インプラントの受動的触知覚の閾値は、天然歯よりも20倍大きい。

・歯根膜がないことに由来する咬合感覚も、インプラントは天然歯と異なる様相を呈する。
触知覚には、能動的触知覚と受動的触知覚とがある。
能動的触知覚とは、どれくらいの厚さの物があると知覚するかということであり、厚さ弁別能ともいう。
これに対して、受動的触知覚とは、歯もしくはインプラントにどれくらいの圧を作用させると知覚するかということである。
・インプラントの受動的触知覚について、Hammerleらは、ITIインプラントを埋入し、単冠により補綴してから1年経過後の22名を被験者とし、受動的触知覚を調べている。
インプラントの受動的触知覚は、平均100.6g、天然歯は平均11.5gであり、インプラントは、天然歯と比較し、受動的触知覚の閾値が8.75倍大きいと報告している。
・Higakiらは、触知覚に関する6本の論文のメタアナライシスを行っており、インプラントの能動的触知覚(厚さ弁別能)は、天然歯の1.2-2.3倍で、その受動的触知覚は天然歯の4-20倍であると報告しており、一般にはインプラントの触閾値は天然歯よりも劣ると考えられる。
(参考文献)
Hammerle CH, Wagner D, Bragger U, Lussi A, Joss A, Lang NP. Threshold of tactile sensitivity perceived with dental endosseous implants and natural teeth. Clin Oral Implants Res 1995 ; 6(2) : 83-90.
Higaki N, Goro T, Ishida Y, Watanabe M, Tomotake Y, Ichikawa T. Do sensation differences exist between dental implants and natural teeth? : a meta-analysis. Clin Oral Implants Res 2014 ; 25(11). : 1307-1310.
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受動的触知覚、すなわち『どのくらいの咬合力を作用させると、インプラントと天然歯は、それぞれ圧がかかっているということを知覚するのか』についての研究報告です。
これによるとインプラントは、最大で20倍も天然歯より大きな咬合力を与えられてようやく、その圧を知覚するそうです。
一度骨結合したインプラントが痛むことはほぼ皆無です。
天然歯であればとうに、痛み等のトラブルに発展している状態になっているような咬合力でも、インプラントでは何事もないかのように使用できているというのは、インプラント治療では珍しく無いように感じます。
でも、それだからこそ、セラミックスが破折した際に、患者さんは『硬い物を食べたわけではないのに、セラミックスが欠けた。』という認識があるのです。
患者さんとのトラブルを避けるためにも、『インプラントの感覚閾値は、天然歯よりもはるかに大きい。』ということを十分に説明したうえで、実際のインプラント治療に対峙する必要があるということになります。

2017年2月15日

hori (16:39)

カテゴリ:インプラントと過剰な力

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