虫歯菌で脳出血リスク14.4倍!
そのS.mutansには血清学的にc型、e型、f型、k型の4種類の菌のタイプがある。
この S.mutans の血清型を調べた研究では、口腔に存在する菌株の約70-80%が、c型であり、次いで約20%がe型、f型、k型は5%にも満たない頻度でしか存在しないことが分かっている。
しかしながら、口腔内にあまり存在しないはずのe型、f型、k型が、心疾患患者の心臓弁から高頻度で検出された。
また今回着目した S.mutans のf型やk型の多くは、Cnmというコラーゲン結合タンパクを菌体表層に発現し、前述した脳血管疾患の1つである脳出血の原因因子の1つとして注目されている。
健常者を対象とした筆者らの疫学的調査ではコラーゲン結合能を有するS.mutans株が、この脳出血の前駆症状である脳内微小出血のリスクを14.4倍高めるという驚くべき事実を発見した。
またコラーゲン結合能を有するS.mutans株の保菌者の脳内微小出血の発症率は62.8%であった。
さらにこのコラーゲン結合能を有するS.mutans株が認知機能低下にも影響を与えているということも明らかにした。
これは血管性認知症に関連する深部微小出血の発症に、コラーゲン結合能を有するS.mutans株が強く関連しているためだと説明している。
また現在では、このコラーゲン結合能を有するS.mutansが脳出血や感染性心内膜炎だけでなく、腸疾患、肝疾患、腎疾患など多種の全身疾患に関与していることが分かってきている。
(参考文献)
Miyatani F, Kuriyama N, Watanabe I, Nomura R, Nakano D, Ozaki E, Koyama T, Nishigaki M, Yamamoto T, Mizuno T, Tamura A, Akazawa K, Takada A, Takeda K, Yamada K, Nakagawa M, Ihara M, Kanamura N, Friedland RP, Watanabe Y. Relationship between Cnm-positive Streptococcus mutans and cerebrak microbleeds in humans. Oral Dis 2015 ; 21(7) : 886-893.
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虫歯菌として知られるS.mutansは、血清学的に4種類の菌のタイプがあるそうです。
その中のe型、f型、k型は、口腔内にあまり存在しないのに、心疾患患者の心臓弁には高頻度で検出されたそうです。
それでは、f型やk型にはどのような特徴があるのでしょうか。
f型やk型には、菌体表層に発現したCnmというコラーゲン結合タンパクが関係しており、Cnmがあると、脳出血のリスクを14.4倍高めることが明らかになりました。