インプラント周囲炎の最近のブログ記事
インプラント同士は必ずしも3ミリ以上離さなくても大丈夫。
・インプラント治療のスペースマネジメントとして、天然歯とは1.5ミリ、インプラント同士は3ミリ以上離すことが基本と考えられてきた。
インプラント間の骨頂の吸収量は、その距離が2ミリから4ミリ以上まで大きくなるにつれ減少する。
近年のシステマティックレビューでは、1-3ミリでは有意差がないが、5ミリになると吸収量は有意に減少することが報告されている。
(参考文献)
Al Amri MD. Influence of inter-implant distance on the crestal bone height around dental implants.: A systematic review and meta-analysis. J Prosthet Dent/ 2016 Mar ; 115(3) : 278-82.
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プラットフォームスイッチングやテーパージョイントのインプラントを応用することにインプラント間距離が短くなってもインプラント間の歯槽骨吸収量を抑制できることが関与している可能性があります。
歯科検診の受診頻度 「年に1回以上」4割
歯科医院で1年に1回以上、歯科健診を受診する人は4割程度で、女性の方が男性より高い傾向にあった。
ライオンが、歯科医院で受ける歯科検診に関するアンケートを、15-69歳の男女1000人を対象に9月28日から10月3日まで実施した者。
歯科検診を1年に1回以上受診する人は、44%で性別では男性36%、女性52%の結果となった。
(アポロニア21 2023年1月号 )
チタンインプラント表面の工夫によって周囲炎を予防。
チタンインプラント表面の工夫によって周囲炎を予防できる技術が開発された。
東北大学歯学研究科による研究で、インプラント表面に作った無数のナノ突起が、免疫細胞のマクロファージを接触刺激して、細菌感染に対する生体防御機能(食作用)を活性化させるというもの。
研究グループは、歯根表面に存在する歯周組織の一部であるセメント質の物理的性質を模倣したチタン表面を開発した。
同インプラント表面にある無数のナノ突起が、食作用に関わる受容体への結合を介さずに、直接接触刺激を加えてマクロファージの食作用を活性化させることが判明。
さらに食作用に関わる受容体の発現を増加させ、菌体成分に対するマクロファージの反応性も増強することが示唆された。
(アポロニア21 2022年9月号 )
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チタンインプラント表面の工夫によって周囲炎を予防できる技術が開発されました。
インプラント周囲炎治療における再生療法は臨床的に意味があるのか?
主な結果として、テスト群で辺縁骨レベルは1.7ミリ、ボーンフィルは57%、コントロール群よりも多くの改善を認めた。
一方で、周囲ポケット値とBOP値では、統計学的有意差を認めなかった。
また、再建的外科治療自体の結果は、辺縁骨レベルで2.0ミリ、CALで1.8ミリ、PPDで2.8ミリの改善を認め、周囲粘膜の退縮は0.7ミリであった。
さらに、周囲ポケット値とBOP値では2つの群間で差を認めず、病気の治療という視点であ、再建的アプローチは必要がないといえる。
(参考文献)
Tomasi C, Regidor E, Ortiz-Vigon A, Derks J : Efficacy of reconstructive surgical therapy at peri-implantitis-related bone defects. A systematic review and meta-analysis. J Clin Periodontol, 46 Suppl 21 : 340-356,2019.
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インプラント周囲炎治療に対して、再生療法を行った場合に、インプラント周囲に炎症がなく、X線不透過なものが存在しているが、それは果たして骨といえるのかということになるのだと考えています。
また、そのような骨様組織が、結果的にインプラントの延命につながるかどうかが、再生療法の持つ価値ということになることでしょう。
インプラント周囲炎発症のリスク因子
エビデンスをもってインプラント周囲炎発症のリスク因子とされている3項目の結果
1.歯周病の既往
歯周病の既往がありインプラント周囲炎に罹患した者(9.3%)は、歯周病の既往がなくインプラント周囲炎に罹患した者(3.5%)に比較して有意差をもって多く認めている。
2.口腔衛生状態
口腔衛生状態が不良でインプラント周囲炎に罹患した者の発症率(42.4%)は、口腔衛生状態が良好でインプラント周囲炎に罹患した者の発症率(4.6%)に比較して有意差をもって多かった。
3.メンテナンスの頻度
SPT期に歯周炎が再発する患者は歯周組織が安定した患者に比較して、インプラント周囲炎およびインプラント喪失するリスクが高い。
歯肉炎に罹患していなければ歯周炎に罹患しないのと同様に、インプラント周囲粘膜炎の予防がインプラントインプラント周囲炎の予防につながる。
つまり、インプラント周囲粘膜炎を予防するには定期的なインプラント周囲のメンテナンスが必要になってくると考えられる。
本検討ではメンテナンスが年2回未満でインプラント周囲炎に罹患した者の発症率(12.4%)は、年2回以上メンテナンスが行われていてインプラント周囲炎に罹患した者の発症率(5.4%)に比較して有意差をもって多かった。
上述の口腔衛生状態とも関連するが、インプラント周囲炎の予防には年2回以上のメンテナンスが必要だと考えられた。
(クインテッセンス・デンタル・インプラントロジー 2022年vol.29 )
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エビデンスをもってインプラント周囲炎発症のリスク因子とされている3項目が明らかになりました。
インプラントプラスティが、チタンインプラントの表面粗さ、バイオフィルム形成、生体適合性に及ぼす影響
インプラントプラスティが、チタンインプラントの表面粗さ、バイオフィルム形成、生体適合性に及ぼす影響:システマティックレビュー
(目的)
本レビューの目的は、デンタルインプラントの表面粗さ、バイオフォルム形成、生体適合性におけるインプラントプラスティの効果を評価することである。
(材料および方法)
2020年4月までに出版された関連論文をPubMed,Scopus, Web of Science, The Cochrane Libraryにて電子検索した。
論文はすべてインプラントプラスティ後のインプラント表面変化を評価したものである。
主要アウトカムはインプラントの表面粗さであった。
二次アウトカムはバイオフィルムの消滅と再形成、表面元素の変化、細胞活性であった。
(結果)
in vitroの論文11本をin vivoの論文2本が適格となった。
インプラントプラスティはインプラント表面粗さを減少させた。
最終アウトカムは使用バーに依存し、タングステンカーバイトバーとシリコーンポリッシャーを使用した場合に最も滑沢な表面が得られた。
インプラントプラスティはまたバイオフィルムの除去とヒト歯肉線維芽細胞の成長は半比例した。
インプラントプラスティはまたバイオフィルムの除去と再成長阻害に効果的であることが示された。
(結論)
インプラントプラスティはデンタルインプラントの表面粗さを減少させ、それによりチタンインプラントの生体適合性を損なうことなくバイオフィルム形成を阻害した。
適格研究のほとんどがin vitroの研究であったため、本研究のアウトカムの検証にはさらなる臨床試験が必要である。
(参考文献)
Burgueno-Barris G, Camps-Font O, Figueiredo R, Valmaseda-Castellon E. The influence of implantoplasty on surface roughness, biofilm formation, and biocompatibility of titanium implants : a systematic review. Int J Oral Maxillofac Implamts 2021 ; 36(5) : e111-e119.
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インプラントプラスティは、インプラントの表面粗さを有意に減少させるとともに、バイオフィルムの形成を明らかに減弱させます。
表面粗さの減少においては、タングステンカーバイトバー後のシリコーンポリッシャーの使用がもっとも良好な結果を残したことが明らかになりました。
歯周病はなぜ進行しても痛くない?
結論をいえば、ジンジバリス筋などが歯周病原菌が産生する酪酸が、神経突起を委縮させるためです。
歯周病原因菌は、発育が遅く病原性も弱いため、痛みの刺激によって生体の防御機構が作動すると排除されてしまいます。
そのため、酪酸によって痛みを遮断し防御機構から回避していると考えられます。
ある意味、歯周病原菌の生き残り戦略といえますが、酪酸が神経突起を委縮させているということ自体、神経に以外作用を及ぼすものだといえます。
腸管で善玉として働いている酪酸が、歯周組織だと悪玉になってしまうのでしょうか?
腸管と口腔との最大の違いは、腸管はムチンの保護層が700μmと圧倒的に厚いという点です。
口腔のムチンの保護層は0.3-1μm程度です。
口腔粘膜は重層扁平上皮でできており、表皮が一部破壊されても、その奥にも次の表皮細胞があるため重篤な状態にはなりません。
しかし、腸管では養分を吸収するため上皮細胞が1層だけ並んでいる単層円柱上皮でできています。
そのため、上皮細胞を保護する分厚いムチン層が必須なのです。
ムチン層に守られている腸管では、糞便中の酪酸はそのままでは粘膜に接することはなく、腸管粘膜細胞を活性化させる善玉の働きだけを続けることができます。
しかし、ムチンの分泌量は、精神的なストレスなどの外的要因で大きく左右されます。
何らかの理由でムチンの保護層が薄くなると、酪酸が粘膜と接してしまい、組織破壊が起こるのです。
ストレスでポリープができたという病態のメカニズムは、このように説明できます。
一方、ムチンの保護層の薄い口腔では、酪酸による組織破壊がダイレクトに進行し、歯周病を引き起こすことになります。
(アポロニア21 2022年2月号 )
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同じ酪酸であっても、存在する場所によってマイナスの影響を与えることがあることがわかりました。
口腔乾燥症を引き起こす服用薬剤
1. 向精神薬 :ハルシオン、レンドルミン
2. 抗うつ薬 :デジレル、トリプタノール
3. 抗不安薬 :デパス、リーゼ
4. 利尿薬 : アルダクトン、フルイトラン
5. 抗ヒスタミン薬 : アレジオン、レスタミン
6. 高血圧治療薬 :アムロジン、アダラート
7. 気管支拡張薬 :スピロペント、メプチン
(参考文献)
伊藤加代子, 井上 誠. オーラルフレイルで注意したい薬剤のポイント. 臨床栄養 2020;137(4) : 583-586.
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唾液の中には、口腔内の細菌の増殖を抑える働きがあるリゾチームなどの物質が存在します。
口腔乾燥を引き起こすと、正常な場合と比較して、インプラント周囲炎に罹患しやすくなるものと考えられます。
唾液分泌量が少ないと虫歯リスクが増大する。
・日本の成人を対象とした研究では、虫歯経験歯率のオッズ比を刺激唾液の分泌量で比較した結果が示されています。
刺激唾液の分泌量が少なくなるにつれて、虫歯経験率のオッズ比が高くなる傾向がみられ、3.5mL/分超のオッズ比を1.0とすると、2.5mL/分以下の人のオッズ比は約1.8でした。
(参考文献)
Shimazaki Y, et al. Stimulated salivary flow rate and oral health status. J Oral Sci 2017 ; 59(1): 55-62.
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今回紹介した論文以外にも、刺激唾液の分泌量が1.0mL/分以上の比較して、0.6mL/分以下の人出は虫歯リスクが2.4倍あったとする米国における研究報告もあります。
唾液の中には細菌の増殖を抑える働きのある物質が存在するため、唾液が少ない人は虫歯、歯周病、インプラント周囲炎に罹りやすいといえます。
また、唾液が少ないと口臭発生原因の一因となります。
手術プロトコルの違いはインプラント周囲炎に関連するのか?
・1592回のインプラント手術(1017名/3082本インプラント)が一つの紹介先開業医で行われた。
下顎のインプラント外科治療、インプラント埋入と同時に行われた歯肉移植術がインプラント周囲炎や早期炎症のリスクを増加させた。
また、2回法での埋入治療(85%が付加的なGBRを行っている)も1回法のシンプルなインプラント治療や抜歯即時埋入治療よりもインプラント周囲の炎症を引き起こすリスクが高かった。
(参考文献)
Jemt T, Karouni M, Abitbok J, Zouiten O,Antoun H. Clin Implant Dent Relat Res 2017; 19(3):413-422. A retrospective study on 1592 consecutively performed operations in one private referral clinic. Part ?:Peri-implantitis and implant failures.
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付加的なGBRを併用している2回法インプラントは、1回法インプラントや抜歯即時インプラントよりも、後にインプラント周囲炎に罹患するリスクが高いことが明らかになりました。