2019年5月アーカイブ
日常的なデンタルX写真におけるアンダーの判定は意外と不正確。
・CBCTと比較した論文では、デンタルX線写真におけるアンダーの判定は、三次元的な到達度評価とは大きく異なることが示されている(デンタルでアンダーと判定された25本中20本が、CBCTではフラッシュであった)。
その報告では、成功率は到達度には影響されず、根管充填の緊密度に影響されるという結果であった。
(参考文献)
Liang YH, et al. Endodontic outcome predictors identified with periapical radiographs and conebeam computed tomography scans. J Endod. 2011; (3):326-331.
*****
日常的なデンタルX写真におけるアンダーの判定は意外と不正確であることがわかりました。
すべてのケースでCBCTを撮影して確認することはできませんが、治療の際に、実際に自分が行った感覚と、CBCTの結果のすり合わせをする必要がありそうです。
ナノダイヤモンドで根管治療の成績向上。
・ナノダイヤモンドが抜髄後に消毒された根管を保護し、完治の可能性を高めることが示された。
研究者らは、根管治療中の3名の患者において、ナノダイヤモンドを埋め込んだガッタパーチャ(NDGP)の試験を行った。
その後を検査したところ、NDGPは、従来のガッタパーチャよりも曲がりや破損に対する耐性が強いことが確認された。
3名全員が適切に治癒し、異常な痛みも感染も見られなかった。
「この試験では、ナノダイヤモンドを利用することで、とりわけ困難な歯内療法の症例から整形外科、再生医療などに至るまで、様々な手技の障壁の克服につながるという大きな見込みが得られた」と、共著者でUCLAの歯内療法学のMo Kang教授は語った。
(参考文献)
Climical validation of a nanodiamond-embedded thermoplastic biomaterial. Proceedings of the National Academy of Sciences.
透析患者は、歯周病リスクは高い。
・透析患者の唾液pHは高いレベルで維持されているので、う蝕発症リスクが健常者より高いとは考えれていない。
しかし、その他の環境悪化因子が多いので、特別な配慮を要する。
歯周病に関しては、腎機能の低下と歯周病の発症は有意に関連すると報告されている。
(参考文献)
Yoshihara A, et al. Renal function and periodontal disease in elderly Japanese. J Periodontol. 2007;78(7):1241-1248.
*****
透析患者はう蝕リスクは低い一方で、歯周病リスクは高いことが分かりました。
osseodensification
Counterclockwise drilling とは、反時計回りのドリリングという意味で、ドリリングを逆回転で行うosseodensificationという新しいコンセプトのインプラント埋入窩形成法である。
正回転で骨を切削するドリルは、切削骨片は刃のねじれみぞを通って外部に排出される構造になっている。
このドリルを逆回転で使用することで、骨を切削することなく圧縮し、圧縮された自家骨は刃のねじれ角に応じて逆方向に進むこととなり、骨内の側方および下方に運ばれることになる。
この原理を応用することで、同部自家骨骨内移植による骨の圧縮と骨密度の強化、圧縮骨の残留ひずみが戻ろうとする力による初期固定の強化と骨接触率の増大、それに伴うインプラントの安定性の向上が期待できるのである。
Slete FBらは従来のドリリング法とオステオトームテクニック、そして osseodensificationという新しいコンセプトで形成した埋入窩にインプラントを埋入し、それぞれの骨接触率を計測している。
それによると従来のドリリング法が16.3%、オステオトームテクニックが40.7%、そして osseodensificationが60.3%と最も高く、 osseodensificationとが有意に優れていると結論付けている。
(参考文献)
Slete FB, Olin P, Prasad H. : Histomorphometric Comparison of 3 Osteotomy Techniques. Implant Dent. 27(4): 424-428,2018.
*****
osseodensificationという新しいコンセプトが生まれました。
ドリルといえば、右回転が当たり前でしたが、左回転させることで、骨密度を上昇させることができるそうです。
オステオトームテクニックよりも有意な差をもって骨接触率が高いそうですから、これは期待できそうですね。
粗面のインプラントでは、バイオフィルムの除去が困難。
・Carcuaeらは、100名(179本)のインプラント周囲炎にり患した患者に切除療法を行ったが、機械研磨表面を有するインプラントでは79%で治療の成功(成功基準:PPD≦5ミリ+BOP/排膿なし+追加の骨喪失なし)を認めたが、粗面を有するインプラントでは、34%しか成功基準を満たしていなかった。
このように動物実験ならびにヒトにおける実験でも、粗面のインプラントでは生体が許容するレベルにまでバイオフィルムの除去が困難である可能性が示唆されている。
(参考文献)
Carcuac O, Derks J, Charampakis G, Abrahamsson I, Wennstrom J, Bergglundh T. Adjunctive systemic and local antimicrobial therapy in the surgical treatment of peri-implantitis :a randomized controlled clinical trial. J Dent Res. 2015 ; 98(1) : 50-57.
*****
現在流通しているインプラントのほとんどは、粗面のインプラントではないかと考えられます。
メーカーも歯科医師も患者さんも、治療スピードを追い求めました。
その結果、粗面のインプラントが主流となり、現在、インプラント周囲炎が問題なっているのだと思います。
『骨結合は速やかに行われるけれど、バイオフィルムの除去は容易』などといった、都合の良いインプラントが出現しない限り、これも"最新が最善とは限らない"ものの一例となることでしょう。
非超弾性形状記憶性Ni-Tiロータリーファイル
・超弾性Ni-Tiロータリーファイルは力が加わると曲がり除荷するとまっすぐに戻ろうとする。
湾曲根管形成中もまっすぐに戻ろうとするので、ファイルは外湾側に押し付けられる。
・非超弾性形状記憶性Ni-Tiロータリーファイルはスプリングバック( まっすぐに戻ろうとする )せず、根管の中心を保った形成ができる。
・周期疲労試験において、非超弾性形状記憶性Ni-TIロータリーファイルは超弾性Ni-TIロータリーファイルの約5倍の破折抵抗を有し、折れにくい。
また、口腔内温度で非超弾性のため、スプリングバックせず、Ni-TIファイルでもプレカーブを付与することができる。
非超弾性計上記憶性Ni-TIロータリーファイルは根管の湾曲に応じて自在に曲がり、根管追従性に優れている。
拡大形成は根管の中心に位置を保ったまま行うことができ、根管形成中に想定以上の負荷が加わる刃部の螺旋が開いて破折を防止する。
使用後は羽部に変形が見られてもすぐに破棄せず、加熱滅菌を行う。
オートクレーブなどによる滅菌後、形状記憶効果により元の形態に回復していれば、繰り返し使用可能である。
元の形態に戻らない場合には塑性変形を起こしていると判断し、破棄となるので管理が容易である。
(日本歯科医師会雑誌 2019年 VOL.71 NO.12 )
*****
メーカーが新製品を出しても、興味がわかないことが多かったのですが、この商品は個人的にはとても気になります。
今回の報告に間違いがなく、治療結果も安定しているのならば、当院でも導入していきたいと考えています。