ポストの長さそのものが、歯根破折の要因ではない。

・垂直破折した歯根の歯根長に対するポスト長の比を、デンタルX線で計測した結果、歯頸部破折ではポスト長の比が2/10-4/10が最も多かったが、根尖部破折は髄腔のみにコアがあってポストがない歯が最も多く、ポストが長くなるにしたがって垂直破折症例数は減少した。
この結果から、根尖部破折のリスクはポストが長いと低下する可能性が示唆された。
ポストが長くなると歯根破折のリスクが高くなるという印象が一部にあるようだが、ポストを長くするために歯質の切削量が多くなること、あるいはポストが長くなるとポストホール先端部まで乾燥や歯面処理が不確実になって接着不良が起こりやすくなることが問題で、ポストの長さそのものが要因ではないと考えられる。
以上のことから、根尖からの破折に対しては、ポストを根尖部まで接着することが有効な対策と考えている。
(補綴装置及び歯の延命のための最新治療指針 )
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これまで歯根破折はメタルコア、特に太くて長い金属製のメタルコアが原因であるかのように、様々な書籍等では散見されましたが、ポストの長さそのものが歯根破折の要因ではないことが分かりました。
根尖からの破折は、歯質の切削量が多くならないようにすること、ポストを根尖部まできっちり接着すること、ある程度ポストの長さを長めにすること等により対策できる可能性があります。
一つ目の歯質の切削量については、レジンコアよりもメタルコアの方が多い傾向にあると思います。
二つ目の接着については、間接法によるセメンティングの方が無難でしょう。
以前紹介した記事の中に、『デュアルキュア型レジンの硬化時間は、マニュアル通りに行うと硬化が不十分であることが多い。』というものがありました。
これは、一見簡単にできるように見えるものの中には、落とし穴があることの一例ではないでしょうか。
そして三つ目のポストの長さについては、学生時代にメタルポストの適正な長さは根長の2/3程度と習ったと記憶しているのですが、今回の研究報告でも、ポストの長さが6/10以上の場合がもっとも良い結果が出ています。
また有意差の有無まではわかりませんが、歯髄未処置の群と6/10の群とで、歯頸部破折と根尖部破折・完全破折の全てで、ほぼ同等の結果がでています。
このデータを元に考えると、『神経を取ったから歯が弱くなったというのは間違いである。』といっても過言ではないように感じます。

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