2017年4月アーカイブ

クロルヘキシジンは齲蝕予防として推奨されない。

・クロルヘキシジン洗口液はこれまで、う蝕の予防法として日常的に処方されてきた。
しかしながら、近年、クロルヘキシジンンを用いた齲蝕予防法は、高い酸性能と耐酸性能を有するミュータンス連鎖球菌腫の菌数を増加させることが、複数の研究により示されている。
このことから、クロルヘキシジンによるう蝕予防法は、齲蝕病原性を有するミュータンス連鎖球菌腫を根絶できないばかりか、実際にはもっとも病原性の高いミュータンス連鎖球菌腫が口腔内で生き残るための環境を整えてしまっている可能性がある。
また、Journal of the American Dental Assoociationの2011年4月号では、ADA(米歯科医師会)の学術評議会が、50のランダム化比較試験と15の非ランダム化比較試験のエビデンスを分析し、フッ化物を含まない様々な齲蝕予防薬の効果を検討した。
その結果、ADAの学術評議会は、クロルヘキシジン製剤について、根面齲蝕へのクロルヘキシジン・チモールの3か月ごとの塗布以外は、その形態、使用される病変の種類、対象の年齢にかかわらず、すべて推奨されないと発表した。
(BALANCE )
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クロルヘキシジンは洗口液は、これまで齲蝕予防法として日常的に処方されてきました。
しかしながら、『クロルヘキシジンによるう蝕予防法は、齲蝕病原性を有するミュータンス連鎖球菌腫を根絶できないばかりか、実際にはもっとも病原性の高いミュータンス連鎖球菌腫が口腔内で生き残るための環境を整えてしまっている可能性がある。』とこれまでの考え方とは全く異なる見解が、今後の主流になりそうです。
ただ、米国は日本の基準よりも高濃度のクロルヘキシジンが使用しているはずなので、米国の状況をそのまま日本に当てはめることは危険ではありますが、ここでも『昨日の非常識が今日の常識』となる一つの例ではないでしょうか。
継続して研鑽を続けたいものです。

下歯槽神経障害を来す疾患

・下歯槽神経障害を来す疾患
1. 腫瘍
神経鞘腫、脳腫瘍、造血器腫瘍、頭頸部癌、髄膜腫
2. 脳血管障害
脳動脈瘤、脳梗塞、脳出血
3. 免疫系疾患
サルコイドーシス、SLE、血管炎、多発性硬化症、ベーチェット病
4. 感染症
脳炎、髄膜炎、真菌症、結核、HIV、顎骨骨隨炎、歯性感染
5. 代謝性疾患
糖尿病、アミロイドーシスなど
6. 医原性
抜歯などの歯科治療、浸潤麻酔によるオトガイ孔の刺激
7. 外傷
顎骨骨折など
(デンタルダイヤモンド 2017年2月号 )
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インプラント治療を行う歯科医師は、この下歯槽神経障害をものすごく気にしながら、施術を行っています。
しかしながら、同じく下歯槽神経障害でも、原因となる疾患は、これほどまでに多岐にわたることを知り驚かされました。
歯科だけの狭い世界で勉強をするのではなく、常に全身の中における歯科について勉強をしていかなくてはならないと感じました。

2017年4月26日

hori (22:09)

カテゴリ:インプラントと全身の健康

導帯管と萌出障害

・導帯管は歯の萌出路であるため、萌出不全を考える上で重要です。
歯の萌出障害の原因の一つとして導帯管の走行が他の歯や腫瘍によって湾曲している症例もみられます。
過剰埋伏歯では画像上、導帯管が描出されにくい症例が多く、埋伏の原因とも考えられています。
さらに小田らの研究から導帯管内に一致して歯牙腫が形成されていることが明らかになり、その発生源として注目が集まっています。
歯牙腫以外の歯原性腫瘍や膿胞の発生にも導帯管が関与している可能性が示唆され、現在注目されてはじめています。
(参考文献)
Oda M, Miyamoto I, Nishida I, et al. A spatial association between odontomas and the gubernaculum tracts. Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol. 2016 ; 121(1) : 91-95.
Ide F, Mishima K, Kikuchi K, et al. Development and growth of adenomatoid odontogenic tumor releted to formation and eruption of teeth. Head and Neck Pathol. 2011 ; 5(2) : 123-132.
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通常混合歯列期の学童期に、当院ではCTを撮影することはあまりありませんが、歯の萌出障害の原因の一つとして、導帯管の走行が他の歯や腫瘍によって湾曲しているケースがあるようです。
また過剰埋伏歯や歯牙腫、歯原性腫瘍や膿胞とこの導帯管が関与している可能性が示唆されているようです。
また、今回紹介する文献はいずれも日本の研究報告ですが、このようなデータの発信元が、CT大国日本であることも関係があるのかもしれません。
インプラント希望者の中には、欠損部位の歯槽骨内に、埋伏歯が横たわっているケースも稀ではありますが存在します。
個人的には、『どのようにして埋伏歯を抜歯してインプラントを生着させるか。』よりも、『そもそもなぜ、その歯が埋伏歯になったか。』についての方が興味があります。
今後の研究報告に期待したいです。

根分岐部病変はルートトランクの長さが関係している。

・下顎大臼歯では頬側に比べて舌側が、上顎大臼歯では近心<遠心<頬側の順にルートランクが長くなります。
したがって、下顎では頬側部、上顎では近心部の根分岐部病変が発症しやすくなります。
(知って得した!歯周治療に活かせるエビデンス )
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個人的に根分岐部病変は、下顎では頬側が、上顎では近心頬側根を取り囲むように進行しているケースが多いように感じていました。
ルートトランクの長さをベースに考えると、根分岐部病変の発症リスクを予想することができます。
また、スピーカーブやモンソンカーブを基に考えると、上顎歯は近心頬側に、下顎歯は近心舌側に傾斜して萌出しているといえます。
これらの方向に歯牙が傾斜すると、歯槽骨から歯牙が飛び出た状態になりやすいのは、上顎であれば近心頬側根、下顎大臼歯では頬側の分岐部ということになります。
そしてそれらを逆に考えると、『スピーカーブやモンソンカーブがきつすぎる人ほど、根分岐部病変になりやすいのではなかろうか。』という仮説を立てることができます。
さらに、スピーカーブやモンソンカーブがきつすぎる人は小さい顎骨の中に大きな歯牙が萌出する傾向にあるために、咬頭展開角が小さく、咬頭干渉が生じやすいのではなかろうかとも考えることができます。
近年、歯列不正のある患者さんに対して、歯列矯正を行っても、歯牙形態が悪いために、うまく咬まないケースが少なくありません。
これも咬頭展開角が小さいことが関係しているように感じています。
また咬頭展開角が小さかったり、上顎大臼歯でいえば、遠心舌側咬頭がなく、3咬頭になっている状態が下顎大臼歯の歯冠破折や歯根破折を惹起している可能性が疑われます。
このような形態が不良な対合歯に対して、欠損した部位にインプラント治療を行っても長期に亘って安定した状態は維持できません。
全体の咬み合わせの改善を図りながら、欠損部位にインプラント治療を行うことが重要であると考えています。

下顎管が2つ存在するケースは、0.08-0.9%程度。

・数多くの下顎管には多数の分岐が見られることがあります。
部位として多いのは、下顎枝部と下顎智歯部です。
ただし、その多くは分岐後再度吻合しています。
出現頻度が高いものに、下顎管が臼後部で上行して、歯槽頂部に開口する臼後管が挙げられ、その出現頻度は約20%と報告されています。
一方で、きわめて稀ではありますが、下顎管が初めから2つ存在する例も報告されています。
発症率は0.08-0.9%程度されています。
(参考文献)
内藤崇孝. デンタルインプラント治療における画像診断. 口腔外科学会雑誌. 2009 ; 55 : 116-121.
Claey V, Wackens G. Bifid mandibular canal : literature review and case report. Dentomaxillofacial Radiol 2005 ; 34(1) : 55-58.
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症例によっては、下顎管が分岐しているものもあります。
パノラマレントゲンでは、下顎管の分岐の判断は困難でしょうから、やはりCTでの術前診断が必須となります。
もし、下顎管が2本存在する場合、当然のことながら、歯槽骨上縁から、2本あるうちの上の方の下顎管の上端までの距離が、インプラントを埋入できる長さということになります。
そういえば、当院にも下顎管が2本存在する方が、インプラントの相談に来院された方がいました。
結果的には、私がその方に施術することにはなりませんでしたが、もし当院で契約をされた場合には、第一選択はショートインプラント、第二選択はGBR後にインプラントとなるかと思います。
下歯槽神経移動術のように、下歯槽神経を移動させる方法もありますが、分岐しているようなケースでは、麻痺がより生じやすくなると推測されます。

2017年4月10日

hori (11:05)

カテゴリ:インプラントの偶発症

喫煙は歯周病の最大のリスク!

・1988-1994年、米国で「NHANES3」という1万人を超える規模の全国調査が実施され、喫煙と歯周病の関係が詳細に分析された。
4ミリ以上のアタッチメントロスで、同部位に4ミリ以上の歯周ポケットが1か所でもあると者を歯周病と定義すると、米国の調査対象者の9.2%が歯周病となりました。
喫煙状態別に比較すると、喫煙者では15.6%、過去喫煙者では10.5%、非喫煙者では4.9%が歯周病となり、喫煙者では歯周病に罹患している人が著しく多いことがわかりました。
同じ年齢、性別、人種、学歴、収入であっても、喫煙者は非喫煙者に比べて3.97倍(オッズ比)リスクが高いとの結果になっています。
また、喫煙の量によっても差があります。
1日に9本以下の喫煙者と非喫煙者を比較したリスクが2.79倍であるのに対して、1日に31本以上喫煙する人と非喫煙者を比較した場合では5.88倍と、リスクが2倍以上に増加しています。
「NHANES3」の調査対象においては、様々な歯周病のリスク因子を加味してみても、歯周病の原因の52.8%が喫煙と推定されています。
まさに、喫煙は歯周病の最大のリスクというわけです。
(知って得した!歯周治療に活かせるエビデンス )
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男性のインプラント治療希望者には、なぜか喫煙者が多いように感じます。
今回紹介したデータでは、歯周病の原因の52.8%が喫煙と推定されているように、『喫煙は歯周病の最大のリスク』といっても過言ではないと考えています。
一日に31本以上喫煙しているのであれば、一日に9本以下の喫煙を一つの目標にしたうえで、インプラント治療を視野に入れていただければと思います。

2017年4月 5日

hori (17:29)

カテゴリ:インプラントと喫煙

糖尿病患者は依然として増加傾向。

・厚生労働省の平成26年「国民・栄養調査」では、糖尿病が強く疑われる人の割合が男性で15.5%、女性で9.8%でした。
この調査の前身である「平成14年糖尿病実態調査」では、糖尿病が強く疑われる人は推定約740万人、日本人男性の12.8%、女性の6.5%でした。
平成9年の推定値は約690万人でしたから、日本の糖尿病患者数はまだ増加しつづけています。
(知って得した!歯周治療に活かせるエビデンス )
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糖尿病の患者さんは年々増加傾向にあるそうです。
糖尿病になると同じように歯周治療を行っても、正常者と同じレベルの治療効果はないと言われており、それ故に歯を失う危険性が高いということになります。
また、糖尿病患者さんのインプラント手術は、糖尿病ではない患者さんに比べて、骨結合の失敗のリスクが2倍あるともいわれています。
糖尿病になりにくい食生活習慣を続けて、歯を失いにくい体質でありたいものです。

2017年4月 1日

hori (10:05)

カテゴリ:インプラントと糖尿病

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