実は、デュアルキュア型レジンセメントに備わっている化学重合能はそれほど高いものではない?!

・コンポジット系レジンセメントの多くは、デュアルキュア型の重合方式を採用している。
デュアルキュア型レジンセメントでは、表層部は装着直後から高い物性が求められるため、光重合によって速やかに重合反応が進行し、深部の光の到達が困難な部分は化学重合が補償される。
しかし、実際にはデュアルキュア型レジンセメントに備わっている化学重合能はそれほど高いものではなく、光照射を行わない場合は十分に硬化しないことが分かっている。
CAD/CAM修復物はセメントの物性が臨床成績に大きく影響を及ぼすため、使用するレジンセメントが十分な硬化していることは極めて重要となる。
したがって、デュアルキュア型レジンセメントを使用する場合には、適切な光照射条件を設定する必要がある。
(参考文献)
渡部平馬ほか,各種デュアルキュア型レジンセメントの長石系マシナーブルセラミック介在下における硬化度の検討. 日歯保存誌. 2013 ; 56(3) : 223-230.
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歯科セメントは、古くから化学重合が主流でした。
そんな中、科学技術の進歩により、次第に歯科セメントも封鎖性が高く、過大な咬合力がかかっても破壊されない硬いものと変化してきました。
ところが、セメントの物性は高まったけれど、セメントの取り残しによる歯周組織への為害性が問題となりました。
一方、セメントの硬化時間が長いというのも化学重合型セメントの問題点でした。
そこで、『セメントを楽に早く取り除きたい!』という歯科臨床家の願いをかなえたのが、デュアルキュア型レジンセメントでした。
本来このセメントは、修復物周囲は光重合で手早く硬化させ、光が届かない部分は、化学重合で硬化させるというコンセプトの商品でした。
しかしながら、今回紹介する文献では、このデュアルキュア型のレジンセメントの化学重合能が低いことが明らかになりました。
これはすなわち、メーカーが添付しているマニュアル通りにセメントを使用すると、内部の光の当たらない領域は硬化が不十分であるために、歯科臨床家が期待した効果が期待できないということになります。
メーカー同士も競争が激化しているため、"早く簡単に"が合言葉になっており、自社商品に都合の良いデータを添付するケースも少なくありません。
患者さんが損をしないように、メーカーからの情報も「本当だろうか?」という視点を持ちつつ、私たちは歯科診療を日々行わなければなりません。
色々な意味で、新商品に飛びつくことはリスクであると言わざるを得ませんね。 
  

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