2018年12月アーカイブ
リグロスの効果はばらつきが大きい。
・リグロスを使用した再生治療では、エックス線写真上での不透過性の亢進がそれほど認められないものもあった。
標準偏差が大きくばらつきが大きいのも、他の文献とも一致している。
(参考文献)
Kitamura M, Akamatsu M, Machigashira M, Hara Y, Sakagami R, Hirohuji T, Hamachi T, Maeda K, Ykota M, Kido J, Nagata T, Kurihara H, Takahashi S, Sibutani T, Fukuda M, Noguchi T, Ymazaki K, Yoshie H, Ioroi K, Arai T, Nakagawa T, Ito K, Oda S, Izumi Y, Ogata Y, Yamada S, Furuuchi T, Sasano T, Imai E, Omae M, Yamada S, Watanuki M, Murakami S, FGF-2 stimulates periodontal regeneration : results of a multi-center randomized clinical traial. J Dent Res 2011 ; 90(1) : 35-40.
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リグロスによる再生療法は、標準偏差が大きいようです。
その効果が認められるものとそうではないものとで何が異なるかが明らかになることを期待します。
スポーツ選手の齲蝕有病率は高い。
・イギリスの複数のプロサッカーの摂取187名を対象に、口腔衛生状態を調べ、イギリスの一般成人に同様の調査を行った結果と比較したデータが有ります。
結果は、サッカー選手の齲蝕の有病率は、イギリスの一般成人が31%であるのに対し53%と大きく上回っていたことが分かりました。
(参考文献)
Needleman l, et al. Poor oral health including active caries in 187 UK professional male football players : clinical dental examination perfomed by dentists. Br J Sports Med 2016 ; 50(1) : 41-44.
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興味深いデータです。
スポーツ選手の口腔衛生状態が悪くなりやすい要因はいくつか考えられます。
1. 呼吸数や口呼吸の増加、運動中の緊張状態、脱水状態によって口腔内の乾燥状態に陥りやすい。
2. スポーツ飲料や補助食品の頻回摂取。
3. 通院のため練習を休むと、メンバーから外されるのではないかという不安
などが挙げられます。
そしてさらに、競技の種類にもよりますが、噛みしめによる歯へのクラックによる齲蝕は、当然ながら、一般成人よりも多いものと考えられます。
野球選手は、歯の外傷が多い。
・外傷のうち、顎口腔領域にのみ焦点を当てると、天笠(2002)によれば、競技別で外傷の割合を調査した結果、1位:ラグビー(21.6%)、2位:スキー(20.3%)、3位:野球(13.5%)、4位サッカー(10.8%)と報告されています。
一方、小池ら(2017)の調査では、1位:野球(39.1%)、2位:バスケットボール(18.8%)、3位:サッカー(12.5%)、4位:バレーボール(10.8%)と報告されており、地域性や時代にある程度影響を受けることが推察されます。
また、顎口腔領域の外傷の原因の中で、スポーツは17.8%を占めると報告されており、顎口腔外傷のうち35.9%が骨折、23.4%が歯の外傷、18.8%が軟組織の損傷と報告されています。
沢木ら(1990年)も同様に、顎口腔領域の外傷の約15%がスポーツによるものであり、原因別のランキングでは、スポーツが交通事故に次ぐ2位に挙げられると報告しています。
(参考文献)
小池尚史, 菅野貴浩, 辰巳博人, 狩野正明, 渡邊正章, 大熊里依, 吉松英樹, 関根浄治. スポーツに関連した口腔顎顔面外傷における臨床的検討. 口腔顎顔面外傷 2017 ; (1): 32-36.
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個人的には野球選手の外傷が多いことに驚かされましたが、地域性や時代の影響を受けているようにも感じます。
スポーツによる外傷でインプラント治療を希望される患者さんもいるので、ご自分のやっているスポーツがどの程度、外傷リスクがあるかを予め把握しておくことも必要かと考えています。
人工甘味料で食欲増進!
・人工甘味料は血糖値の上昇を起こさないために、食欲亢進を起こす可能性があり、甘みを強く感じた被験者ほど一定時間後の食欲亢進が高まるとの報告があります。
これは「甘味受容→血糖上昇→食欲抑制」という生体本来の向上性が乱れるためとされています。
(参考文献)
鈴木麻希, 泉杏奈, 村絵美, 林育代, 森谷敏夫, 永井成美. エネルギーを有さない人工甘味溶液摂取後の食欲感覚と胃運動. 等甘味度天然甘味料溶液との比較. 日本栄養・食糧学会誌 2016; 69(4):163-171.
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人工甘味料によって、食欲亢進が高まるようです。
一見健康によさそうなものも、意外なデメリットがあることが多いように感じます。
人工甘味料も様々な知識を得てから摂取するべきものと考えられます。
なぜ、口腔内清掃状態が良くても歯周病が良くならないのか?
・歯周病は歯周病原細菌による感染が原因だと考えられているが、口腔内の清掃状態が良くても歯周病が良くならないケースもあり、そのすべての原因はいまだ分かっていない。
研究者の中には歯周病に夜間の歯ぎしりが関連しているという意見もあるが、実際の噛みしめを長時間記録することができずにアンケート調査等でしか情報を得られなかったため解明されないままだった。
そんな中、岡山大学病院咬合・義歯補綴科の加藤聖也医員と予防歯科の江國大輔准教授らの研究グループが、独自開発した長時間記録装置を用い、食いしばりや歯ぎしりといった昼夜の噛みしめが歯周病の重症度に関連していることを発表した。
研究グループは、頬に記録用の電極を張ることで、噛みしめをしたときに頬の筋肉から発生する微弱な電気を記録する携帯型の24時間記録装置を開発。
その装置を用い昼夜の無意識の噛みしめを検査した。
その結果、日中、目が覚めている状態にもかかわらず歯周病が重度な人は1時間あたり平均6.2分間も無意識に強く噛みしめていることが判明。
それに比べ、歯周病が軽度な人は1時間あたり平均1.4分間で、歯周病の重症度が噛み締めに関連していることが分かった。
また睡眠時では、歯周病が重度な人は1時間で平均2.5分間、軽度な人は平均0.7分間噛みしめており、昼間より夜間の方が噛みしめの時間が短いことが分かった。
噛みしめというと、睡眠時の歯ぎしりが連想されるかもしれないが、今回の研究で歯ぎしりの自覚が実際の噛みしめと一致していないことが分かったことも大きい。
(Dentalism WINTER 2018No.33 )
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口腔清掃状態が良好でも歯周病の状態が悪い方がいます。
この報告にもあるように、近年、夜間の歯ぎしりよりも、昼間の噛みしめの方が歯周病への悪影響となっていることが明らかになりました。
また、昼間の噛みしめは本人の自覚がないことも当院での調査とも一致しています。
インプラントの補綴装置はエマージェンスアングル30°以下
・ボーンレベルのインプラントにおいて、補綴装置の近遠心のエマージェンスアングルが30°より大きい場合、インプラント周囲炎の罹患率が有意に高くなった。
補綴装置はエマージェンスアングルを30°以下として、コンケーブもしくはストレートのエマージェンスプロファイルを付与することが勧められます。
(参考文献)
Katafuchi M, Weinstein BF, Leroux BG, Chen YW, Daubert DM. Restoration contour is a risk indicator for peri-implantitis : A cross-sectional radiographic analysis. J Clin Periodontol 2018 ; 45(2) : 225-232.
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補綴装置の近遠心のエマージェンスアングルが30°より大きいとは、すなわち、インプラントのカントゥアをオーバーカントゥアにして、物が挟まりにくく、息漏れもしにくい状態を作り出すことになります。
萌出している天然歯のような審美的なインプラント治療は一般的にオーバーカントゥアですから、インプラント周囲炎にはなりやすいということになります。
高床式のインプラントは審美的でないから時代遅れで、審美的なインプラントは最新式であるという風潮がありますが、個人的には審美性も追求しすぎるのは良くないものと考えています。