2024年8月アーカイブ
歯周病はなぜ痛くないのか?
P.ジンジバリスに代表される歯周病原細菌が作る短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、n-酪酸、イソ酪酸、吉草酸)のうちn-酪酸(以下、酪酸)によって神経突起が萎縮して痛覚が阻害されるのが、「歯周病が痛くない」ことの一因です。
痛覚は生体防御機構の一つです。
痛覚が生じる部位には好中球などが集まって免疫システムが作動するのですが、痛覚が阻害されるとそれらの機構の働きが退化し、病態が進行していきます。
これは、歯周病原菌の戦略といえるかもしれません。
嫌気性菌である歯周病原菌は糖代謝できないため発育が遅く、病原性も強くありません。
いわば弱い菌なので、免疫機構が正常に働いてもらっては困るという事情もあります。
酪酸を出すことで免疫機構の働きを低下させ、生存・増殖のチャンスをつかんでいるとも考えられるのです。
(アポロニア21 2024年8月号 )
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歯周病が痛くない理由に、歯周病原細菌の出す酪酸が関与し、免疫機構の働きを低下させていることがあるようです。
心房細動の再発を歯周炎治療で抑制
心房細動に対するカテーテル治療を受ける患者のうち、重度の歯周炎がある人は、歯周炎治療によって心房細動の再発を抑制できる可能性がある。
広島大学の研究チームは、心房細動に対するカテーテルアブレージョン治療を受ける患者288人を対象に、歯周炎の有無とその治療が術後の心房細動再発に及ぼす影響を検討した。
さらに、歯周炎の定量化指標となる歯周炎症面積(PISA)を前例で計測した。
その結果、歯周炎治療を受けた患者の心房細動再発率は16.5%だったのに対して、治療を受けなかった患者は28.3%だった。
PISA高値群では、歯周炎治療を受けた患者の再発率は20%、受けなかった患者は18.4%だった。
(参考文献 Journal of the American Heart Association 2024年4月10日 )
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心房細動に対するカテーテルアブレージョン治療を受ける場合には、その前に歯周治療を受ける方がよいということが明らかになりました。
ピロリ除菌の失敗にう蝕が関与
胃炎、胃潰瘍、胃がんの原因とされるヘリコバクター・ピロリに対する除菌療法の成否が、う蝕の有無と関係があることが分かった。
朝日大学歯学部口腔感染医療学講座の岩井講師らが、ピロリ除菌と歯科検診を受けた226人(平均年齢52.7歳)について、ピロリ菌除去と歯科所見の関連を調べた。
226人のうちピロリ除菌に失敗したのは、38人(17%)で除菌失敗はう蝕の有無と有意に関連していた。(虫歯なしと比較した際のオッズ比2.672,95%信頼空間1.093-6.531)。
う蝕の本数が多いほどピロリ除菌の失敗も多く、特に未処置のう蝕がピロリ除菌の失敗に関連するということが明らかになった。
(参考文献 Scientific Repors 2024年2月19日 )
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ピロリ除菌の失敗にう蝕が関与することが明らかになりました。