咬筋の付着角度による未来予測
・咬筋の付着角度が下顎枝下縁に対して鋭角であれば、SDAで処置をしても前方に力が働き、上顎前歯のフレアアウトを引き起こす可能性が高い。
より90度に近い鈍角であれば、臼歯部根尖に応力が集中し根管治療が施されている歯は負担荷重で破折リスクが上昇する。
(参考文献)
de Sa e Frias V, Toothaker R, Wright RF : Shortened dental arch : areview of current treatment concepts. J Prosthodont. 13(2) : 104-110.2004.
*****
当院でも、様々な骨格形態の方に対して、下顎枝下縁と咬筋付着方向の角度を調査しました。
その結果、ヒトである以上、想像したほど咬筋付着の方向が異なるわけではないことが分かりました。
また、N数を増やすことで、骨格形態によるある一定の傾向が明らかになりそうだということも分かりました。
今回は、セファロ上で咬筋付着部を計測しましたが、実際の患者さんを触診し、咬筋の付着部位にマーキングした上で、セファロを撮影して計測した方が正確なデータが得られると考えられます。
それにしても、同じSDAでも前歯部がフレアアウトする人と臼歯部の歯根破折する人の両方がいます。
しかしながら、その両方が同時に起きている人はあまりいないように感じます。
他の研究報告で、『SDAは小臼歯部が圧下されるので、結果として上顎前歯部がフレアアウトするため、SDAは理想的ではない。』という意見も聞いたことがあります。
そうなると、歯槽骨が硬く小臼歯部が圧下されないタイプの人は、歯根破折が惹起され、歯槽骨が相対的に柔らかいタイプの人は、小臼歯部が圧下されるのかもしれません。
今回の研究報告では、咬筋の付着方向を解析することによって、患者さんが元々持っているリスクを上手く回避できる可能性があります。
非常に興味深いと感じました。