2017年2月アーカイブ
ガイデッドサージェーリーの健康被害
・dos Santosは、ガイデッドサージェーリーでは、ドリルが金属製ドリルガイドチューブを削っている可能性があり、ドリルの材質よりもガイドチューブの材料の骨組織内への飛散が懸念されると述べている。
(参考文献)
dos Santos PL, Queiroz TP, Margonar R, de Souza Carvalho AC, Betoni W Jr, Rezende RR, dos Santos PH, Garcia IR Jr. Evaluation of bone heating drill defomation, and drill roughness after implant osteotomy : guides surgery and classic drilling procedure. Int J Oral Maxillofac Implants 2014 ; 29(1) : 51-58.
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ガイディドサージェリーでは、注水が届きにくく、歯槽骨のオーバーヒートが懸念されています。
歯槽骨がオーバーヒートを起こすとインプラントが骨結合を起こさないので、再度インプラントを埋入する結果となります。
そのため現在は、毎回新品のドリルを使用することで、少しでもオーバーヒートを回避する方向にガイドラインが変更されてきました。
ところが、新品のよく切れるドリルを使用することで、今度は金属製ドリルガイドチューブを削っている可能性が疑われ、それにより、ガイドチューブの材料の骨組織内への飛散が懸念されるようになってきました。
すなわち、ガイドチューブの材料がイオン化して、血流に入り込むリスクがあるので、アレルギー等の健康被害が惹起される可能性があるということになります。
ガイディドサージェリーは最新のインプラント治療と謳われて久しいですが、ここでも『最新は必ずしも最善とは限らない。』と考えざるを得ません。
根管治療歯は咬んだ感覚が希薄である。
・Randow&Glantzは、根管治療歯と生活歯では咬んだ時の感覚にどれくらいの差があるのかを歯に重りをつけて検証したところ、根管治療歯は生活歯に比べて2倍以上の力を加えると、初めて咬んでいる感覚が得られたと報告している。
それゆえに、根管治療歯は生活歯に比べて強い力が加わる可能性があり、継時的な変化として垂直性歯根破折を引き起こす可能性が考えられる。
(参考文献)
Randow k, Glantz PO. On cantilever loading of vital and non-vaital teeth. An experimental clinical study. Acta Odontol Acand. 1986; 44(5): 271-277.
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インプラントと隣接した歯が歯根破折を引きこすケースは珍しくないといわれています。
その歯根破折が生じた歯の多くは、根管治療歯であることが多いのですが、咬んでいる感覚が生活歯よりも乏しいために、力強く咬んでしまい、歯根破折に至っている可能性が推察されます。
また大臼歯部に歯牙が欠損していて、その部分にインプラントを希望される患者さんがいる場合、その前方に存在する小臼歯は根管治療歯であるケースは少なくありません。
このような場合、インプラント治療前に最後方に位置していた小臼歯にはマイクロクラックが蓄積しているので、後方にインプラントが入った途端、あまり硬いものを食べたわけではないのに、歯が割れたという現象が起きるのかもしれません。
インプラントの前方の歯牙がやむなく抜歯しなくてはならない場合、更にその前方の天然歯と後方のインプラントは連結しないのが一般的です。
そうなると、治療方針は
1. 追加でのインプラント治療。
2. 部分入れ歯。
3. 補綴(被せ)なし。
の3つから選択することになります。
こうして考えると、歯根破折が将来疑われる歯については、場合によっては抜歯も視野に入れるケースも出てくるのではないでしょうか。
インプラントの受動的触知覚の閾値は、天然歯よりも20倍大きい。
・歯根膜がないことに由来する咬合感覚も、インプラントは天然歯と異なる様相を呈する。
触知覚には、能動的触知覚と受動的触知覚とがある。
能動的触知覚とは、どれくらいの厚さの物があると知覚するかということであり、厚さ弁別能ともいう。
これに対して、受動的触知覚とは、歯もしくはインプラントにどれくらいの圧を作用させると知覚するかということである。
・インプラントの受動的触知覚について、Hammerleらは、ITIインプラントを埋入し、単冠により補綴してから1年経過後の22名を被験者とし、受動的触知覚を調べている。
インプラントの受動的触知覚は、平均100.6g、天然歯は平均11.5gであり、インプラントは、天然歯と比較し、受動的触知覚の閾値が8.75倍大きいと報告している。
・Higakiらは、触知覚に関する6本の論文のメタアナライシスを行っており、インプラントの能動的触知覚(厚さ弁別能)は、天然歯の1.2-2.3倍で、その受動的触知覚は天然歯の4-20倍であると報告しており、一般にはインプラントの触閾値は天然歯よりも劣ると考えられる。
(参考文献)
Hammerle CH, Wagner D, Bragger U, Lussi A, Joss A, Lang NP. Threshold of tactile sensitivity perceived with dental endosseous implants and natural teeth. Clin Oral Implants Res 1995 ; 6(2) : 83-90.
Higaki N, Goro T, Ishida Y, Watanabe M, Tomotake Y, Ichikawa T. Do sensation differences exist between dental implants and natural teeth? : a meta-analysis. Clin Oral Implants Res 2014 ; 25(11). : 1307-1310.
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受動的触知覚、すなわち『どのくらいの咬合力を作用させると、インプラントと天然歯は、それぞれ圧がかかっているということを知覚するのか』についての研究報告です。
これによるとインプラントは、最大で20倍も天然歯より大きな咬合力を与えられてようやく、その圧を知覚するそうです。
一度骨結合したインプラントが痛むことはほぼ皆無です。
天然歯であればとうに、痛み等のトラブルに発展している状態になっているような咬合力でも、インプラントでは何事もないかのように使用できているというのは、インプラント治療では珍しく無いように感じます。
でも、それだからこそ、セラミックスが破折した際に、患者さんは『硬い物を食べたわけではないのに、セラミックスが欠けた。』という認識があるのです。
患者さんとのトラブルを避けるためにも、『インプラントの感覚閾値は、天然歯よりもはるかに大きい。』ということを十分に説明したうえで、実際のインプラント治療に対峙する必要があるということになります。
歯周病発症リスクは、生産工程・労務従事者は2.52倍。
男性における歯周病の発症リスクは職種で異なる。
岡山大学病院予防歯科と愛知学院大学、三重大学共同研究グループが明らかにしたもので、生産工程・労務従事者や販売従事者、運輸・通信従事者は、専門的・技術的従事者に比べて高リスクであった。
職種における歯科検診は任意だが、リスクの高い職種に対しては、定期的な歯科健診と歯科保健指導の実施を強く推奨すると訴えている。
同グループは、名古屋市内での歯科検診受診者3390人(男性2848人、女性542人)を対象に、2001年度から06年度までの5年間の追跡研究を実施。
結果、男性における歯周病発症リスクは専門・技術的従事者に対して、生産工程・労務従事者は2.52倍、販売従事者は2.39倍、運輸・通信従事者は2.74倍と判明。
職業による精神的なストレスは、歯科保健行動に悪影響を及ぼすといわれ、職業間における歯科保健行動の違いが、職業間で歯周病発症に差が生じた原因ではないかと推測している。
一方で、女性は職業間に有意差はなく、男性に比べて、健康に対して気を使う傾向にあり、社会経済学要因を受けにくい可能性があると分析している。
(アポロニア21 2016年 1月号 )
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男性における歯周病発症リスクは、その人の職業によって異なるという研究報告です。
なお具体的には、専門・技術的従事者に対して、生産工程・労務従事者は2.52倍、販売従事者は2.39倍、運輸・通信従事者は2.74倍と判明したそうです。
これらの職業に就く人たちは、健康を犠牲にして仕事をする傾向があるということを認識したうえで、日々の仕事に対峙する必要があると考えられます。
また今回のデータは歯周病発症リスクですが、インプラント周囲炎発症リスクについても同様の傾向が認められる可能性があります。
今後の報告に期待したいです。
歯並びの良い人が成功者
・「歯並びが良い」「真顔」「歯並びが悪い」の3様の同一人物の顔写真を見せて「社会的に成功して見える顔はどれか」と質問したところ、「歯並びの良い人が成功者」という回答が最も多かった。
また、女性に対して「歯並びの良い人」と回答した人は70%、男性に対して同じ回答をした人は55%と、男女による歯並びが与える印象にも違いがみられた。
歯科矯正治療システムを提供するアライン・テクノロジー・ジャパンが11月25日に発表した、20-40代の日米800人対象の「成功者に求められる歯並びに関する意識調査」によるもの。
(アポロニア21 2016年 1月号 )
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歯並びが良い人が、社会的に成功して見える顔という回答が多かったようです。
インプラント治療も歯列矯正治療も咬み合わせの治療としての一つのアプローチ法にすぎません。
良い咬み合わせを追求していくと、マクロな視点では歯並びの良い状態になっています。
機能を追求していくと、審美的にも良好な方向へをシフトするということになります。