歯根破折による歯髄炎
・歯根破折の発生部位に関する報告として、Sugiyaらは302ケースについて報告している。
歯頸部から30.9%、根中央部は1.6%、根尖部が32.2%、不明が35.1%であった。
この報告から約半数は根尖からの発症であることが考えられる。
症状が発症しても破折線が小さいうちは、炎症やX線像が一時的には治癒することが考えられる。
さらに破折が進行した際に再発してくるのではなかろうか。
つまり、根尖性歯周組織炎と診断したケースの中に垂直性歯根破折が少なからず含まれており、逆もまた然りであると考えられる。
本調査では、抜髄からの年数に関係なく50歳以降は症状が発現するケースが多くなっており、同様の傾向が横浜歯科臨床座談会の報告でも見られた。
このことは、歯の硬組織そのものの寿命は50年程度であることを示しているものと思われる。
また、抜髄せざるを得なかったケースの中には、破折から歯髄炎に至ったものもあるのではないだろうか。
(歯界展望 2016年6月号 )
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歯根破折の約半数が根尖からの発症であることが明らかになりました。
そうなると、いくらマイクロスコープで歯の内部を詳細に眺めたとしても、歯根の湾曲程度が大きければ、根尖由来の初期の垂直性歯根破折の確定診断は困難であると言わざるを得ません。
また、『根尖性歯周組織炎と診断したケースの中に垂直性歯根破折が少なからず含まれており、逆もまた然りであると考えられる。』ということからも、より確実な診断をするために、プラスアルファの診査が今後必要になると考えられます。
さらに、『抜髄からの年数に関係なく50歳以降は症状が発現するケースが多くなっており、歯の硬組織そのものの寿命は50年程度であることを示しているものと考えられる。』というのも非常に興味深いと考えています。
現代人の歯は、力が原因して歯が破壊されているものがあること、そしてその対処法はまだ確実ではないと言わざるを得ません。