2608.
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一般に、ビスフォスフォネート(以下BP)治療下にある患者は、ビスフォスフォネート関連顎骨壊死(以下 BRONJ)との関係性のために、インプラント治療および骨増生に対し高リスクと言われています。
また、BP製剤を内服薬として服用している人よりも注射薬として静脈内注射している人の方が、BRONJのリスクは高いともいわれています。
今回の文献では、BP製剤を内服薬として服用している人を対象に骨増生を含めたインプラント治療を行った結果、BP製剤使用の既往がない患者と同等であることが明らかになりました。
今回紹介した文献はアブストラクトのみということもあり、内服薬の服用期間が書かれていないので、更なる情報収集をしたうえで、実際のインプラント臨床に役立てたいと考えています。

2016年11月10日

hori (16:34)

カテゴリ:インプラントの禁忌症

インプラント補綴のレジンセメントの使用について

・筆者は、インプラント補綴にレジンセメントを使用している。
金属と金属、あるいは金属とジルコニアという状態で、チタンのアバットメントに対して、ジルコニアクラウン、チタンのアバットメントに対してメタルボンドクラウンなど、この界面に対して接着材を使わないレジンセメントは、ただ強度があるだけの仮着と思っています。
ですから、力をかければ外れます。
天然歯の場合は接着機構は成り立ちますが、金属と金属では成り立たないと思います。
インプラントの場合、相手が天然歯ではなく、アバットメントなので、どんな接着材を使おうが結果は仮着なのではないでしょうか。

(デンタルダイヤモンド 2016年9月号)

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インプラントの固定様式の一つに、セメントリテインという方法があります。

これまで使用するセメントは仮着用セメントでしたが、今回の指摘のようにレジンセメントを使用してもあまり問題はないと考えられます。

またとくに前歯部でセメントリテインのインプラントが脱離し、それを放置した場合、その周囲の歯肉形態は刻一刻と変化していき、脱離した期間があまりに長期に亘ると、プロビジョナルに戻り、歯肉形態の付与から再度やり直さなくてはなりません。

このような手間のかかる作業が時に必要になる場合があることを考えると、特に前歯部のシングルのインプラントでは、レジンセメントは悪い方法ではないと考えられます。

そしてさらに、そもそもレジンセメントでインプラントの上部構造を固定しても、それは通常の天然歯の場合の接着機構とは異なるため、真の意味での接着ではありません。

セメントリテインで、何かトラブルが合ったら、上からホール形成をして、スクリューリテインに変更するだけのことです。

確かに面倒な作業ではあるけれど、大したトラブルではないと考えられます。

2016年11月 5日

hori (13:59)

カテゴリ:スクリューリテインとセメントリテイン

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