2019年4月アーカイブ
「歯性上顎洞炎」の割合は意外と多い。
・上顎洞は上顎骨内に存在する空洞で、容積は約15ml、自然口を介し中鼻道と交通している。
上顎洞底から最も近い値は、上顎第一大臼歯の口蓋根で0.83ミリ、次に第二小臼歯、第一小臼歯と続き、平均は1.97ミリとの報告がある通り、解剖学的にも非常に近接しているといえる。
・上顎洞炎のうち、「歯性上顎洞炎」の割合は4割に及んでいるとの報告がある。
(参考文献 )
Patel NA, Ferguson BJ. Odontogenic sinusitis: an ancient but under-appreciated cause of maxillary sinusitis. Curr otolaryngol Head Neck Surg. 2012 ; 20(1) : 24-28.
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上顎大臼歯部にインプラント埋入を行う際には、隣在歯が感染根管ではないか注意する必要があります。
2-IODと4-IOD
・Feineのテキストブック「Implant overdenture」には、「2-IODの方が4-IODよりも臼歯部顎堤における骨吸収が大きくなるために、若年者である場合には、4-IODも考慮に入れるべきである」と記載されている。
また、比較的新しい2010年の研究からは4-IOD、2-IODどちらにおいても下顎臼歯部の骨吸収は起こるが、有意な差が認められないことも報告されている。
これらのことから、臼歯部の骨吸収は15-20年という長期観察により明確になるもので、65歳を超える患者であれば臼歯部骨吸収を気にする必要はない。
(参考文献)
Tymstra N, Raghoebar GM, Vissink A, Meijer HJ. Maxillary anterior and mandibular posterior residual ridge resorption in patients wearing a mandibular implant-retained overdenture. J Oral Rehabi. 2011 ; 38(7) : 509-516.
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年齢によって、第一選択が、2-IODであるのか4-IODであるのか変わることが明らかになりました。
口腔がんの重篤度を示す指標
・口腔がんはその発生段階の晩期でのみ発見されることが多いため、進行がん患者の5年生存率はわずか40%である。
コロラド大学デンバー校の研究者がこの度、郭清リンパ節に対する転移リンパ節の割合が口腔がんの重篤度を示す指標になることを見出した。
本試験の結果、LNR(Lymph Node Ratio:郭清リンパ節に対する転移リンパ節の割合)が10%を超える患者は10%未満の患者と比べて、がん再発リスクが約2.5倍、死亡リスクが2.7倍上昇していた。
(参考文献)
Association between lymph node ratio and recurrence and survival outcomes in patients with oral cavity cancer. JAMA Otolaryngology- Head&Neck Surgery.
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郭清リンパ節に対する転移リンパ節の割合が口腔がんの重篤度を示す指標になることが明らかになりました。
ペニシリンアレルギー患者のインプラントの失敗率は有意に高い。
・患者レベルで解析した結果、非ペニシリンアレルギー患者は12名のうち1名(8%)でインプラントの失敗が起こり、ペニシリンアレルギー患者では4名のうち1名(25%)でインプラントの失敗が起こっていたことから、インプラントの失敗率はペニシリンアレルギー患者の方が有意に高いことが分かった。
ペニシリンアレルギー患者に対し、3.84のリスク比でインプラントの失敗が高かった。
さらに、ペニシリンアレルギー患者では、21.05%が後期の失敗に分類され、78.95%が早期の失敗に分類されていた。
早期の失敗理由としては、オッセオインテグレーションの喪失が80%で、コントロールできない感染が20%であった。
後期の失敗理由としては、X線的なインプラント長径の50%以上の骨喪失が75%で、インプラントの動揺が25%であった。
続いて、インプラントレベルでの統計を行った。
2747本のインプラントが本研究の対象だった。
133本のインプラントは非ペニシリンアレルギー患者で失敗が認められた(5.17%)、33本のインプラントはペニシリンアレルギー患者で失敗が認められた(18.86%)。
インプラントの失敗率はペニシリンアレルギー患者で有意に高かった。
ペニシリンアレルギー患者では、非ペニシリンアレルギー患者に対して、3.64のリスク比でインプラント失敗が高かった。
インプラントでは、ペニシリンアレルギー患者の27.27%は後期の失敗であり、72.72%は早期の失敗だった。
早期の失敗理由としては、オッセオインテグレーションの喪失が87.5%で、コントロールできない感染が12.5%だった。
後期の失敗理由としてはX線的なインプラント長径の50%以上の骨喪失が55.55%、インプラントの動揺が33.33%で、インプラントの破折が11.11%だった。
(参考文献)
Salomo Coll O Lozano Carrascal N Lazaro Abdulkarim A Hernandez Alfaro F Gargallo Albiol J Satorres Nietro M Do penicillin allergic patients a higher rate of implants failure? Int J Oral Maxillofac Implants 2018 ; 33(6) : 1390-1395.
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ペニシリンアレルギー患者のインプラントの失敗率は、非ペニシリンアレルギー患者と比較して、有意に高いそうです。
また、失敗の理由の大半は、オッセオインテグレーションの喪失だそうです。
40歳以下の口腔がん患者は増大傾向にある。
・東京歯科大学 口腔顎顔面外科講座の25年間で口腔がん一次症例736例の40歳以下の占める割合を算出してみると、25年では2%弱であった値がここ5年間で約7.5%に上昇していることが判明しました。
原因を追究すべく生活習慣(飲酒、喫煙)と機械因子(歯列狭窄、転位歯、褥瘡など)との関連を調べたところ、機械因子のみに有意差が生じました。
すなわち、慢性的な刺激がかかる口腔内環境だと、褥瘡となる部位(特に舌縁)に発症しやすいことが分かりました。
(デンタルダイヤモンド 2019年3月号 )
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近年、私たち周囲の環境はストレスにあふれたものと変化してきていることもあり、褥瘡になるリスクは昔よりも増大している可能性があります。
歯列矯正をすれば舌癌にならないわけではありませんが、リスクを低下させるために、歯列矯正を行う方が無難かもしれません。
ジルコニアアバットメントは、現在ほとんど使用されていない。
・以前、インプラント修復のアバットメントにジルコニアが使われていた。
これはジルコニアの機械的性質が優れていたために、歯科分野における新たな材料として期待されたためである。
しかし、ジルコニアアバットメントは数年もせずに破折し、またその硬い物性のためインプラント内部を損傷するとし、今ではほとんど使用されなくなった。
ジルコニアは硬い性質を有するものの、インプラント修復にはチタン製のアバットメントが破壊荷重の点から第一選択となる。
(参考文献)
Leutert CR, et al. Bending moments and types of failure of zirconia and titanium abutments with internal implant-abutment connections : a laboratory study. Int J Oral Maxillofac Implants. 2012 ; 27(3) : 505-512.
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個人的には様子見をしていたインプラントのジルコニアアバットメントですが、今ではほとんど使用されていないようです。
やはりジルコニアについても、『最新は必ずしも最善とは限らない』ということになりますね。
プラークのみがインプラント周囲炎の原因ではない。
・Albrektssonらは、不適切なインプラントや外科/補綴治療の提供、また解剖学的、全体的に問題を抱える患者などへのインプラント治療の適用が、外来異物としてのインプラント体と生体免疫応答反応との不均衡を招くとした。
その結果、辺縁骨吸収が起こり、さらに不適切な咬合やセメント残留などによる刺激も辺縁骨吸収を招き、その後二次的に細菌感染が起こるという仮説を述べた。
この学説により、プラークのみがインプラント周囲炎の原因ではないとした。
(参考文献)
Albrektsson T, Dahlin C, Jemp T, Sennerby L, Turri A, Wennerberg A. Is marginal bone loss around oral implants the result of a provoked foreign body reaction? Clin Implant Dent Relat Res. 2014 ; 16(2) : 155-165.
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インプラント周囲炎の原因に不適切なインプラントや外科/補綴治療などが関与していることが明らかになりました。
やはりプラークのみでインプラント周囲炎が惹起されるわけではないようです。