2019年11月アーカイブ
平均的上顎洞粘膜の厚さはどのくらいか?
・平均的上顎洞粘膜の厚さを0.8-1.99ミリとしている。
また、2mm以下を生理学的厚みとする報告もある。
ただし、2mm以下を正常と規定すると上顎洞炎と偽診断される症例が増えるとする意見もあり、5?を超えると次第に自然孔閉鎖リスクの上昇と相関し、結果として上顎洞炎を発症するというCarmeli らやShanbhagらの研究は説得力がある。
(参考文献)
Shanbhag S, Karnik P, Shirke P, Shanbhag V. Cone-beam computed tomographic analysis of sinus membrane thickness, ostium patency, and residual ridge heights in the posterior maxilla : implications for sinus floor elevation. Clin Oral Implants Res 2014 ; 25(6) : 755-760.
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平均的上顎洞粘膜の厚さには研究報告によってもばらつきがありますが、5ミリを超えない状況でインプラント治療を行う方が無難であるといえます。
後上歯槽動脈を損傷した際、止血が困難である理由。
・サイナスリフト時の上顎洞前壁を開窓する際に露出や損傷の可能性のある血管は、後上歯槽動脈と眼窩下動脈の枝(中上歯槽動脈)である。
両動脈は互いに吻合しており、このことが、この血管を損傷させた場合に止血を難しくする理由となる。
吻合したこの動脈を上顎洞歯槽動脈と呼ぶが、日本の雑誌などには、これを上歯槽動脈と呼称しているものもある。
出血の頻度は、解剖学的に問題とされているよりはかなり少ないと報告されている。
(参考文献)
Rahpeyma A, Khajehahmadi S. Alveolar Antral Artery: Review of Surgical Techniques Involving this Anatomic Structure. Iran J Otorhinolaryngol 2014 ; 26(75) : 73-78.
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後上歯槽動脈を損傷した際、止血が困難である理由は、眼窩下動脈の枝と吻合していることが原因であることが明らかになりました。
1-IODから2-IODにより、義歯の維持力は約3倍に増大。
・ロケーターアタッチメントを用いる場合、インプラントが1本から2本に増えると義歯の維持力は約3倍に増加する。
さらにインプラントが4本に増えることで維持力は約6倍に増加することが報告されている。義歯に高い維持力を求めるには、より多くのインプラントを埋入する方が有利であるが、インプラントの埋入本数が増えれば患者の負担は増大する。
したがって、義歯が安定するために必要な維持力を考慮すると、2-4本程度の本数が望ましい。
(歯周病患者へのインプラント治療の実際 )
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当院でも、ロケーターアタッチメントによるIOD治療を行っています。
そのコンセプトは、治療コストを抑え、そして同時に患者満足度も下げないということなので、基本的には2-IODで行っています。
恐竜は爬虫類と哺乳類の中間系
・恐竜が爬虫類でないと分かった理由
ヒトやイヌ、ウシなどの哺乳類の歯には根があるのが特徴ですが、魚類や、ヘビやトカゲなどの爬虫類には歯根がありません。
そこで、恐竜は爬虫類ではない、未知の生物であることが分かったのです。
ちなみに現在、恐竜は爬虫類と哺乳類をつなぐ動物、すなわち爬虫類と哺乳類の中間系だと考えられています。
(歯科衛生士 2019年10月号 )
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恐竜の歯に根があるということを知りました。
日本人は再生療法を行う条件は良いとはいえない。
・特に日本人はルートランクが非常に短く、再生療法を行う条件は良いとはいえないことが多く、エナメルプロダクションもよくみられる。
(日本歯科評論 2019年9月号 )
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当院ではあまり積極的には歯周再生療法は行いません。
というのも、歯周再生療法の改善幅が小さいと考えているからです。
築造の種類によってCAD/CAM冠の破折リスクが変わる
・梶原は、硬質レジンジャケット冠(HJK)に繰り返し荷重を加えた実験にて、支台歯がメタルコアよりもレジンコアの方がHJKの破折が起きにくいことを報告している。
このことは、CAD/CAM冠やHJKのような弾性係数の小さい(柔らかい)クラウンを、弾性係数の大きい(硬い)メタルコアに接着すると、その弾性係数の違い(たわみ方の違い)から割れやすく、一方で弾性係数の小さい(レジンコア)の場合は、たわみの差が少ないため、咬合による変形を起こしにくく、セメント層の破壊による脱離やクラウンの破折を起こしにくい、ということを示している。
(参考文献)
梶原雄太郎, 峰元里子, 迫口賢二, 村原貞昭, 田中卓男, 南弘之 : コンポジットジャケットクラウンの繰り返し衝撃に対する破折抵抗性に関する研究. 接着歯学. 33(1):24-31, 2015.
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築造をメタルコアにするかレジンコアにするかで、CAD/CAM冠の破折リスクが変わるようです。
荷重がかかる骨では、骨細胞のスクレオスチン産生がストップ。
・2008年にRoblingらは、マウスの橈骨に荷重をかけることで、骨細胞でのスクレオスチン発現が顕著に低下することを示した。
さらに翌年、Linらは尾部懸垂モデルによって後肢の力学的負荷をなくしたマウスの大腿骨で、スクレオスチンの遺伝子発現が上昇することを示した。
重要なことに、スクレオチン欠損マウスでは非荷重に伴う骨量減少が全く起こらないことが示され、非荷重に伴う骨形成低下の原因が、骨細胞のスクレオスチン発現の上昇であることが生体レベルで証明された。
さきほど、「ピエゾ電流説は現在ではほとんど否定されている」と述べた根拠もこのデータである。
もし、「ピエゾ電流」が本当に骨形成に重要であれば、スクレロチン欠損マウスでも非荷重下では骨表面のマイナス荷重がなくなり骨形成が低下するはずだが、実際には骨量も骨形成マーカーも全く減少しない。
これは、骨の歪みによる骨表面の荷重状態の変化よりも、スクレオスチン増減の方が「力」による骨量調節にとってはるかに重要であることを示している。
荷重がかからない骨では、骨細胞のスクレオスチン産生が更新することで「ここは力がかからないし、もうやすんでいいよ」と骨芽細胞に伝える。
一方で荷重がかかる場所では、「ここは力がかかる場所だから、骨芽細胞を休まず働かせて丈夫な骨にしてもらおう」という感じで、骨細胞はスクレオスチンの産生をストップする。
このようにして「力」の加わる場所では骨が増え、「力」の加わらない場所では骨が少なくなると考えられている。
スクレオスチンの働きを阻害する抗スクレオスチン抗体が骨粗鬆症治療薬として認可を受けた。
(参考文献)
Robling AG, et al. Mechanical stimulation of bone in vivo reduces osteocyteexpression of Sost/sclerostin. J BiolChem. 2008; 283(9) : 5866-5875.
Lin C, et al. Sclerostin mediates Bone response to mechanical unloading through antagonizing Wint/beta-catenin signaling. J Bone Minor Res. 2009; 24(10) : 1651-1661.
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上顎臼歯部で歯槽骨量が不足しているケースで、骨補填材に吸収の比較的早いものを選択し、インプラント埋入を行ったケースがありました。
ペリオテストで一度、良い測定値が出たので、『次回仮歯を入れましょう。」と患者さんにはお話ししていました。
たまたま患者さんの都合で数か月ブランクが空いてしまったのですが、再度ペリオテストで測定したところ、数字が悪くなっていました。
患者さんには、『インプラントが骨結合してから、無意味に免荷期間をおき過ぎると、インプラント周囲の骨量が目減りして、数値が悪くなったと考えられます。骨折しないレベルで負荷をかけていく方が再度良い数字が出るようになりますよ。』と説明し、予定通り仮歯を入れてリハビリテーションを行うことにしました。
今回の報告により、荷重を積極的に与えることで、骨細胞のスクレオスチン産生がストップすることが関係していることが分かりました。