2019年7月アーカイブ

現在歯数とアイヒナー指数が咀嚼に与える影響

・現在歯数とアイヒナー指数が咀嚼に与える影響
現在歯数でみると、咀嚼できる割合が有意に増加するのは20本以上の集団であり、そのオッズ比は4.3倍でした。
これに対して、アイヒナー指数はグループCからAに進むにつれオッズ比は有意に上昇し、欠損歯のないA1では無歯顎に対して12.7倍も高かったのです。
この事実は、現在歯数よりも咬合支持域の状態の方が、より鋭敏な咀嚼能力の指標である可能性を示唆しています。
(参考文献)
小林修平編, 花田信弘ほか:高齢者の健康調査における全身状態の評価と口腔健康状態との関連 総括報告, -8020者のデータバンクの構築について-. 口腔保険協会, 東京, 2000.
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80歳で20本以上の歯のある人の数は、増加傾向にあると聞きます。
一方、現在歯数とアイヒナー指数が咀嚼能力に与える影響についての研究報告では、咬合支持が2つ以上あるアイヒナー分類B-2以上で有意差をもって咀嚼能力が高いという結果でした。
また、現在歯数が20本あっても、咬合支持域ゼロ(前歯の咬合接触のみ)のB-4の咬合接触状態はありますし、いわゆる"すれ違い咬合"の状態や片側無歯顎の状態は、上下無歯顎の状態よりも咀嚼能力が低いというデータが出ています。
そのため、現在歯数での評価よりも、アイヒナー指数の方が咀嚼能力を図る上で的確であると考えられます。
さらに、これは天然歯でのデータですが、同じインプラント治療でも、咬合支持数が増加する方向でインプラントを用いなくてはならないと考えております。

2019年7月25日

hori (08:59)

カテゴリ:インプラントとブリッジ

なぜ侵襲性歯周炎という診断名はなくなったのか。

・2018年のヨーロッパ歯周病学会で新しい歯周病分類が提唱されました。
この分類では、侵襲性歯周炎が慢性歯周炎に包括されました。
侵襲性歯周炎と慢性歯周炎の臨床所見は明らかに違います。
それなのに、なぜ侵襲性歯周炎という診断名はなくなったのか。
それは、侵襲性歯周炎と慢性歯周炎の原因に明らかな違いがないからです。
実は、「侵襲性歯周炎の原因はよくわからない。特に日本人の侵襲性歯周炎は慢性歯周炎の原因と同じである可能性が高い」と書いてあります。
これが侵襲性歯周炎という診断名が消えた理由です。
これからは、侵襲性歯周炎の病態を示す歯周炎は、「疾患感受性が大きく影響している慢性歯周炎」と考えることになります。
(歯科衛生士 2019年6月号 )
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侵襲性歯周炎と慢性歯周炎の臨床所見は明らかに違うにもかかわらず、侵襲性歯周炎と慢性歯周炎の原因に明らかな違いがないというのは、非常に興味深い内容です。
科学の進歩に期待したいところです。

上顎洞内粘膜穿孔の発生率は粘膜の厚さが1.5-2ミリの場合に最も低い。

・穿孔の発生率は粘膜の厚さが1.5-2ミリの場合に最も低い。
穿孔の発生率が最も高くなるのは3ミリ以上の厚い粘膜又は0.5ミリ以下の薄い粘膜である。
(低侵襲上顎洞挙上手術 )
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上顎臼歯部にインプラント埋入を行う際、歯槽骨量が不足して増骨処理が必要となるケースは少なくありません。
そのような時、上顎洞内粘膜を挙上し増骨するわけですが、粘膜が穿孔すると増骨が失敗するリスクが高まります。
上顎洞内粘膜厚さが3ミリ以上の厚い粘膜又は0.5ミリ以下の薄い粘膜の場合には、より注意して挙上する必要があると考えられます。

2019年7月15日

hori (08:51)

カテゴリ:上顎臼歯部のインプラント

根管治療後の垂直性歯根破折発生率および発生するまでの期間

・根管治療後の垂直性歯根破折発生率および発生するまでの期間:約7%、術後5年以内
垂直性歯根破折(VRF)に関連する要因(患者、症状、治療、時間)を調査するために行われた。
後ろ向きコホート研究、ポストを用いずに歯冠修復されVRFが疑われる既根管治療歯(294歯)を対象とし、外科的に歯肉を剥離してVRFを確定診断した。
患者の平均年齢は54.34(±12.69)歳でで、289歯でVRFが確認された。
女性患者、高齢患者(>40歳)の頻度が高く、根管治療後VRF診断までの期間は4.35(±1.96)年であった。
VRF歯にみられた特徴的所見を以下に示す。
(好発部位)下顎大臼歯34%、上顎小臼歯22.8%
(X線写真所見)暈状透過像48.7%、歯根膜腔拡大23.4%
(根管充填の質)過剰根管充填79.2%
(臨床所見)打診痛60%、圧痛62%、限局的な歯周ポケット81%、瘻孔腫脹67%
(参考文献)
PradeepKumar AR, et al. Diagnosis of vertical root fractures in restored endodontically treated teeth: A time-dependent retrospective cohort study. J Endod. 2016; 42 (8) : 1175-1180.
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根管治療後の垂直性歯根破折発生率および発生するまでの期間は、約7%、術後5年以内という結果が得られました。
私が関わった根管治療歯で、垂直性歯根破折はそれほどないので、個人的には一般的な根管治療歯の予後はあまりよくないのだなと感じました。

2019年7月10日

hori (09:04)

カテゴリ:インプラントと歯内療法

インプラントの生存率は、ブランドにより大きく異なる。

インプラント喪失経験部位における再埋入インプラントの生存調査 : 大学病院における後ろ向き研究
インプラントの喪失と有意に関連していた因子の一つは、初回埋入インプラントの失敗であった(P<0.001)。
したがって、インプラントの喪失を経験している患者は、その後のインプラントの失敗のリスクがより高かった。
初回埋入と再埋入を合わせたインプラントの喪失に関連しているもう一つの因子は、再埋入時に使用したインプラントのブランドであった。
本研究で使用されたインプラントのブランド数が多かったため、初回埋入時に使用したインプラントのブランドを、12か月間の臨床成績に基づいて分類した。
すなわち、累積生存率が30%未満のインプラントブランドを「低生存率ブランド群」、35-65%を「中生存率ブランド群」、70%以上を「高生存率ブランド群」と分類した。
「高生存率ブランド群」はZimmerであった。
「中生存率ブランド群」はBioHorizons,  Branemark,  Steri-Oss,  Straumannであり、「低生存率ブランド群」は3i Osseotite,  Astra,  Keystone,  Nobelであった。
「低生存率ブランド群」インプラントブランドは、「高生存率ブランド群」と比較して、3.35倍喪失しやすい傾向にあり、その差は統計学的に有意であった(P=0.003)。
(参考文献)
Nguyen R, Soldators N, Tran D, Srylianou P, Angelov N, Weltman R Survival of Dental Implants Replacing Previously Failed Implants: A Retrospective Study in a University Setting. Int J Oral Maxillofac Implants 2018 : 33(6) : 1312-1319.
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インプラントの生存率は、ブランドにより大きく異なり、Nobel:35%、Zimmer:71%という結果でした。

2019年7月 5日

hori (08:16)

カテゴリ:オールオンフォー

歯の破折強度に対する水酸化カルシウム長期根管貼薬の影響

・歯の破折強度に対する水酸化カルシウム長期根管貼薬の影響
ヒツジ切歯根管内への水酸化カルシウム製材の長期貼薬は、歯の破折強度に影響を与えないことが示唆された。
したがって、歯根破折の原因として、水酸化カルシウムの使用よりも歯根象牙質が薄くもろいといった形態学的要因が重要と考えられた。
(参考文献)
Kahler SL, Shetty S. Andreasen FM, Kahler B. The effect of long-term dressing with calcium hydroxide on the fracture susceptiblity of teeth. J of Endod. 44 (3) : 464-469, 2018. doi: 10.1016/j.joen.2017.09.018.
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これまで水酸化カルシウムという貼薬剤を長期間使用すると、歯根破折を誘発するとされてきましたが、それらの論文報告とは全く結論の異なる論文があるようです。
統一的見解が得られていないので、今後のさらなる研究成果を期待したいです。

2019年7月 1日

hori (08:50)

カテゴリ:インプラントと歯内療法

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