2018年5月アーカイブ
ポビドンヨード併用の超音波スケーリングは有効。
・ポビドンヨード、クロルヘキシジン、エッセンシャルオイルの3種類の薬液を使って超音波スケーリングを行い、 術前・術後でどれくらい付着レベルの差が生じるかをみた。
その結果、ポビドンヨードを使用した場合にのみ有意差が見られた。
(参考文献)
Van der Sluijs M, et al. The effect on clinical parameters of periodontal inflamation following non-surgical periodontal therapy with ultrasonics and chemotherapeutic cooling solutions : a systematic review. J Clin Periodontal. 2016; 43(12) : 1074-1085.
*****
超音波スケーリングに薬液を併用しても、有意差が認められるほどの効果はなかったという論文を以前目にしたことがあったのですが、今回の報告では、ポビドンヨードを併用した場合に有意差が認められるほどの効果がみられたようです。
ジルコニアはエナメル質の3倍以上の硬度。
・エナメル質の硬度は、ちょうどハイブリッドレジンとポーセレンの中間に位置します。
そしてジルコニアはエナメル質の3倍以上の硬度を有します。
Dr中込自身は、口腔内の、特に外装材としてジルコニア(つまりはフルジルコニア)を使用することには完全に否定的な見解を抱いています。
その理由は当たり目のように「硬すぎる」ということです。エナメル質の3倍以上の硬さでは、対合歯の摩耗はもちろんのこと、天然歯であればエナメル質の割れ、また歯根破折の危険性等、多くのマイナスの反応が出ることが容易に予測できます。
(補綴臨床 2018年3月号 )
*****
私も硬すぎるフルジルコニアをインプラントの上部構造に選択することは、今のところ考えていません。
咬合力は上下に同じだけかかるわけですから、フルジルコニアの対合が天然歯であれば、歯冠破折、歯根破折、垂直性骨吸収などのトラブルが惹起されるものと推測されます。
一方、上部構造にフルジルコニアを選択した場合のインプラントは、上部構造が破壊されないだけに、歯槽骨吸収やリテインニングスクリューの破折、インプラント体の破折等の問題を惹起します。
また硬すぎるということは、それ自身の咬耗がほぼないだけでなく、咬合調整が非常にやりにくいことも意味します。
生体は常に変化しています。
定期的な咬合調整を行うことで、特定のインプラントや天然歯に過大な咬合力が集中することを可及的に回避することが重要であると考えています。
硬質レジン歯は着色しやすい。
・レジン歯は義歯床と同じように紐状の分子構造のアクリルレジンでできています。
透明度が高く、義歯床ともよく接着するが、「摩耗しやすい」という欠点があります。
それを改善するために、硬質レジン歯では網目構造のレジンを使い、さらに、フィラーを加えることで耐摩耗性を向上させました。
しかし、このフィラーは摩耗には強いものの、レジンとの境界部が着色しやすい欠点があるのです。
したがって、レジン歯に比べて硬質レジン歯の方が着色しやすいということになります。
(歯科衛生士 2018年2月号 )
*****
硬質レジン歯は、レジン歯の摩耗しやすいという欠点を改善するために開発されました。
当然のことながら、人工歯の耐摩耗性は向上しましたが、摩耗に対抗するために加えられたフィラーがレジンとの境界部を着色しやすいという別な欠点を有するようになりました。
歯科学は材料とともに進化していますが、材料も右肩上がりにすべての面で改善が見込めるわけではないのだなあと痛感しました。
根管治療後の矯正を開始する最適な時期は15日後。
・根管治療後に病変の治癒傾向がX線写真像などで確認できるまで矯正治療の開始を待つ必要がなく、矯正治療を速やかに開始することは可能であるが、矯正力にともなう歯周組織の炎症や疼痛、そして根管治療の術後疼痛の生じるリスクや患者負担等を考慮すると、根管治療後の最適な矯正開始時期は根尖部組織が治癒機転に入るであろう根管治療後、少なくても15日経過以降が望ましいといえるだろう。
(参考文献)
Consolaro A,Consolaro RB. Orthodontic movement of endodontically treated teeth, Dental Press J Orthod. 2013; 18(4):2-7.
*****
根管治療が必要な歯がある場合には、基本的には矯正治療を行う前に行っています。
(個人的に、部分矯正はアンカーとなる歯牙が移動するリスクがあるので、積極的には行っていません。)
根管治療が終了し、支台築造、仮歯を入れた後に矯正治療を開始しますが、治療を急いでも、矯正治療開始する際には根管治療終了から15日は経過しているので、ほぼ待たずに治療を進めてよいということになります。
ガイデッドサージェーリーは、スウェーデンのガイドラインには入っていない。
・スウェーデンの保険福祉庁が良好な口腔内環境を保つことも目的とした国家プロジェクトととして、大学人をはじめとしたエキスパートを集めて作成します。
各種診断に対して、6つの項目(1. 推奨度の正当性、2. 病変の深刻度、3. 論文、4. 治療効果、5. 治療の副作用・欠点、6. 費用対効果)をもとに決められた推奨度が記載されています。
推奨度は1から10まであり、1に近づけば近づくほど信頼できる治療となります。
・近年、日本ではガイデッドサージェーリーが頻繁に使用されるようになってきていますが、スウェーデンのガイドラインには入っていません。
当初、ガイデッドサージェーリーはインプラントの経験が少ない歯科医院の手助けをするツールとしての概念が強かったのですが、データを集め始めると、慣れている歯科医師が行っても様々な問題が見えてきました。
現在はシステムも大きく改善されましたが、現時点でガイドラインに載っていないということは、そこまで有益だというエビデンスがそろっていないのかもしれません。
もし、有益であると認められれば、ガイドラインの中に入ってくると思います。
・De Bruynらのガイデッドサージェリーの誤差を調べた論文では、先端部で数ミリの誤差があると示されています。
また、注水の問題などもあるのに、どのような症例でもガイデッドサージェリーが第一選択になるというのは、あまり納得がいかないところもあります。
自分の臨床では、よほどシビアなケースでなければ使用していません。
(クインテッセンス・デンタル・インプラントロジー 2018年 vol.25 )
*****
インプラントの最先端治療、ガイデッドサージェリーは一定の評価ができます。
しかしながら、小宮山氏がよく仰っている「航空士(ナビゲーター)の意見を鵜呑みする操縦士はいない。最終的な決定は操縦士にゆだねられる。」ということをインプラントで考えると、CT像を見てプランニングしたのちに、フラップを開けて実際の骨の状態を見てから再度一番良い条件の部位を見極めて埋入するという従来の方法の方が、ガイデッドサージェリーやフラップレスなどよりも確実性が高いと個人的には考えています。
タイユナイトの表面性状を持つインプラントを高い埋入トルクで埋入すると・・・。
・チタン顆粒はDNA損傷応答を促進する。
タイユナイト処理されたインプラント由来のチタン顆粒は対象と比較し、有意にCHK2発現を活性化した(P<0.01)。
BRCA1の発現はフッ化処理、タイユナイト処理、グリッドブラスト処理されたインプラント由来のチタン顆粒においてコントロールと比較して、有意に高い活性を示した(それぞれP<0.05、P<0.01、P<0.001)
・彼らの仮設では、オッセオインテグレーションとは、チタンに対する生体異物反応に均衡が保たれている状態であり、セメントや印象材の残留、細菌汚染、喫煙、咬合荷重、未熟な外科手術などの因子により均衡状態が破たんし、周囲骨が起こるとされている。
本研究で着目されているチタン顆粒も均衡を破たんさせる因子の一つとされている。
・インプラント埋入手術中にインプラント表面よりチタン顆粒が放出され得ることが示された。
さらに、遊離チタン顆粒は口腔上皮細胞においてDNA損傷応答経路を活性化させる可能性があることが示された。
インプラント周囲軟組織に散布されたチタン顆粒の有毒性を評価するにあたり、DNA損傷応答経路マーカーを用いることは新規インプラント開発や新規インプラント表面性状の評価に有意義といえるかもしれない。
また埋入トルク値が高いほどチタン顆粒は発生しやすいため、骨とインプラントの摩擦が小さくなるような術式を取ることが求められる。
(参考文献)
Titanium Activates the DNA Damage Respnse Pathway in Oral Epithelial Calls. Suarez-Lpez Del Amo F, Rudek I, Wagner VP, Martins MD, OValle F, Galindo-Moreno P, Giannobile WV, Wang HL, Castilho Rm. : A Pilot Study Int J Oral Maxillofac Implants 2017 ; 32(6) : 1413-1420.
*****
タイユナイトはAll-on-4で有名なノーベルバイオケア社のインプラントの表面性状です。
All-on-4は、即時荷重インプラントなので、高い埋入トルク値が良いとされてきました。
(現在は、高い埋入トルクは辺縁骨を圧迫し骨吸収が惹起され、インプラントの初期固定が緩むために、必ずしも即時荷重に適しているわけではないということが明らかとなってきました。)
今回の報告で、タイユナイトのインプラントを高い埋入トルクで埋入した場合、インプラント表面からチタン顆粒が放出されることで、オステオインテグレーションを破壊する可能性が示唆されました。