根管治療歯は咬んだ感覚が希薄である。
・Randow&Glantzは、根管治療歯と生活歯では咬んだ時の感覚にどれくらいの差があるのかを歯に重りをつけて検証したところ、根管治療歯は生活歯に比べて2倍以上の力を加えると、初めて咬んでいる感覚が得られたと報告している。
それゆえに、根管治療歯は生活歯に比べて強い力が加わる可能性があり、継時的な変化として垂直性歯根破折を引き起こす可能性が考えられる。
(参考文献)
Randow k, Glantz PO. On cantilever loading of vital and non-vaital teeth. An experimental clinical study. Acta Odontol Acand. 1986; 44(5): 271-277.
*****
インプラントと隣接した歯が歯根破折を引きこすケースは珍しくないといわれています。
その歯根破折が生じた歯の多くは、根管治療歯であることが多いのですが、咬んでいる感覚が生活歯よりも乏しいために、力強く咬んでしまい、歯根破折に至っている可能性が推察されます。
また大臼歯部に歯牙が欠損していて、その部分にインプラントを希望される患者さんがいる場合、その前方に存在する小臼歯は根管治療歯であるケースは少なくありません。
このような場合、インプラント治療前に最後方に位置していた小臼歯にはマイクロクラックが蓄積しているので、後方にインプラントが入った途端、あまり硬いものを食べたわけではないのに、歯が割れたという現象が起きるのかもしれません。
インプラントの前方の歯牙がやむなく抜歯しなくてはならない場合、更にその前方の天然歯と後方のインプラントは連結しないのが一般的です。
そうなると、治療方針は
1. 追加でのインプラント治療。
2. 部分入れ歯。
3. 補綴(被せ)なし。
の3つから選択することになります。
こうして考えると、歯根破折が将来疑われる歯については、場合によっては抜歯も視野に入れるケースも出てくるのではないでしょうか。