オールオンフォーはインプラント周囲炎にならない?! そんな訳ないでしょ。

・全顎抜歯による口腔内細菌への影響は?
歯周病に罹患した歯すべてを抜去した後、これらの細菌が口腔内から検出されなくなったとする意見と検出されたとする意見に分かれている。
無歯顎になった後にインプラントが埋入される場合、口腔内に菌が残っているとその菌がインプラント周囲組織に伝播し、インプラント周囲炎を引き起こす可能性が考えられる。
今回紹介する論文は、全顎抜歯後のAggregatibacter actinomycetemcomitans(A.a.)とPorphyromonas gingivalis(P.g.)への影響を、培養とPCRで評価することを目的とした前向きコホート研究である。
材料と方法
中等度-重度の成人の歯周炎患者30名が対象となった。
選択基準は4歯以上のホープレスな歯のみが残存し、すべてが抜歯される計画であることであった。
全顎の抜歯前(T0)、抜歯1か月後(T1)および3か月後(T2)に唾液、舌、頬側歯肉、粘膜から試料が採取され、T0では歯肉縁下プラーク、T1、T2では補綴物からもサンプルが採取された。
好気培養、嫌気培養、リアルタイムPCRにより菌の同定が行われた。
結果
A.a.(培養)     A.a.(qPCR法)   P.g.(培養)    P.g.(qPCR法)
T0 4名           4名         12名         13名
T1 1名           1名          0名          8名
T2 0名           1名          1名          7名
舌、唾液中の総菌数について、抜歯前後で変化がなかったが、粘膜から採取されたサンプル数の嫌気培養された場合の平均総菌数のみ、T0とT2の間に有意な減少がみられた。
また、好気性菌の総数の嫌気性菌に対する割合は、T2と比較してT0で有意に高かった。
結論
1. 歯周炎に罹患した歯すべてを抜去して3か月経過すると、口腔内細菌数は減少するが、P.g.などの歯周病原菌と考えられる菌が検出される場合がある。
2. 抜歯によりすべてが解決するわけではなく、インプラント埋入後も感染に対する十分な対応が必要である。
(参考文献)
de Waal YC Winkel EG, Raangs GC, van der Vusse ML, Rossen JW, van Winkelhoff AJ. Changes in oral microflora after full-mouth tooth extraction : a prospective cohort study. J Clin Periodontol 2014 ; 41(10) : 981-989.
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以前、オールオンフォーのセミナーを受けました。
その際に、講師の歯科医師が、『すべて歯を抜歯するので、歯周病菌はいなくなり、そのためオールオンフォーではインプラント周囲炎にはならない。』と話していました。
個人的には、『本当だろうか?』と感じていました。
今回のエビデンスで示すように、やはり口腔内に存在する歯をすべて抜歯しても、歯周病菌は残っているようです。
またそれゆえに、オールオンフォーも他のインプラントと同様、インプラント周囲炎になるリスクをはらんでいるといえます。
オールオンフォーに限らず、歯科セミナーは、それを販売する会社に都合の良いことを話す歯科医師が講師として選択されているので、すべてをうのみにすることは危険だということになります。

2015年4月 1日

hori (14:56)

カテゴリ:インプラント周囲炎

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