インプラントが入っている患者さんへのフッ化物応用は?

・インプラントが入っている患者さんへのフッ化物応用は?
家庭で使うフッ化物配合歯磨剤に関しては、口腔内のチタンを腐食するエビデンスは存在しておらず、天然歯を有する人であれば利用した方がメリットが大きいことが学会からの見解として見出されており、詳細がレビュー論文にまとめられています。
その理由は表1のとおりで、フッ化物配合歯磨剤の理由を中止する利益はなく、中止による齲蝕リスクの増加が懸念されるとされています。
表1 インプラント治療患者へフッ化物配合歯磨剤への利用を勧めるべき理由
1. pH4.7以下の強い酸性の環境では、フッ化物配合歯磨剤によりチタンが侵襲されうるが、中性、アルカリ性または弱酸性のフッ化物配合歯磨剤を利用する場合、侵襲の可能性は極めて低い。
2. 歯磨剤を利用しないブラッシングでもチタン表面を侵襲されていた。
歯磨剤を利用するブラッシングでフッ化物の有無による侵襲の程度に差はない。
3. チタン表面の侵襲の有無で、細菌の付着に差はなかった。
フッ化物の利用により細菌の付着が抑制された報告も存在した。
4. 実際の口腔内では唾液の希釈作用でフッ化物濃度は低下するため侵襲の可能性は低い。
5. フッ化物配合歯磨剤の利用により細菌の酸産生能が抑制されるため、チタンが侵襲されるpHにはなりにくくなく。
6. 酸性の飲食物によるpHの低下は短時間で回復したことが分かった。
(参考文献)
フッ化物配合歯磨剤はチタン製インプラント利用者のインプラント周囲炎のリスクとなるか : 文献レビュー. 口腔衛生会誌 2016(3): 308-315. 相田潤.
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これまでインプラントに対するフッ化物の使用の是非については、明言を避けた報告が多かったと感じていました。
そんな中、今回の報告で、pHが4.7以下の強い酸性のものでなければ、口腔内にインプラントがあってもフッ化物配合歯磨剤を使用して問題ないことが分かりました。
因みに当院で使用しているフッ化ナトリウムはpH3.5ということで、浸漬3日でチタンインプラントは腐食するとのことでした。

2018年9月 1日

hori (08:45)

カテゴリ:インプラント周囲炎

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