レジンタグがあるにも関わらず、細菌が象牙細管内に侵入。

・ハイブリットレイヤーとレジンタグの形成は接着を保障するものだと言われてきた。
しかし、一般的に接着力は経年的に劣化するものである。
この微細構造の足場の最大の弱点は、ハイブリットレイヤー上面あるいは下面のようである。
しかしながら、この部位での接着が失敗しても、レジンタグと象牙細管の強い結合により、十分な封鎖性が得られていると考える人もいる。
つまり、レジンと象牙質の接着の強さに加えて、もっとも重要な機能は、レジンタグが細管開口部を封鎖し、透過性と歯髄の炎症を最低限に抑えるというものである。
・レジンと象牙質の接着の強さに加えて、もっとも重要な機能は、レジンタグが細管開口部を封鎖し、透過性と歯髄の炎症を最低限に抑えるというものである。
光学顕微鏡による観察から得られたことは、これらの提示を否定するものであった。
ハイブリットレイヤーとレジンタグはその存在にも関わらず、象牙細管への細菌侵入を予防することができていないことを示している。
薄いハイブリットレイヤーと、その上に形成されているボンディングレジン由来の非結晶の上に、細菌バイオフィルムの本質的な問題は、ハイブリットレイヤー/コンポジットレジンの界面にあるように思われる。
連続切片の分析から、同一窩洞内でもハイブリットレイヤーが認められる部位もあれば、完全にハイブリットレイヤーの形成が存在しない部位も認められた。
このことから、ハイブリットレイヤーの形成がいかに予測不可能であるかが分かる。
結論として、ハイブリットレイヤーの形成は術者によってコントロール不可能な要因に依存しており、どの症例においても安定した修復が達成できるとは限らないと思われる。
・Ricucciらは裏装材を塗布した後にコンポジットレジンを充填した場合の歯髄の組織学的、細菌学的状態に関するin vivoの研究を行った。
一つの症例では水酸化カルシウム含有裏装材を塗布した後、グラスアイオノマーセメントを充填した。
二つ目の症例には、象牙質に直接グラスアイオノマーセメントを充填した。
もう一つの症例では、リン酸亜鉛セメントを充填した。
標本数は限られているものの、グラスアイオノマーセメントを象牙質へ塗布することによって、細菌漏洩による細菌コロニー形成が阻止されると彼らは結論づけた。
対象歯は臨床症状を呈することなく、1年10か月後抜歯された。
臨床的には修復の状態は極めて良好であった。
しかし、組織学検査ではマージン部に多量の細菌コロニーの形成が認められ、細菌コロニーは象牙細管先端部に顕著であった。
しかしながら、細菌は歯髄側の窩壁にはまったく存在していなかったし、咬合面側の窩壁と歯頸部側の窩壁でもほとんど存在しなかった。
これらの部位はグラスアイオノマーセメントによって覆われていたことから、セメントが細菌の侵入に対して、予防的に働くことをこの所見は示唆している。
(リクッチのエンドドントロジ― )
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レジン充填に関しては、「レジンタグが細管開口部を封鎖し、透過性と歯髄の炎症を最低限に抑える。」と解釈している歯科医師は多いかと思います。
今回、Ricucciらの報告により、経年的に接着力は低下し、レジンタグがあるにも関わらず、細菌が象牙細管内に侵入することが明らかになりました。
(今回提示された窩洞は、全く健全で実験研究に供された歯に対して施されたものなので、細菌が窩洞内に元々いたのではなく、経年的に細菌が象牙細管内に侵入したものと考えられます。)
また、グラスアイオノマーセメントで裏装をしたうえでコンポジット充填をしたところ、歯髄側の窩壁には全く細菌が存在していなかったことも明らかになりました。
一世代上の歯科医師から、レジン充填について、以下のような話を聞いたことがあります。
『かつてのレジンには歯髄為害性があるために、レジン充填で歯髄炎が生じた。』とか、『裏装をしてからレジン充填を行うと、今ほど接着力が良くないために脱離した。』 といった発言です。
これは私が歯科医師になるよりも前のレジン充填に対する評価ですが、接着の技術は日進月歩で進化しているため、現在はレジンに歯髄為害性はほぼなくなり、接着力は右肩上がりに向上しているものと考えられます。
一方、現在は自由診療のレジン充填、ダイレクトボンディングも流行っていると聞きますが、歯髄側の窩底にわざわざ裏装材を敷いている歯科医師はあまり聞いたことがありません。
裏装を行った上でダイレクトボンディングを行うと、色調を再現しにくくなる可能性があります。
また、コンポジットレジンの象牙質へ接着はあまり良好なものではないとは聞きますが、グラスアイオノマーセメントよりはまだ接着するのではないでしょうか。
いずれの場合も大方、エナメル質に対して接着しているのであれば、接着力はあまり変わらないかもしれません。
個人的には、接着はそれほど自分の得意分野というわけではないので、継続して研鑽を続けていきたいと考えています。

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