インプラントのメインテナンスと歯肉炎に対する感受性がインプラント成功率に及ぼす影響:5年間の後ろ向きコホート研究
(研究方法)
インプラント治療後、年に1回以上メンテナンスを受けていた患者を定期的メンテナンスプログラム群(以下、DMP群)とした。
メンテナンスにおいては、臨床検査、診断、必要に応じた紙面清掃または縁下デブライドメントが行われた。
インプラント治療後、定期的なメンテナンスに次医院しなかった患者は不定期メンテナンスプログラム群(UMP群)と定義された。
歯周病の治療は、インプラント治療前に完了していた。
被検者の適格基準は、漸進的に健康な21歳以上の成人で、糖尿病はなく、2005-2012年の間にStraumannインプラントが埋入され、上部構造装着後6か月以内(T0)にプロービングによる検査およびエックス線検査が行われたこととされた。
除外基準は、全身疾患、コントロール不良の糖尿病患者、上部構造装着後6か月以内のエックス線検査が行われなかった場合とされた。
最終的には、DMP群およびUMP群で各100名、合計200名がリコールされ、臨床的検査およびエックス線検査が行われた(T1)。
臨床検査では、天然歯およびインプラントのPPD、出血指数が記録された。
エックス線写真上では、インプラントショルダーから骨長までの距離が測定された。
これらの臨床パラメータおよびエックス線上での骨レベルのT0からT1の間の変量が計算された。
(主な結果)
観察期間中、保存されていた284本のインプラントのうち、インプラント周囲粘膜炎の発症率は患者レベルで63%、インプラントレベルで55.6%であった。
インプラント周囲炎は、患者レベルでは13%、インプラントレベルでは10.2%に発症した。
インプラント周囲炎は、患者レベルではDMP群において6%、UMP群17.2%に発症し、この群の間に統計学的有意差がみられた。
また、観察期間中の骨吸収量はDMP群で平均0.19ミリ、UMP群で平均0.63ミリで統計学的有意差がみられた。
さらに、多変量解析の結果、メンテナンスの欠如とインプラント周囲炎に有意な相関がみられた。
DMP群およびUMP群におけるインプラント周囲炎の発生率
DMPのインプラントレベル 4.0%
とUMPインプラントレベル 17.2%
間でP<0.01で有意差が見られた。
DMPの患者レベル 6.0%
とUMP患者レベル 20.0%
間でP=0.03で有意差が見られた。
(参考文献)
Hu C, Lang NP, Ong MM, Kim LP, Tan WC. Influence of periodontal maintenance and periodontitis susceptibility on implant success : A 5-year retrospective cohort on moderately rough surfaced implants. Clin Oral Implants Res 2020 ; 31(8) : 727-736.
やはり定期的なメンテナンスがインプラント周囲炎の発生や骨吸収を減少させる要因という結果になりました。