歯根破折予防のためにも、まずは確実な歯頸部修復を!
歯頸部修復の臨床成績:メタアナリシス
目的:コンポジットレジンとグラスアイオノマーを用いた歯頸部の脱落と辺縁着色に影響を与える要因を評価するために、メタアナリシシスを実施した。
方法:観察期間がすくなくても18か月の歯頸部修復についての臨床試験を抽出した。
結果:接着システム40種を含む50臨床試験が包括基準と一致した。
平均して歯頸部修復の10%が脱離し、24%は3年後に辺縁着色を示した。
ばらつきは、脱離に対しては0-50%、辺縁着色については0-74%の範囲であった。
二次齲蝕はほとんど見られなかった。
研究および実験の影響を加味した線形混合モデルを使用した場合、接着剤/修復材料の種類が最も重要な影響を及ぼし、2ステップセルフエッチ接着システムが最も高い性能を示し、1ステップセルフエッチ接着システムが最も低い性能であった。
3ステップエッチアンドリンスシステム、グラスアイオノマー/レジンモディファイドグラスアイオノマー、2ステップエッチアンドリンスシステム、コンポマーはその間の性能であった。
象牙質/エナメル質が切削/粗面化された修復は、未処理歯質の修復よりも統計学的に有意に高い保持率を示した(p<0.05)。
エナメル質のべベルおよび防湿の種類(ラバーダム/ロールコットン)は有意な影響を及ぼさなかった。
結論:歯頸部修復の臨床成績は、使用される接着システムの種類および/またはそのシステムが採用している接着材、象牙質/エナメル質形成の有無によって有意な影響を受ける。
1ステップセルフエッチシステムおよびグラスアイオノマーよりも2ステップセルフエッチおよび3ステップエッチアンドリンスシステムを選択するべきである。
象牙質およびエナメル質表面は、修復前に粗面化するべきであろう。
(参考文献)
Heintze SD, et al. Dent Mater 2010;(10):993-1000.
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高齢者の歯牙を失うきっかけの一つになるのが、歯頸部からの歯冠破折・歯根破折かと思います。
とはいっても、いきなり歯根破折を起こすわけではありません。
最初は、若干の歯根露出あるいは歯頸部のエナメル質の破折による知覚過敏から始まります。
次に、神経に近い部位まで楔状に歯牙が歯頸部からえぐれていきます。
このステージでは、必ずしも知覚過敏がないケースも少なくありません。
さらにその先のステージでは、根面齲蝕が問題となってきます。
通常の歯冠部の齲蝕では、仮にう蝕ができても、齲蝕と神経との間に距離があることが多いので問題は深刻ではありません。
一方、根面齲蝕では、齲蝕ができた場合、神経からの距離が近いために、容易に根管内まで感染します。
また、齲蝕部分を除去してレジン充填を行っても、レジンが脱離しやすいのが一つ目の問題点です。
そしてもう一つの問題点は、充填したレジンが脱離した場合、歯牙の深い部位から再度齲蝕が進行するために、トータルの齲蝕の大きさはかなりのものとなります。
こうして考えると、根面齲蝕を進行させないように予防処置を行うことはもちろんですが、いかに脱離しないようなレジン充填を行うかということと、どの時点で補綴治療に切り替えるかという勘どころが重要になってくるように考えています。
根面齲蝕からの歯根破折→インプラントの流れを断つためには、今回紹介したような歯頸部の修復処置をいかに確実に行うかということが大切になってきます。
そのための具体的対応としては、2ステップセルフエッチおよび3ステップエッチアンドリンスシステムを選択するだけでなく、象牙質およびエナメル質表面は、修復前に粗面化するべきだという結論になっています。
1ステップセルフエッチシステムは、他のものよりも接着力が劣るとする論文は少なくないのですが、なぜかメーカーが添付してくるデータでは、『1ステップは2ステップに劣らない。』という結論になっていることが多いのが気になります。
歯科学は材料とともに進化していますが、メーカーに振り回されないように前進したいものです。