2021年3月アーカイブ
最小発音空隙に平均値というものは存在しない。
・S発音位を咬合高径の評価に利用するには、前歯が適切な位置に残存していることが前提となる。
また、Sivermanは「最小発音空隙は患者によってさまざま(0-10ミリ)で、平均値というものは存在しない」述べている。
さらに空隙の量を視診で評価することが難しいことも少なくない。
そのため、咬合高径の評価の基準としてやや実用性に欠ける。
(参考文献)
Goodacre DJ, Campagni WV, Aquilino SA. Tooth preparations for complete crowns : an art form based on scientific principles. J Prosthet Dent 2001 ; 85(4) :363-376.
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過蓋咬合だから発音が上手にできないとか、オープンバイトだから発音が上手にできないというケースに、私は遭遇したことがありません。
ということは、最小発音空隙に平均値が存在しないという事実とつながるように思います。
慢性疼痛保有者の47%は寒い時に痛みが悪化する。
・慢性疼痛保有者の25%は天気が悪い時、あるいは崩れる時に、47%は寒い時に痛みが悪化すると答えていたとされています。
ラットを用いた慢性疼痛実験では、大気圧より27-40hPa減圧した環境下で疼痛行動が増強し、交感神経が関係していると述べられています。
さらに、その体内センサーは内耳にあり、内耳破壊ラットを用いた慢性疼痛実験では、減圧した環境下でも疼痛過敏行動が変化しないことが明らかにされています。
同様に温度変化についても述べられており、低温環境下では痛み行動が増強され、これは交感神経とともに末梢の冷覚受容器の活性化が鍵となっていると述べられています。
その結果、痛みの感受性が高まり、痛みが強くなるのだと思われます。
(参考文献)
佐藤純:気象関連性疼痛のメカニズム. PAIN RESEARCH, 34(4) : 312-315, 2019.
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数は多くはありませんが、毎年寒い季節になると歯の痛みを訴える患者さんがいます。
痛みの程度も大きくはないのですが、痛みが消失し、本人も日常の忙しさで忘れてしまっている間に、再度寒い季節を迎えるということを繰り返しています。
症状が増悪傾向にあり、持続的な場合には具体的な治療が必要と考えています。
咳・痰から何を疑うか?
・咳・痰から何を疑うか?
一般的病気:上気道炎、咳喘息、COPD、逆流性食道炎、ACE阻害薬、肺炎、副鼻腔炎・後鼻漏症候群
頻度は低いが忘れてはいけない病気:気道異物、うっ血性心不全、重症気管支喘息、肺塞栓症、結核、喉頭がん・肺がん
(ザ・クインテッセンス 2021年 3月号 )
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COVID-19も症状として咳がみられますが、他にも咳がみられる病気にはどのようなものがあるか列挙してみました。
なお、この中でも圧倒的に多いのが上気道炎ということでした。
上顎骨への繰り返し荷重は、2週後にリモデリングが確認可能。
・「ラット上顎骨に埋入したインプラントへの繰り返し荷重がインプラント周囲骨組織のリモデリングに与える影響」(長崎大学 右籐友督先生)
インプラント周囲骨組織における荷重応答性骨変化は、リモデリングを伴う骨構造の再編成によるものであることが確認されました。
さらにラット上顎骨での骨質変化が観察されたのは荷重開始から2週間後以降であることがわかりました。
またリモデリングを促進する因子としてSemaphorin3Aが関与することが示唆されました。
(インプラント ニュース 第33号 )
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骨結合が完全ではないけれど、アバットメントを介してプロビジョナルを装着する場合があります。
そのようなときに、2週間後のインプラント周囲の骨質にリモデリングの傾向がみられるのであれば、負荷を増大しても問題ないという一つの目安と考えることができますね。
炎症の引き金を引く「Keystone細菌」とは?
・歯周病の病態と最も相関が強い口腔細菌としてPorphyromonas gingivalisが知られており、古くから歯周病原因菌として考えられてきた。
しかしながら、P.g菌は常在菌を保有するSPFマウスでは歯周炎を起こす一方、完全に無菌のGFマウスでは歯周炎を誘導しないことが示され、現在ではP.g 菌は常在菌叢を撹乱することで歯周炎を引き起こす「Keystone細菌」であり、炎症の引き金を引くのは非特異的な常在菌であろうとの見方が強い。
数は少なくても全体に大きな影響を与えうる細菌をKeystone細菌と呼ぶ。
(歯界展望 2021年3月号 )
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P.g 菌は歯周病の原因菌のような印象がありますが、直接的に炎症を起こすわけではないことが明らかになりました。
オッセオインテグレーション獲得後であっても糖尿病はインプラント治療のリスクなのか?
「オッセオインテグレーション獲得後であっても糖尿病はインプラント治療のリスクなのか?」(九州歯科大学 野代友孝先生)
オッセオインテグレーション獲得後の高血糖状態によりAGEsおよび炎症性サイトカインの発現が増加し、インプラント周囲の骨吸収が引き起こされること、骨吸収はプラークの蓄積によって悪化することが示唆されました。
(インプラント ニュース 第33号 )
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糖尿病を持病に持つインプラント患者さんは少なくありませんが、当院の患者さんではよい状態が維持されている方が多いように感じています。
これも治療前後で、劇的にプラークコントロールが改善されていることが関係しているものと考えています。