口腔インプラント手術は高齢骨粗鬆症患者の顎骨壊死リスクといえるか?

口腔インプラント手術は高齢骨粗鬆症患者の顎骨壊死リスクといえるか?
-傾向スコアマッチング法を用いたコホート研究
(研究目的)
高齢の骨粗鬆症患者において、口腔インプラント手術が顎骨壊死発症リスク因子かをあきらかにすること。
(研究内容)
韓国・国民健康保険サービスのデータベースから、2014年7月から2016年7月の間に、骨粗鬆症を判別した70歳以上の患者を、インプラント治療群と非インプラント治療群に分けて抽出した。
癌またはパジェット病の既往がある患者は除外した。
それぞれの群を抜歯の有無で送別化し、4つの下位群に分けた。
その後、年齢、性別、医療保険、糖尿病、高血圧、関節リウマチ、BP製剤の処方を共変量として傾向スコアを算出し、各下位群が1:1の比率になるようにマッチングさせた。
2016年12月まで追跡し、顎骨壊死発症の有無を調査した。
顎骨壊死発症のリスク因子の検討には、上述の共変量に加えて、口腔インプラント手術、抜歯を説明変数としたCOX比例ハザードモデルを用いた。
(研究結果)
解析対象は44900名(男/女:8.7/91.3%、年齢70-79歳/80歳以上:87.8/12.2%)であった。
口腔インプラント手術は顎骨壊死発症リスクを有意に減じる因子(ハザード比〔HR〕:0.51, p、0.001)であり、抜歯は有意なリスク因子(HR:5.89, p、0.001)であった。
また、関節リウマチ(HR:6.80, p、0.001)とBP製剤の処方(HR:4.09, p、0.001)も有意なリスク因子といえた。
(結論)
韓国。国民健康保険サービスのデータベースを活用した本ビッグデータ解析の結果、恒例の骨粗鬆症患者において、口腔インプラント手術は顎骨壊死発症リスクを増すとは言えず、むしろ減ずると思われた。
一方、抜歯、関節リウマチおよびBP製剤の処方は顎骨壊死発症のリスク因子であることが明らかになった。
(参考文献)
Ryu JI, Kim HY, Kwon YD. Is implant surgery a risk factor for osteonecrosis of the jaw in older adult patients with osteoporosis ? A national cohort propensity score-matched study. Clin Oral Implants Res, 32(4) : 437-447, 2021. doi: 10.1111/cir.13713.
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一見、インプラント手術が顎骨壊死発症リスクを減じると読み違える可能性があるが、本研究でインプラント治療が施された患者は、専門家により顎骨壊死のリスクが低いと推定された集団であり、本追跡期間中では顎骨壊死を発症するに至らなかったと解するのが妥当であるものと考えられる。

2022年4月 1日

hori (08:04)

カテゴリ:インプラントと全身の健康

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