支台築造の種類による根管処置歯の破壊抵抗性
・接着性材料で支台築造した根管処置歯の静的圧縮負荷に対する破壊抵抗性
ファイバーポスト 既製金属ポスト 鋳造金属ポスト 生活形成歯
歯軸方向90°負荷 453±98 472±114 922±159 347±38
斜方向135°負荷 304±92 175±32 289±53 347±90
破壊荷重
Mean±SD(kgf)
・斜方向の負荷に対して金属ポストで築造した失活歯は歯根破折をきたしながら破壊するのに対して、ファイバーポストで築造した歯は歯頸部から接着が崩壊し、ポストが脱離する様相を呈した。
(参考文献)
Hayashi M, Takahashi Y, Imazato S : Fracture resistance of pulpless teeth restored with post-cores and crowns. Dent Mater, 22 : 477-485,2006.
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今回の報告で意外だったのは、歯軸方向から負荷を受けた『鋳造金属ポストにより支台築造した根管処置歯』の破壊抵抗性が非常に高いにもかかわらず、斜め方向からの負荷であると、大幅に破壊抵抗性が低下すること。
もう一つは、『ファイバーポストにより支台築造した根管治療歯』の破壊抵抗性は斜め方向からの負荷でも、垂直方向からの負荷に比べて、30-40%程度しか破壊抵抗性が減弱しないことです。
これらのデータにより、咬合平面にほぼ垂直に萌出している歯牙に、支台築造後、補綴するのであれば、鋳造金属ポストが最も強度的に安心といえます。
一方、顎骨の不調和や歯列不正の程度が顕著な方に補綴処置をするケースで、歯根と歯冠の方向を大きく変化させて補綴をする場合は、鋳造金属ポストではなく、ファイバーポストを選択する方が無難であるといえるでしょう。
ただし、ファイバーポストによる支台築造の場合は、歯根破折よりも、接着が破壊されて、ポストごと脱離するケースが多いので、再度接着して歯牙を延命するということになります。
こうして考えると、近年歯根破折で歯牙を失っている方が多いのは、鋳造金属ポストそのものが悪いのではなく、歯根と方向が大きく食い違う補綴物を入れなくてならなくなっている状態に問題があるように感じます。