最新ファイルシステム ReciprocとBioRaCeの比較

・楕円形根管に反復回転運動システム (Reciproc)と、回転運動システム(BioRaCe)のNi-Ti製ファイルを使用した根管拡大形成のエックス線マイクロCTによる評価
(結果)
術前根管の体積は、すべての測定部位で統計学的有意差は認められなかった。
拡大形成後ではすべての計側部位で根管体積の増加を認め、Reciproc群の根管体積の増加量はBioRaCe群と比較して有意に高かった。
一方、体積増加率も Reciproc群は、 BioRaCe群と比較して根尖側1/3で有意に高かった。
拡大形成後のファイル非接触面積と非接触面積率は、根管全体、歯冠側1/3および中央1/3で有意に Reciproc群は BioRaCe群より高かったが、根尖側1/3では有意に低かった。
(結論)
楕円形根管をシングルファイルシステムのReciprocおよびマルチプルファイルシステムのBioRaCeで根管拡大形成した場合、ともに根管全体を完全に切削することは困難であった。
Reciprocは、BioRaCeと比較して、根尖側1/3での拡大形成能は有意に高く、ファイルの非接触面積も有意に低かったが、根管全体、歯冠側1/3および中央部1/3でのファイルの非接触面積は有意に高かった。
これは Reciprocのもつ高い切削効率とファイル先端部のテーパーの違いに起因するものと考えられる。
(参考文献)
Busquim S, Cunha R.S, Freire L, Gavini G, Machado M.E, Santos M. A micro-computed tomography evaluation of long-oval canal preparation using reciprocating or rotary systems. Int Endod J 2015 ; 48(10) :1001-1006.
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最新のファイルシステムを使用しても、根管の多くが楕円形態をしている以上、根管全体を切削することはできないことが明らかになりました。
これはすなわち、根管拡大を確実にはできない以上、化学的根管洗浄の重要性がますます高まることになります。
また、『Reciproc群の根管体積の増加量・体積増加率はBioRaCe群と比較して有意に高かった。』、『拡大形成後のファイル非接触面積と非接触面積率は、根管全体、歯冠側1/3および中央1/3で有意に Reciproc群は BioRaCe群より高かった。』ことより、Reciproc群は根管壁をより多く切削するけれど、ファイルが接触していない部分はBioRaCe群よりも多いということが判ります。
さらに、『拡大形成後のファイル非接触面積と非接触面積率は、 根尖側1/3ではReciproc群は BioRaCe群より有意に低かった。』ことより、根尖側1/3ではReciproc群は比較的くまなく根管壁を切削しているということになります。
Reciprocを販売するメーカーは、『根尖1/3付近をしっかり根管拡大していれば良い。』と考えていると推測されますが、根管の体積の増加量は大きいのに、拡大後に根管壁とファイルが接触していない面積は大きいのでは、無駄により多くの根管壁を切削しているのは、Reciprocではなかろうかと考えてしまいます。
そしてもう一つは、根管上部と根尖近くでは、バクテリアの数は根管上部の方が多いと考えられますから、より吟味して拡大するべき部位は根尖付近ではないといえます。
また、根尖付近を拡大しすぎることで、根管充填時のオーバーフィリングのリスクも増大することでしょう。
こうして考えてみると、やはりReciprocは聞いていたほど良くはない様な気がしてきます。

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