マイクロクラックと歯根の破折抵抗性には相関はあるのか?
既存のマイクロクラックが歯根の破折抵抗性に及ぼす影響 抜去歯を用いた研究
(研究目的)
抜去歯を用いて、歯根象牙質のマイクロクラックが歯根破折の原因となり得るのかを解析することを目的とした。
(研究内容)
下顎切歯180歯をマイクロCTで撮影したのち、根管断面が円形で歯根象牙質体積と根管容積がおおむね同等な60歯を選び、2名の調査員が歯根断面画像からマイクロクラックの位置。数を評価した。
次いで、歯軸方向に圧縮荷重を加え破折強さを測定した。
その後、再びマイクロCTを撮影してクラックの進展を観察するとともに、破折パターンを分類した。
マイクロクラックの数と破折強さ関連をスペアマンの順位相関(2つの変数間の相関関係を評価する分析方法の一つ)にて解析した。
(研究結果)
マイクロクラックは44歯(79% )における6-42%(平均14% )断面画像で検出され、1歯あたり0-1605本(平均412本)であった。
破折可住地は227-924N(平均560.3N)で、マイクロクラック数との有意な相関はなかった。
破折パターンは垂直性歯根破折が71.4%であり、ほとんどの場合に破折線とマイクロクラックの位置に関連はなかった。
マイクロクラックのない歯の破折荷重は、マイクロクラックを有する歯と同程度であった。
(結論)
根管未処置の下顎切歯では、歯根象牙質中のマイクロクラックの数と歯根の破折抵抗性との関連は見られなかった。
(参考文献)
Cavalcante DM, Belladonna FG, Simoes-Carvalhal JCA, Souza EM , Lopes RT, Silva EJNL, Dummer PMH, De-Deus G. Do pre-existing microcracks play a role in the fracture resistance of roots in alaboratory setting ? Int Endod J, 53 (11) : 1506-1515,2020.
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マイクロクラックの数と歯根の破折抵抗性には関連がみられた、という結論を期待しましたが、事実はそうではないようです。
今後の研究報告に期待したいところです。