2021年8月アーカイブ

補綴歯の予後と歯冠-歯根比

・補綴歯の予後を予測するうえでの歯冠-歯根比についてのレビューによると、ブリッジの支台歯については歯冠長:歯根長が1:1.5(歯冠-歯根比0.67)という比率が維持されていることが好ましいが、歯周組織に問題がなければ1:1(歯冠-歯根比1.0)まで許容できるとしている。
しかしながら、この指標単独で予後を予測するのは不十分であり、複数の指標とともに評価する必要があるとしていることに注意したい。
また、鉤部分床義歯の鉤歯の長期予後を調べた報告によると、歯冠-歯根比が1.25(歯冠長:歯根長が1:0.8)を越えなければ7年生存率は大きく低下しなかった。
しかし、メンテナンスの通院頻度、咬合支持状態、根管治療の有無、歯周ポケット深さなどの鉤歯の喪失に対するハザード比を上昇させる要因であった。
(参考文献)
Grossmann Y, Sadan A. The prosthodontic concept of crown-to root ratio : a review of the literature. J Prosthet Dent 2005 ; 93(6) : 559-562.
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治療計画立案の際には、歯冠-歯根比に対しても注目しています。
その歯牙が例えば10年後安定した状態であるかどうかによって、臨床家は歯牙の保存基準を変更し続けていく必要があると考えています。

2021年8月25日

hori (08:55)

カテゴリ:インプラントと過剰な力

外科的侵襲治療であるインプラント埋入手術によるARONJ発症リスクはさほど高くない。

・インプラント埋入によって生じたARONJ(術後2-10か月に発症)とインプラントの存在によって生じたARONJ(埋入後1年以上経過してから発症)では、後者の方が有意に発症しやすいということです。
この研究結果により、口腔内に埋入されているインプラントそのものがARONJのリスク因子となる可能性が明らかになってきました。
イメージとしては、外科的侵襲治療であるインプラント埋入手術こそがインプラント周囲にARONJを発症するリスクが最も高いと思っていたかもしれませんが、実際に調べてみるとそうではないようです。
しかし、科学的根拠の高い研究論文は依然としてありませんので、今後も十分な科学的情報を備えた研究が必要です。
(参考文献)
Escobedo MF, Cobo JL, Junquera S, Milla J, Olay S, Junquera LM. Medication-related osteonecrosis of the jaw. Implant presence-triggered osteonecrosis : Case series and literature review. J Stomatol Oral Maxillofac Surg 2020 ; 121(1) : 40-48.

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口腔内に埋入されているインプラントそのものがARONJのリスク因子となる可能性が明らかになってきました。
しかしながら、ARONJという状態は、名前は有名であるにもかかわらず、発生頻度は非常に低いので、個人的にはさほど重要視する必要はないように考えています。

2021年8月10日

hori (08:44)

カテゴリ:インプラントと全身の健康

歯-インプラント支持補綴装置の生存率がインプラントーインプラントと比較して10%ほど低かった。

・インプラント-歯の連結固定性補綴装置の5年後の生存率予測は95.5%で、歯支持固定装置(ブリッジ):93.8%、インプラント支持補綴装置:95.2%、インプラント支持単独冠:94.5%とそれぞれより高い生存率を誇る。
しかし、10年後の生存率予測をみると、インプラント-歯の連結による固定性補綴装置では77.8%、歯支持固定装置(ブリッジ):89.2%、インプラント支持補綴装置(ブリッジ): 86.7%、インプラント支持単独冠:89.4%と歯-インプラント支持補綴装置の生存率がインプラントーインプラントと比較して10%ほど低かった。
(参考文献)
Pjetursson B, Bragger U, Lang NP, Zwahlen M. Clin Oral Implants Res 2007; 18 Suppl 3:97-113. Comparison of survival and complication rates of tooth-supported fixed dental prostheses(FDPs) and implant-supported FDPs and single crowns.
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当院でも天然歯とインプラントを補綴的に連結したケースはありますが、今のところトラブルはありません。
同じく天然歯とインプラントの連結であっても、場合分けを多く用意して、エビデンスを蓄積すると特定のケースでトラブルが多いというような結論が出てくる可能性があります。
例えば、上顎vs下顎、前歯部vs臼歯部、骨質1・2vs骨質3・4、アンチゴニアルノッチの有無などにおいて有意差がみられるのかどうかに興味があります。

2021年8月 5日

hori (08:22)

カテゴリ:インプラントとブリッジ

手術プロトコルの違いはインプラント周囲炎に関連するのか?

・1592回のインプラント手術(1017名/3082本インプラント)が一つの紹介先開業医で行われた。
下顎のインプラント外科治療、インプラント埋入と同時に行われた歯肉移植術がインプラント周囲炎や早期炎症のリスクを増加させた。
また、2回法での埋入治療(85%が付加的なGBRを行っている)も1回法のシンプルなインプラント治療や抜歯即時埋入治療よりもインプラント周囲の炎症を引き起こすリスクが高かった。
(参考文献)
Jemt T, Karouni M, Abitbok J, Zouiten O,Antoun H. Clin Implant Dent Relat Res 2017; 19(3):413-422. A retrospective study on 1592 consecutively performed operations in one private referral clinic. Part ?:Peri-implantitis and implant failures.
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付加的なGBRを併用している2回法インプラントは、1回法インプラントや抜歯即時インプラントよりも、後にインプラント周囲炎に罹患するリスクが高いことが明らかになりました。

2021年8月 1日

hori (08:40)

カテゴリ:インプラント周囲炎

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