日本人の侵襲性歯周炎の原因菌は慢性歯周炎の原因と同じ。

・非常に毒性の強い遺伝子型(クローン)のA.a.菌は、限局性侵襲性歯周炎の8歳男児から検出され、A.a.菌JP2クローンと名付けられた。
その研究で、JP2クローンの感染者は侵襲性歯周炎を発症している率が明らかに高いこと、また経年的にアタッチメントロスが増加することが報告され、JP2クローンこそが侵襲性歯周炎発症の原因菌と考えられました。
・実はJP2クローンはすべての地域には拡散していませんでした。
白人やアジア人が住む地域地域での検出は限られており、特にアジアにはアフリカを中心に行われた奴隷貿易によって世界に拡散したと推測されており、これがアジアに伝播しなかった理由と思われます。
つまり、アジアでの侵襲性歯周炎はJP2クローンによるものではないということです。
実際、日本におけるJP2クローンの検出報告はこれまでありません。
ちなみに、筆者もA.a.菌が検出された日本人800人のプラークを調べましたが、JP2クローンはまったく見つかりませんでした。
日本人における侵襲性歯周炎の細菌学的な特徴が、諸外国と違うことは明らかです。
・これまでに、国内の3つの研究機関(東京医科歯科大学、九州大学、東京歯科大学)から侵襲性歯周炎患者のプラーク細菌の報告がなされました。
いずれの報告でも侵襲性歯周炎患者からのA.a菌検出率は予想されたものよりもずいぶん低いものでした。
これでは、日本人の侵襲性歯周炎にA.a菌が関与しているとは言えません。
一方、代表的な歯周病菌でレッドコンプレックスと呼ばれるP.g.菌、T.forsythia菌、T.denticola菌の検出率は慢性歯周炎患者からの検出率に匹敵するものでした。
東京医科歯科大学によるデータでは、侵襲性歯周炎患者からのA.a菌の検出率は20%以下であるのに比べて、P.g.菌、T.f.菌、T.d.菌の検出率は広汎性慢性歯周炎と同等でした。
また、A.a.菌の量の増加と侵襲性歯周炎の進行状態にはまったく相関はありませんでした。
さらに、九州大学の報告では、P.g.菌の2型線毛をもつクローンが侵襲性歯周炎患者に多く検出されたそうです(このP.g.菌クローンは慢性歯周炎の悪化に関する菌です)。
ということは、日本人の侵襲性歯周炎の原因菌は慢性歯周炎の原因と同じということです。
(歯科衛生士 2017年1月号 )
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JP2クローンこそが侵襲性歯周炎発症の原因菌と考えられること、日本におけるJP2クローンの検出報告はこれまでないこと、日本人の侵襲性歯周炎の原因菌は慢性歯周炎の原因と同じということなどが明らかになりました。
日本人の侵襲性歯周炎に対しては、慢性歯周炎と原因が同じであるということは、慢性歯周炎への対処法と大きくは変わらなく、侵襲性歯周炎の効果的な治療も今のところないということになります。

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