2021年5月アーカイブ
マイクロクラックと歯根の破折抵抗性には相関はあるのか?
既存のマイクロクラックが歯根の破折抵抗性に及ぼす影響 抜去歯を用いた研究
(研究目的)
抜去歯を用いて、歯根象牙質のマイクロクラックが歯根破折の原因となり得るのかを解析することを目的とした。
(研究内容)
下顎切歯180歯をマイクロCTで撮影したのち、根管断面が円形で歯根象牙質体積と根管容積がおおむね同等な60歯を選び、2名の調査員が歯根断面画像からマイクロクラックの位置。数を評価した。
次いで、歯軸方向に圧縮荷重を加え破折強さを測定した。
その後、再びマイクロCTを撮影してクラックの進展を観察するとともに、破折パターンを分類した。
マイクロクラックの数と破折強さ関連をスペアマンの順位相関(2つの変数間の相関関係を評価する分析方法の一つ)にて解析した。
(研究結果)
マイクロクラックは44歯(79% )における6-42%(平均14% )断面画像で検出され、1歯あたり0-1605本(平均412本)であった。
破折可住地は227-924N(平均560.3N)で、マイクロクラック数との有意な相関はなかった。
破折パターンは垂直性歯根破折が71.4%であり、ほとんどの場合に破折線とマイクロクラックの位置に関連はなかった。
マイクロクラックのない歯の破折荷重は、マイクロクラックを有する歯と同程度であった。
(結論)
根管未処置の下顎切歯では、歯根象牙質中のマイクロクラックの数と歯根の破折抵抗性との関連は見られなかった。
(参考文献)
Cavalcante DM, Belladonna FG, Simoes-Carvalhal JCA, Souza EM , Lopes RT, Silva EJNL, Dummer PMH, De-Deus G. Do pre-existing microcracks play a role in the fracture resistance of roots in alaboratory setting ? Int Endod J, 53 (11) : 1506-1515,2020.
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マイクロクラックの数と歯根の破折抵抗性には関連がみられた、という結論を期待しましたが、事実はそうではないようです。
今後の研究報告に期待したいところです。
日中の噛み締めで歯周病の進行リスクが4.9倍に!
日中の噛み締めがあると、歯周病の進行リスクが4.9倍なる。
岡山大学の研究グループが発見した。
研究は、同大学病院予防歯科で定期的に歯周病の専門的なケアを受けている患者のうち、横断研究に参加した48人を対象に行った。
研究開始時に詩集簿式検査、咀嚼筋の活動量の検査、歯周病原因菌(P.gingivalis)に対する血液中の抗体検査、アンケート調査を実施。
3年間の追跡して、歯周病の進行について調べた。
日中の噛み締めについては、最大咬合時の筋活動を100%として、20%以上の筋活動が1時間に約1分以上観察される場合と定義した。
結果、日中の噛み締めがあると、ないよりも4.9倍歯周病進行しやすいことが判明した。
(アポロニア21 2021年4月号 )
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噛み締めが歯周病の進行リスクを上昇させることは感覚的に理解できます。
ただ、従来から話題に上がっていた"夜間の噛み締め"ではなく、"日中の噛み締め"が歯周病リスクを4.9倍も高めることに驚かされました。
インプラントのプロビジョナルクラウンの破損や脱離の頻度は、個人差が大きい部分ですが、噛み締めの程度が大きい患者さんほど、頻繁にプロビジョナルを破損・脱離させてくるように感じます。
歯を失うことになった原因が、噛み締めであるのであれば、ふと気が付くと噛み締めてしまう悪い癖を、インプラント治療前後で、なくしていく配慮が必要であると考えられます。
再根管治療を行わずに、逆根管治療第一選択は是か?!
・築造体の除去が困難である場合、非外科的再根管治療を行わずに、逆根管治療を第一選択にすることは可能なのか?
ポストコアが臨床的、放射線的に問題なく装着されている既根管治療歯87歯に対して、非外科的再根管治療を経ないで行われた逆根管治療の経過を調べた研究。
経過観察は1年半-5年経過時と10年-13年経過時の2回行われた。
1回目の経過観察時には97.6% の歯(83/85)が治癒と判定されたが、2回目では75.8%(47/62)に低下した。
逆根管治療は、非外科的再根管治療を行う際のポストやコア除去に伴う歯根破折や穿孔の可能性を排除できる信頼性の高い治療法である。
(参考文献)
Truschnegg A, et al. Kong-term follow-up for apical microsurgery of teeth with core and post restorations. J Endod. 2020; 46(2) : 178-183.
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術式が従来法からモダンテクニックに変化するとともに、使用されるMTAセメントの封鎖性が良好であることなどによって、良好な結果がもたらしているのだと推測されます。
10年-13年経過して75.8%という結果であるのなら、十分信頼できる方法であると考えられます。
下顎前歯の根管解剖
下顎前歯の根管解剖のまとめ
1.下顎中切歯
1根管で1根管が96.2%。
1-2-1が2.1%、1-2が1.7%。
2.下顎側切歯
1根で1根管が82.7%。
1-2-1が11.8%、 1-2が5.5% 。
3.下顎犬歯
1根管で1根管が98.2%。
1-2-1が1.1% 1.1%、1-2が0.7%、2根2根管も1%存在する。
(日本歯科評論 2021年4月号 )
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この中で、1-2の割合が最も多いのが、ダントツに下顎側切歯であることは記憶しておきたい内容ですね。
下顎犬歯の38.0%に根管側枝の存在。
・日本人の下顎犬歯の根管側枝の のCBCTによる観察
108人の患者(男性:46人、女性:62人、14-77歳、平均年齢52.8±16.6歳)の108本の下顎犬歯の根管側枝をCBCT画像で解析した。
38.0%の歯で根管側枝を認めた。
年齢による差はなかった。
男性では、差がなかったが、女性では側枝なしが有意に多かった。
(下顎犬歯で側枝ありの女性:20人 下顎犬歯で側枝なしの女性:42人;P<0.01)
(参考文献)
Use of cone-beam computed tomography to evakuate accsessory in mandibular canines of Japanese. Mizuhashi R, Sugawara Y, Ogura I, Mizuhashi M, Saegusa H. Int J Microdent, 11 : 104-107,2020.
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下顎犬歯で側枝ありの女性:20人 下顎犬歯で側枝なしの女性ということは、結構な割合で、下顎犬歯の側枝は存在するものであるという認識が必要であることがわかりました。
CBCTによる下顎前歯の観察に関するレビュー
CBCTを用いて下顎前歯の根管形態を観察した19本の論文をレビューした。
2根管が存在する割合は、0.4-45%であった。
中切歯(17.2%)より側切歯(23.7%)のほうが多かった。
地域的には中国は少ないほうであった。
(参考文献)
Root canal morphology of the permanent mandibular incisors by cone beam computed tomography : a systematic review.
Herrero-Hernandez S, Lopes- Valverde N, Bravo M, Valencia de Pablo O, Peix-Sanchez M, Flores-Fraile , Ramirez JM. Macedo de Sousa B, Lopez-Valverde A.
Appl Sci, 10 : 4914,2020.
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根管治療予後不良歯は、中切歯よりも側切歯に多いように感じます。
これも側切歯のほうが未治療の根管が存在する確率が多いことと関連しているように思います。