インプラント上部にジルコニアモノシリッククラウンを選択することの是非。
・高強度のジルコニアフレームにポーセレンを焼成した場合、ポーセレンの破折強度は100MPa程度ですから、二ケイ酸リチウムよりもチッピングしやすい。
通常の食生活では100MPa程度の破折強度を持つ材料が欠ける可能性は低く、クレンチングなどの過剰な力が原因と思われます。
・天然歯のエナメル質の破折強度も100MPa程度で、高齢者の歯を観察すると、多くの歯がエナメルチッピングを起こしています。
歯冠部に1000MPa以上の破折強度をもつジルコニアモノシリックのクラウンが装着され、過剰な力がかかった場合にどこが壊れるのかと想像すると、その使用は慎重に診断した上で採用した方が良いように思えます。
ポーセレンが欠けることは、生体が壊れないためのセイフティーバルブ(安全弁)だともいえるかもしれません。
(日本歯科評論 2016年4月号)
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インプラント上部のセラミックスが破損するケースは実際の臨床では少なくありません。
インプラントの補綴(被せ)が破損すると、破損以前よりも咬み合わせの面積が小さくなるので、インプラントのフィクスチャーが受け止める負荷は減少します。
いわばセラミックスの破損により、その部分が咬みにくい状況へと変わるので、そのインプラント自体の寿命は長くなるとも考えられます。
一方1000MPa以上の破折強度をもつマテリアルを歯冠部に選択した場合、アバットメント部のネジの緩みや破損なら、トラブルのレベルは低いですが、歯槽骨の喪失やフィクスチャーの破折が惹起されるとその対処は比較的困難なものとなります。
フィクスチャーが破折してインプラントの撤去が余儀なくされるよりは、セラミックスのチッピングの方がまだいいとは思いませんか。