ブラッシングのみでは口腔内細菌が約75%も残る!

・確かにプラークの付着部位は歯の周囲で、歯肉縁上と縁下にプラークが付着する。
しかし、口腔内細菌は歯や歯肉周囲のみに棲息しているわけではない。
細菌コロニーの分布をみると、唾液、舌や粘膜、付着歯肉にかなり付着しており、相対的な濃度でみると、これらの部位の総和は歯肉縁上・縁下よりも多く、口腔内全体が細菌の貯蔵庫となっていることが分かる。ブラッシングのみでは口腔内細菌が約75%も残るといわれ、唾液の自浄作用を期待したといっても、これらの部位の清掃を忘れているといっても過言ではない。
(日本歯科評論 2016年8月号 )
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この文献では、歯周病原因菌としてP.g菌とA.a菌に着目し、口腔内の様々な部位で、その細菌数を比較しています。
その結果、プラーク、唾液、舌、粘膜、歯肉のすべてにこれらの細菌は存在していることが明らかになりました。
また、確かに細菌は歯にも付着しているわけですが、歯に付着している細菌数よりも、唾液・舌・粘膜・歯肉に付着している細菌数の方がはるかに多いことも明らかになりました。
これまで歯磨き時のプラークの取り残しが、歯科での虫歯や歯周病などの問題を惹起すると考えられてきましたが、仮に歯に付着したプラークを完全に除去しても、それ以外の部分から細菌が歯に再度付着し、繁殖し始めたのなら、歯磨き前の状態に戻ります。
このような背景があるために、寝る前に歯磨きをきちんとしたにもかかわらず、起床時の口腔内の細菌数は一日のうちで最大となるのです。
起床時の口腔内細菌数は、大便10gの細菌数に匹敵するという話があるくらいです。
また、個人的な見解にはなりますが、口腔内の歯以外の部分の細菌もブラッシングで除去することも、ある程度意味はあるかと思いますが、それよりも歯に付着したバイオフィルムが厚みを増して、細菌の出す毒素が強力になる前に、バイオフィルムの除去を行う方が合理的ではなかろうかと考えています。

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