侵襲性歯周炎の原因菌は、A.a.菌JP2クローン。
・諸外国における侵襲性歯周炎の原因菌は、A.a.菌JP2クローン。
1980年代前半まで、欧米の侵襲性歯周炎患者からは高頻度でA.a.菌が検出されることが報告されました。
A.a.菌が減少すると歯周状態もよくなるとの報告もあったため、 A.a.菌こそが原因菌であるとされたのです。
しかし、「本当に A.a.菌 が原因?」と怪しむ論文も少なからずありました。
その根拠は A.a.菌に感染していない侵襲性歯周炎患者が多くいること、逆に A.a.菌に感染していても歯周組織が健康な人がたくさんいることでした。
さらには、侵襲性歯周炎患者と慢性歯周炎患者との間には、 A.a.菌の検出率は有意な差がないという報告などもあり、 A.a.菌原因説を信じない人もいました。
そんな矢先、1984年に驚きの報告がありました。
A.a.菌は白血球障害性外毒素であるロイコトキシンを分泌し、免疫細胞や歯周組織に障害を与えますが、このロイコトキシンを大量に分泌する A.a.菌が見つかったのです。
この非常に毒性の強い遺伝子型(クローン)の A.a.菌は、限局性侵襲性歯周炎の8歳男児から検出され、 A.a.菌JP2クローンと名づけられました(若年性歯周炎は英語でJuvenile Periodontitis だからJP)。
その後の研究で、JP2クローンの感染者は侵襲性歯周炎を発症している率が明らかに高いこと、また経年的にアタッチメントロスが増加することが報告され、JP2クローンこそが侵襲炎発症の原因菌と考えられました。
(歯科衛生士 2017年1月号 Vol.41 )
・慢性歯周炎は不特定の様々な最近の感染によって発症するが、侵襲性歯周炎はA.a.やP.g.といった特定の細菌と関連があるため、PCR法を用いた細菌検査ではA.a.(+)であれば侵襲性歯周炎とする傾向にある。
確かに現在の侵襲性歯周炎に含まれた以前の分類における若年性歯周炎患者では、高頻度にA.a.に対する血清抗体価が高いとする報告があるが、一方で明らかに広汎型侵襲性歯周炎の病態を示す患者のうち細菌検査でA.a.が認められたものは約35%にしかすぎず、同じく明らかに慢性歯周炎の病変を有する患者のうちA.a.が認められたものは約20%であり、さらにコントロールとして調べた健常者においても約10%でA.aが検出され、3者の間で統計学的有意差は認められなかったという報告もある。
このことは、サンプリングの問題など細菌検査自体が有する薄弱性に問題があったかもしれないが、A.a.が健常者からも検出されていることを考えると、A.a.が認められれば侵襲性歯周炎、認められなければ慢性歯周炎といった単純な鑑別診断はそもそも理にかなわないことになる。
(科学的根拠に基づく歯周病へのアプローチ )
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以前は、侵襲性歯種炎といえば、A.a.菌が関与しているといわれてきました。
ところが、比較的最近では、「A.a.が健常者からも検出されていることを考えると、A.a.が認められれば侵襲性歯周炎、認められなければ慢性歯周炎といった単純な鑑別診断はそもそも理にかなわないことになる。」というようなことが言われるようになり、侵襲性歯周炎の原因論については、歯切れの悪い表現が続いていました。
そんな中、 A.a.菌の中でも、このロイコトキシンを大量に分泌する 菌が発見され、『A.a.菌JP2クローン』と名付けられたようです。
歯科界では、『昨日の常識が今日の非常識』ということが時に生じるので、「歯科医師という職業は、継続した研鑽が必要だなあ。」と今更ながらに感じました。