サージカルガイドの埋入誤差の最近のブログ記事
ガイドサージェリーの誤差は、距離で2ミリ以内、角度で8度以内。
・コンピュータ支援口腔インプラント外科の正確性:臨床的及びX線学的研究
(目的)
コンピュータ支援口腔インプラント外科治療は、従来法に比較して、いくつかの利点を有している。
本研究の目的は、三次元的な位置とインプラント埋入を比較することによってコンピュータ支援テンプレートを使用した口腔インプラント外科の正確性をin vivoで評価することである。
(材料および方法)
口腔インプラント治療が2施設が条件を満たした患者に対して、CTソフトウエァによる治療計画立案とCAD/CAMを用いて製造された光造形法によるテンプレートを使用して行われた。
2回目のスキャンは外科後に行われた。
術前および術後のCT像は比較され(計画と実際のインプラント埋入位置)、このタイプのイメージ誘導治療の正確性について評価した。
(結果)
25名の成人患者がこの後ろ向き研究に参加した;17名が施設1(部分欠損11名、無歯顎8名)、8名が施設2(部分欠損6名、無歯顎2名)であった。
コンピュータ支援法によって104本のインプラントが埋入された。
100本のインプラントに骨製癒着が認められた。
累積生存率は96%であった(平均フォローアップ期間は36か月)。
重大な外科的合併症はなかった。
正確性に関しては、89本のインプラントが比較に用いられた;インプラントのショルダー部と先端の平均側方偏位量はそれぞれ1.4ミリと1.6ミリであった。
平均深さ偏位量は1.1ミリ、平均角度偏位量は7.9度であった。
同じガイドで埋入されたインプラントの正確性に関して統計学的に有意な関連があった。
2施設間での正確性に関するデータに有意差はなかった。
学習曲線でも証明できなかった。
(結論)
25名の患者に対する臨床研究から、次の結論を得た。
(1)2施設で行われたコンピュータ支援口腔インプラント手術は、インプラント生存率に関して96%という高い可能性を示した。
(2)予定していたインプラント位置からの偏位はインプラントのショルダー部と先端部で認められ、インプラントの角度についても同様であった。
平均偏位量は距離で2ミリ以内であり、角度で8度以内であった。
(参考文献)
Valente F,et.al. Int Oral Maxillofac Implants 2009; 24 (2) :234-242.
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ガイドサージェリーでは、インプラント位置の偏位、インプラントの角度の誤差が認められ、平均偏位量は距離で2ミリ以内であり、角度で8度以内であったという結果でした。
個人的にはこの誤差は大きいと判断しているため、ガイドサージェリーの導入は見送っています。
またこの誤差を小さくしようとすると、骨火傷が生じるリスクが増大するなど他の問題を惹起するので、当面この誤差が小さくなることはないのではなかろうかと考えています。
サージカルガイドを用いた逆根管治療
・右上5・6にガイドサージェリーを行った症例
CBCT上で大臼歯近心根の上顎洞に近い病変内にガッタパーチャが溢出していた。
サージカルテンプレートの使用により、上顎洞粘膜を先行することなく 溢出物を除去できた。
(参考文献)
Strbac GD, et al. Guided morern endodontic surgery : a novel approach for guided osteotomy and root resection. J Endod. 2017 ; 43(3) : 496-501.
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CBCTデータを基にCAD/CAMで作製されたサージカルテンプレートを使用して、逆根管治療を行った研究報告です。
サージカルガイドといえば、インプラント埋入の際での使用が現在ブームですが、逆根管治療の際にサージカルガイドを使用することもできます。
歯肉剥離後に、トレフィンバーで根尖および周囲組織を一塊に除去し、逆根管治療を行うわけですから、従来法に慣れていない術者にとっては、楽に行うことができます。
しかしながら個人的には、それがなくてもできるものは、基本的にはいらないのでは?と考えています。
この分野に限ったものではありませんが、歯科は周囲の企業に"いいお客さん"にされているような気がしてなりません。
ガイデッドサージェーリーは、スウェーデンのガイドラインには入っていない。
・スウェーデンの保険福祉庁が良好な口腔内環境を保つことも目的とした国家プロジェクトととして、大学人をはじめとしたエキスパートを集めて作成します。
各種診断に対して、6つの項目(1. 推奨度の正当性、2. 病変の深刻度、3. 論文、4. 治療効果、5. 治療の副作用・欠点、6. 費用対効果)をもとに決められた推奨度が記載されています。
推奨度は1から10まであり、1に近づけば近づくほど信頼できる治療となります。
・近年、日本ではガイデッドサージェーリーが頻繁に使用されるようになってきていますが、スウェーデンのガイドラインには入っていません。
当初、ガイデッドサージェーリーはインプラントの経験が少ない歯科医院の手助けをするツールとしての概念が強かったのですが、データを集め始めると、慣れている歯科医師が行っても様々な問題が見えてきました。
現在はシステムも大きく改善されましたが、現時点でガイドラインに載っていないということは、そこまで有益だというエビデンスがそろっていないのかもしれません。
もし、有益であると認められれば、ガイドラインの中に入ってくると思います。
・De Bruynらのガイデッドサージェリーの誤差を調べた論文では、先端部で数ミリの誤差があると示されています。
また、注水の問題などもあるのに、どのような症例でもガイデッドサージェリーが第一選択になるというのは、あまり納得がいかないところもあります。
自分の臨床では、よほどシビアなケースでなければ使用していません。
(クインテッセンス・デンタル・インプラントロジー 2018年 vol.25 )
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インプラントの最先端治療、ガイデッドサージェリーは一定の評価ができます。
しかしながら、小宮山氏がよく仰っている「航空士(ナビゲーター)の意見を鵜呑みする操縦士はいない。最終的な決定は操縦士にゆだねられる。」ということをインプラントで考えると、CT像を見てプランニングしたのちに、フラップを開けて実際の骨の状態を見てから再度一番良い条件の部位を見極めて埋入するという従来の方法の方が、ガイデッドサージェリーやフラップレスなどよりも確実性が高いと個人的には考えています。
インプラント支持型のサージカルガイドによるインプラント埋入の角度の誤差は8.44度。
・2009年にSchneiderらがまとめたシステマティックレビューによると骨支持型、粘膜支持型、歯牙支持型、インプラント支持型で誤差を比較したところ、骨支持型が最も誤差が大きく、歯牙支持型が最も誤差が少なかったことが報告されている。
インプラント支持型の誤差が比較的大きいのは、無歯顎患者が対象となるケースが多いことが原因していると考えられた。
・各種サージカルガイドタイプ別の誤差
骨支持 粘膜支持 歯牙支持 インプラント支持
起始点の誤差 1.35ミリ 1.06ミリ 0.84ミリ 0.83ミリ
先端部の誤差 2.06ミリ 1.60ミリ 1.20ミリ 2.17ミリ
角度誤差 6.39度 4.51度 2.82度 8.44度
(参考文献)
Schneider D, Marquardt P, Zwahlen M, Jung RE. A systematic review on the accuracy and the clinical outcome of computer-guided template-based implant dentistry. Clin Oral Implants Res 2009; 20 Suppl 4 :73-86.
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サージカルガイドは、コンピュータや模型上で、使用するインプラントの径や長さ、埋入する方向などを予め決定し、どの方向にどのくらいドリリングするかの目安にできる装置です。
このサージカルガイドは、一見、術者も患者さんも楽に治療が行えるようにも思いますが、いくつかの欠点があります。
問題点として挙げられるのは、誤差が大きくならないように、スリーブとドリルの内径差を小さくするとドリリング時の冷却が困難となり、骨火傷が生じ、インプラントがインテグレーションしないこと。
さらに、サージカルガイド自体の高さがあるために、開口量が十分ではない方の最後方臼歯部では、サージカルガイドを使用できないことが挙げられます。
(最後方臼歯部にもサージカルガイド使用できるように、意図的に短いインプラント体を選択した方がよいのではなかろうか、という議論さえ上がっていますが、本末転倒です。)
また以下にサージカルガイドの個人的見解を記載します。
・歯牙支持タイプの誤差は比較的小さいものですが、中間欠損におけるインプラント埋入の場合、そもそもサージカルガイドが必要がない。
・サージカルガイドを使用した方がインプラント手術を比較的容易に行うことができる可能性がある無歯顎者へのインプラント支持タイプでは、サージカルガイドの角度の誤差が大きい。
・歯槽骨量が十分ではない方が多い日本人で、8.44度もの誤差を容認できる患者さんがどれほどいるのか?と思います。
サージカルガイドも、メーカー主導で、いかにも最先端技術のように謳っていますが、何十年も使用する予定のインプラントで、インプラント埋入の手術時間を少しばかり短縮する意味はそれほど多くはないように感じます。
やはりここでも、『最新は最善とは限らない。』ということになります。
外科用テンプレートの精度はいまだ懸案されている。
・外科用テンプレートは画像上での治療計画を正確に外科手技に反映させることを可能にします。
しかし、その精度に関してはいまだ懸案されています。
・近年では、シュミュレーションソフト上でインプラントの位置情報を取り込んだCAD/CAMによる外科用テンプレートの利用も、臨床では行われ始めています。
利点としては、技工操作がなくなる、フラップレスの埋入にも対応できるなどが挙げられますが、反面、精度や合併症の問題はいまだ十分な検証がなされていません。
現時点での使用に際しては十分な注意が必要です。
(参考文献)
Jung RE,et al: Computer technology applications in surgical implant dentistry: a systematic review. Int J Oral Maxillofac Implants 24 Suppl:92-109,2009,Review.
Hammerle CH, et al: Consensus statements and recommended clinical procedures regarding computer-assisted implant dentistry. Int J Oral Maxillofac Implants24 Suppl: 126-131, 2009,PubMed PMID: 19885440.
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外科用テンプレートの精度が、現在は疑問視されているというエビデンスです。
また、精度に問題があるだけでなく、外科用テンプレートを装着した状態でのドリリングは、冷却が不足するリスクがあり、骨壊死を生じるリスクがあります。
外科用テンプレートがドリリング時の冷却を阻害するからです。
外科用テンプレートを用いた場合の精度誤差
外科用テンプレートを用いた場合の精度については埋入位置の誤差の平均は開始点1.26ミリ、根尖側1.97ミリ、角度の誤差5.42度と報告されている。
また術中の合併症やインシデントの発生率は4.6%と報告されている。
(参考文献)
CID黒江敏史 2009 Review (3論文の平均 :Ozan,2009.Ruppin,2008. Di Giacomo,2005.)
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外科用テンプレートを固定し、実際のインプラント埋入を行う際には、通常麻酔が必要となります。
粘膜に麻酔を行うと、その部分が膨らむので、その時点で外科用テンプレートは浮き上がることになります。
麻酔時の粘膜の膨らみの程度と粘膜の状態の回復時間は、その方の粘膜の厚み等によりまちまちであるために、具体的に何分時間をおけば十分なのかについてはまだ明らかになっておりません。
また時間をおくと当然のことながら、麻酔が醒めてきますから、長時間おけばよいというものではありません。
難しい問題です。
フラップレス・サージェリーは、最先端医療なのか。
・フラップレスサージェリーを積極的に取り入れている歯科医師は、痛みも少なく、出血も少ないのだから、「誰よりも患者本人のためになっているではないか」というかもしれない。
確かに、CTを用いて三次元的な顎骨形態を充分に把握したうえで、将来の口腔内、全身的な状態の変化を考慮したうえで、治療計画の立場に基づいて実施されるならば、フラップレス・サージェリーでも問題ない症例はあると思われる。
しかしながら、流行だから、先進的だから、あるいは患者獲得に有利だから、といった不純な思いが先に立ち、現実にはインプラントが骨内に収まっていない、頬側に大きく露出している、あるいは骨面への埋入深さが不適切といった症例がみられるのも事実だ。
そもそも、インプラントの手術によって痛みなどの症状が続くのは、せいぜい2-3日程度のことで、インプラント埋入手術後、患者の7割は帰宅後に鎮痛剤を追加服用していないというデータもある。
そのわずか2-3日の問題を回避するために、不動粘膜を無視してフラップレス・サージェリーを行うことで、場合によっては患者の苦しみは一生続く。
どちらに重きを置くべきか、医療の本質を考えれば、おのずと答えは出ているといえるだろう。
(埋み火 小宮山弥太郎 より)
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私も小宮山先生の考えに同感です。
近年、フラップレス・サージェーリー、ガイド・サージェリーが最先端インプラント治療のように謳っている歯科医師もいますが、得られるものを考えれば、従来のインプラント手術で十分ではないかと考えています。
インプラント手術は、「何となく、怖い。」あるいは「痛いのでは?」と考えている患者さんも少なくありませんが、実際は、臭いや味の不快感のある下顎の親知らずの抜歯の方が痛みや腫れが大きいことの方が多いです。
外科用テンプレートの設計のリスク
サージカルガイドの設計
ケースにより治療計画を正確に外科手技に反映させたいときはソフトウエア上でサージカルガイド(外科用テンプレート)を設計する。
しかし、アーチファクトやドリルシリンダーの高さ制限または患者の開口量などの問題点が多く存在することがあり、注意が必要である。
(参考文献)
Rosenfeld A, et al: Use of prosthesis-generated computed tomographic information for diagnostic and surgical treatment planning.J Esthet Dent10(3): 132-148,1998.
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サージカルガイド(外科用テンプレート)を口腔内に装着した状態でCT撮影したデータが必要であるために、どうしても画像データはアーチファクトを含むものとなり、読影が相対的に困難になります。
また、外科用テンプレートを使用する時点で、ドリルシリンダーの高さの分、長いドリルを使用する必要が あるために、開口量が少ない患者さんでは、外科用テンプレートを途中から外して、フリーハンドでドリリングする必要が出てきます。
(歯を失っている人は、口を大きく開いているのに、術者には開口量が不足していると感じる、いわゆる"骨格が悪い患者さん"が多いので、ドリルシリンダーの高さの分さらに長いドリルを使用することが、事実上無理という場合もあります。)
そうなると、インプラント手術前に用意してあったプロビジョナルを改造しないと入らない場合もあり、実際には頭で考えていたものより手術が難航するリスクがあります。
テンプレートを用いたコンピュータガイドインプラント治療の精度
・テンプレートを用いたコンピュータガイドインプラント治療の精度および臨床結果のシステマティックレビュー
テンプレートを用いたコンピュータガイドインプラント治療の精度および臨床応用に関する文献を本システマティックレビューの目的とした。
メタ解析分析で示された平均差が起始点および根尖部でそれぞれ1.07ミリ(95%Cl : 0.76-1.22ミリ)と1.63ミリ(95%Cl : 1.26-2ミリ)だった。
テンプレートの製法とテンプレートの支持および安定性に関して各研究の間に有意差は認められなかった。
症例中の早期の外科的合併症の発症率はフラップレスでインプラント埋入後、おもに即時荷重で行われた537本のインプラントの12-60か月間の生存率は91-100%であった。
テンプレートを用いたコンピュータガイドインプラント埋入は91-100%ほどの高いインプラント生存率を示した。
しかしながら、多数の技術に関連する術中の合併症が観察された。
妥当な平均精度が臨床前および臨床研究で示されたが最大偏差は比較的大きかった。
より長期な経過観察を含む臨床研究を増やし、術中の操作性、精度および補綴的な合併症などの観点からシステムを改善する必要がある。
(参考文献)
A systematic review on the accuracy and the clinical outcome of computer-guided template-based implant dentistry. Schneider D, Marquardt P, Zwahlen M, Jung RE. Clin Oral Implants Res 2009 ; 20 Suppl 4 : 73-86.
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テンプレートを用いたコンピュータガイドインプラント埋入は91-100%ほどの高いインプラント生存率を示しましたが、やはり気になるのが、多数の術中の合併症です。
精度のばらつきが大きいのも気になります。
同じく『テンプレートを用いたコンピュータガイドインプラント埋入』とは言っても、中間欠損における歯牙支持タイプなのか、総義歯に近い欠損様式における粘膜支持かによっても、精度のばらつきの程度は異なることでしょう。
また、『テンプレートを用いたコンピュータガイドインプラント埋入』があると助かるケースは、総義歯に近い症例に対して、傾斜埋入を積極的に行う治療計画を"是"とする場合ともいえるかもしれません。
個人的には、フラットな咬合平面に対して、垂直にインプラントを設置していく(垂直埋入)方が、メンテナンスを考えても妥当と考えているので、傾斜埋入もガイドサージェーリーも今のところ行っていません。
(傾斜埋入をしないということは、オールオンフォーも私の主義主張には合わないために、当院では行わないということです。)
光造形サージカルガイドの埋入誤差
・インプラント埋入用の光造形サージカルガイドの臨床応用
計画時とインプラント埋入後の埋入軸の差は平均7.25度±2.67度で、埋入位置の差はインプラントショルダー部で平均1.45±1.42ミリ、インプラント根尖部で平均2.99±1.77ミリだった。
すべての患者において、インプラント頂部に比べて、根尖部の方により大きな差が認められた。
臨床的なデータからインプラント埋入時のコンピュータ支援ラピッドプロトタイピング法のサージカルガイドの有用性が示唆された。
しかしながら、片側骨支持型や非歯牙支持型のガイドを用いる際には、手術時のより高い安定性を提供するために本技術の更なる発展が必要である。
インプラント治療に対する光造形サージカルガイドの本当の効果を究明するために、より多数の患者を対象にしたさらなる研究が必要である。
(参考文献)
Clinical applaication of sterolithographic surgical guides for implant placement : Preliminary results DI Giacomo GA, Cury PR, de Araujo NS, Sendyk WR, Sendyk CL. P Periodontol 2005 ; 76(4) : 503-507.
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計画時とインプラント埋入後の埋入軸の差は平均7.25度±2.67度で、埋入位置の差はインプラント根尖部で平均2.99±1.77ミリだったとのことです。
このデータを見る限り、個人的には光造形サージカルガイドは危険なものに感じられなりませんが、この分野の技術は日進月歩です。
今後使いやすいものになるのか、注目したいです。