インプラントと歯列矯正の最近のブログ記事
歯列不正とシャベル切歯
・日本人の歯並びはなぜ悪いのだろう?
上顎前突や叢生が起こりやすいのは、それなりの理由がある。
その一つがシャベル切歯である。
厚く凹凸したシャベル切歯は東アジア人の特徴であり、髪の毛の太さと相関することが分かってきた。
この特徴は、最終氷河期に寒冷化適応として顕著化している。
同じ兄弟でも弟は毛が細くウエーブがかかっていてシャベル切歯の程度が少ない。
一方で、姉の髪の毛はストレートで太く、シャベル切歯の程度が顕著である。
(歯界展望 2021年2月号 )
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姉弟でも一方だけがシャベル切歯の場合があり、髪の毛の太さと相関することが明らかになりました。
矯正歯科治療で予防歯科!
矯正歯科治療により不正咬合が改善されると咀嚼効率が上昇し唾液分泌量が増加する可能性がある。
唾液分泌量の減少はう蝕の大きなリスクファクターであるが、加齢とともに全身疾患を有するようになると多くの服薬が必要となり、唾液分泌量が減少する報告も多く認めることから、唾液分泌量を可能な限り増加できれば矯正歯科治療は予防歯科においてより有効である。
(結果)
1. 矯正治療開始時の唾液分泌量:8ml
2. 矯正治療装置撤去時の唾液分泌量:9.7ml
3. 矯正治療終了時の唾液分泌量:9.8ml
1と2、1と3間で、P<0.01で有意差あり
(参考文献)
日本歯科医師会. 健康社会に寄与する歯科医療・口腔健康のエビデンス. 2015.
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矯正歯科治療を行うと、咀嚼効率が上昇するだけでなく、唾液分泌量も増大するようです。
唾液分泌量が増大し、唾液が歯牙全体にいきわたりやすくなる歯列となるので、虫歯や歯周病になりにくくなります。
また唾液分泌量が増大すると口臭予防にも寄与します。
普段から、酸っぱい味や苦い味を感じる方は、矯正歯科治療で口臭に対する不安が改善する可能性もあると思います。
25歳以上の交叉咬合はあえて改善しない。
・成人患者、25歳以上の交叉咬合はあえて改善しない。
トルクをかけると咬む位置が変わってしまって傾斜移動でしか動かせなくなってしまうので、交叉咬合は改善せずそのままにし治療を進める。
(歯界展望 2020年10月号 )
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臼歯部の交叉咬合症例は下顎歯列弓が幅が広いのではなく、上顎歯列弓幅が狭いことが原因していることが多いように感じます。
当院でも大臼歯部の交叉咬合症例の治療例があります。
当院では、前方歯牙に対しては歯列矯正で対応して、大臼歯部は補綴的に被蓋関係を是正し、連結冠で対応しました。
治療後10年近く経過しますが、状態は安定しています。
歯根間距離によって、なりやすい骨欠損形態が変わる。
・歯根間距離が近ければ一つの円、あるいは二つの円が重なり合って水平的骨欠損を生じる。
歯根間距離がある程度離れていれば垂直性骨欠損を(一方に生じた病変が隣在歯にそれほど大きな影響を及ぼさない)十分離れていればそれぞれの隣接面に独立した垂直性骨欠損を生じることがある。
(参考文献)
Waehaug J. The angular bone defect and its relationship to trauma from occlusion and down-growth of subgingival plaque. J Clin Periodontol. 1979; 6 : 61-82.
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歯根間距離によって、なりやすい骨欠損形態が変わるという報告です。
個人的には歯根間距離に加えて、歯牙の位置異常や傾斜の方向・程度も関連して、なりやすい骨欠損形態が変わるものと考えています。
また最近は上顎骨の成長が不足していることが影響してか、口蓋側の歯冠長と頬側の歯冠長の長さに大きな差がある方がおり、歯磨きがさほど悪くはないのに、頬側から根分岐部病変を患っている方も少なくないように感じます。
このような方の治療を総合的に行う場合、歯列矯正よりインプラント治療の方が適切であると考えています。
矯正用インプラントの直径について
・直径1.6ミリでは282本中27本(9.57%)が、直径1.8ミリでは117本中37本(31.62%)が脱落した。
歯科用CTを活用することで、直径が小さいスクリューの脱落を低く出来る一方で、直径の大きいスクリューは狭小な歯槽中隔で隣接する歯根との接触や、歯槽骨のマイクロフラクチャーを惹起しやすく、脱落率が高くなると考察。
(アポロニア21 2019年1月号 )
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矯正用インプラントで、直径1.8ミリよりも直径1.6ミリの方が脱落率が低いというデータが得られました。
高々0.2ミリの差ですが、脱落率には大きな差が生じています。
歯科医学も日進月歩ですね。
永久歯の先天欠如により、歯列のバランスは崩れる。
・乳歯に先天欠如があると、後継永久歯の約75%に先天欠如が見られる。
乳歯癒合歯の場合も、後継永久歯の40-50%に先天欠如がみられる。
すなわち、乳歯に先天欠如や癒合があると、永久歯の先天欠如が発現しやすい。
・永久歯の先天欠如の発症頻度は、10.09%であり、男子より女子に多い傾向がある。
歯種別では下顎第二小臼歯、下顎側切歯、上顎第二小臼歯、上顎側切歯が多い。
また、発症パターンとして、2歯以上の先欠が先欠全体の48.3%を占めることが分かった。
両側性は先欠全体の30.6%であったのに対して、両顎性は先欠全体の7.3%と少ない傾向であった。
(デンタルダイヤモンド 2017年9月号 )
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永久歯の先天欠如があると、そのスペースを閉じるかのように、後方歯牙の前方傾斜や、対合歯の挺出が惹起されます。
すなわち、永久歯の先天欠如により、歯列・咬み合わせのバランスは崩れるということです。
また、その状態を改善しようとすると、歯列矯正治療やインプラント治療が必要となります。
一方、歯牙にはその歯種によって、それぞれ役割が異なります。
例えば、人体で最も歯根長の長い犬歯は、歯列のカーブのところに位置しており、側方力がより多く受け止める役割を期待されています。
しかし、側切歯が先天欠損している場合、側切歯の位置に犬歯が移動し、犬歯よりも歯根長の短い第一小臼歯が本来犬歯の存在する位置に移動することになります。
これは、犬歯の役割を担わなくてはならない第一小臼歯には過剰な負担となるということを意味し、長期安定が疑問視される場合が出てくるということになります。
また、その中のある一定の割合の方が、将来インプラント治療が必要になるように考えられます。
コンタクト ロスの関連因子
・コンタクトロスが発生しやすくなる要因として、高年齢、対合歯が可撤性義歯であること、隣在歯が失活歯であること、隣在歯が連結されていないことが挙げられる。
・WEIらは、歯列咬合力のうち、犬歯間、すなわち前方部に加わる咬合力の割合が大きいと、コンタクトロスが起きやすいと結論付けている。
・コンタクトロス発生群の方がコンタクト維持群と比較して、歯冠インプラント比が大きく、有意差が認められた(p<0.01)。
・Mischの分類における骨質D1ならびにD2群の方が、D3ならびにD4群と比較して、コンタクトロス発生群の割合が高く、有意差があった(P=0.01)。
・インプラントに対して歯冠が長く、隣在歯が連結されておらず、動揺があり、埋入部位の骨質がD1もしくはD2であった場合に、一方で、年齢、性別、観察期間、側方運動時の接触の有無は、有意な説明変数とならなかった。
・WEIらは、55か所のインプラント-天然歯隣接面を調査し、コンタクトロスの発生した群では、咬合力の舌側成分、近心成分が大きく、また咬合力が比較的前方へ分布していると報告している。
・短期間にコンタクトロスが起こる理由として、臼歯部にインプラント修復がなされることで咬合力が増大することが挙げられる。
その結果、天然歯にかかる咬合力の前方成分も大きくなることで天然歯の前方移動がそれまでよりも加速、助長され、コンタクトロスが起こる可能性が考えられる。
・D1、D2の群はshort-faced typeで、咬合力が強い傾向にあることが予想され、この要因がコンタクトロスに関連したことが推測された。
(参考文献)
インプラント上部構造と天然歯間におけるコンタクトロスの関連因子 福西一浩, 北島一, 石川知弘, 武下肇, 前田芳信. 日本口腔インプラント学会雑誌vol.29 NO.4/2016.12
・咬耗が進行すると、歯の間に隙間が生じ、上下歯列の咬み合わせの関係も変化してしまう。
縄文人などの歯列を詳しく調べてみると、咬耗に伴って個々の歯が移動してこうした隙間を埋め、常に機能的な歯列矯正を保とうとするメカニズムがあることが分かってきた。
このような歯の生理的移動は、おそらく哺乳類に一般に備わっているものと推測されるが、ヒトにおいては3つのタイプに分類できる。
一つは、垂直方向の移動であり、連続的萌出。
二番目は近心移動。
三つ目は舌側移動。
(仙歯会報 2017年2月号 )
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個人的に興味深く感じたのは、『コンタクトロスの発生した群では、咬合力の舌側成分、近心成分が大きく、また咬合力が比較的前方へ分布している。』ということです。
また、仙歯会報の抜粋は、海部陽介氏が歯科医師会に講演に来られた際の記録です。
これら二つを元に考えると、コンタクトロスが生じる口腔内では、そもそも歯牙が近心舌側方向に傾斜して萌出しているために、歯列のサイズが小さくなっていることが推測されます。
歯列のサイズが小さいゆえに、舌癖が誘発されるのでしょう。
またそのような舌癖があるために、側方への舌突出壁があれば下顎前歯の挺出が生じ、前方への舌突出壁があればオープンバイト傾向からのさらなる空隙歯列が惹起されることが考えられます。
これは、咬合平面が上下的に歪むので、海部氏が仰るところの一つ目の垂直方向の移動に該当します。
またこのような状態では、アンテリアガイダンスがうまく機能しないために、臼歯部には側方からの為害作用がかかるために、早期に喪失する危険性が高まります。
そのような状態で臼歯部にインプラント治療を行うために、コンタクトロスが生じるのではないでしょうか。
そしてさらに、倒れている歯は継続して倒れ続けるということもコンタクトロスに関係していると個人的には推測しています。
10代の歯列矯正の炎症は肥満が要因
・10代の矯正の炎症は肥満が要因
ティーンエイジへの矯正に伴って起こる炎症反応は、肥満かどうかによって左右される。
イギリス・キングスカレッジ・ロンドンのM.T.Coboune教授らの研究グループが、平均年齢15歳の矯正治療を控えた男女55人(男性27人、女性28人)を対象にしたコホート研究で明らかにした。
唾液、歯肉溝滲出液を採取して炎症に関わるバイオマーカーを比較した結果、BMIから肥満に分類される群では治療開始前からバイオマーカーが高く、動的治療を開始すると、さらに顕著になった。
論文は「JDR」1月23日号に掲載された。
(アポロニア21 2017年4月号 )
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10代の患者さんで、歯列矯正時に不潔性の歯肉炎が認められる場合があります。
当院では、ストレートワイヤーではなくマルチループを使用したケースで歯肉炎が生じたケースがあります。
そのような方もBMIは正常範囲の方が多かったため、今回の『歯列矯正による炎症と肥満が関係がある』というエビデンスは正直腑に落ちません。
JDRという雑誌は、歯科では比較的インパクトファクターの高い雑誌なので、信用できるとは思うのですが、人種による差があるのかもしれません。
今後の報告を待ちたいところです。
根分岐部病変はルートトランクの長さが関係している。
・下顎大臼歯では頬側に比べて舌側が、上顎大臼歯では近心<遠心<頬側の順にルートランクが長くなります。
したがって、下顎では頬側部、上顎では近心部の根分岐部病変が発症しやすくなります。
(知って得した!歯周治療に活かせるエビデンス )
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個人的に根分岐部病変は、下顎では頬側が、上顎では近心頬側根を取り囲むように進行しているケースが多いように感じていました。
ルートトランクの長さをベースに考えると、根分岐部病変の発症リスクを予想することができます。
また、スピーカーブやモンソンカーブを基に考えると、上顎歯は近心頬側に、下顎歯は近心舌側に傾斜して萌出しているといえます。
これらの方向に歯牙が傾斜すると、歯槽骨から歯牙が飛び出た状態になりやすいのは、上顎であれば近心頬側根、下顎大臼歯では頬側の分岐部ということになります。
そしてそれらを逆に考えると、『スピーカーブやモンソンカーブがきつすぎる人ほど、根分岐部病変になりやすいのではなかろうか。』という仮説を立てることができます。
さらに、スピーカーブやモンソンカーブがきつすぎる人は小さい顎骨の中に大きな歯牙が萌出する傾向にあるために、咬頭展開角が小さく、咬頭干渉が生じやすいのではなかろうかとも考えることができます。
近年、歯列不正のある患者さんに対して、歯列矯正を行っても、歯牙形態が悪いために、うまく咬まないケースが少なくありません。
これも咬頭展開角が小さいことが関係しているように感じています。
また咬頭展開角が小さかったり、上顎大臼歯でいえば、遠心舌側咬頭がなく、3咬頭になっている状態が下顎大臼歯の歯冠破折や歯根破折を惹起している可能性が疑われます。
このような形態が不良な対合歯に対して、欠損した部位にインプラント治療を行っても長期に亘って安定した状態は維持できません。
全体の咬み合わせの改善を図りながら、欠損部位にインプラント治療を行うことが重要であると考えています。
緑内障と永久歯の先天欠如に関連性あり。
・家族性大腸ポリポーシスは、遺伝性に大腸がんを発症する家族性腫瘍の一つで、患者の17%に過剰歯があると報告されている。
この病気の責任遺伝子であるAPC遺伝子は、Wntシグナル系を介して過剰歯の発生にも関与していることが報告されており、詳細な分岐機構が解明されれば、新たな医科歯科連携の橋渡しになるかもしれない。
もう一つの例は永久歯の先欠だ。
最近われわれは三世代にわたる先欠の遺伝子検査を行った。
当初はこれまでに報告されているすべての責任遺伝子(MSX1、PAX9、WNT10Aなど)の変異を検査したが、異常が見つからず、最終的にエクソーム解析という方法ですべての遺伝子を網羅的に解析した。
その結果、PITX2という遺伝子に変異を見出した。
この遺伝子は永久歯の先欠と眼の虹彩の低形成を主症状とするIris hypoplasiaという非常にまれな病気の原因遺伝子であった。
虹彩の低形成は、眼圧の上昇につながり緑内障を発症する可能性がある。
(ザ・クインテッセンス 2016年6月号 )
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最近の遺伝子検査により、家族性大腸ポリポーシス患者の17%に過剰歯があること、緑内障発症のリスクにつながる虹彩の低形成と永久歯の先天欠如が遺伝子的に同時に起きることが明らかになりました。
インプラント治療を希望される方の中には、虫歯や歯周病ではなく、永久歯の先天欠如が原因となっている方は、近年増加傾向にあります。
また多くの場合、歯列不正も伴っていることが多いので、歯列矯正・インプラント治療・補綴(被せ)治療等の総合治療が必要となります。
インプラント治療や歯列矯正、補綴治療は、より良い咬み合わせを構築するための"手段"に過ぎないのです。