プロトンポンプ阻害薬(PPI)は、インプラントの喪失率が高い。
・プロトンポンプ阻害薬(PPI)は、胃からの胃酸分泌を抑制することで、逆流性食道炎や胃潰瘍のような胃酸に関連した疾患の治療において、胃の酸性度が低下すると、小腸での効果的なカルシウムの取り込みが阻害されることが証明されており、インプラントの高い喪失率との関連性が示唆されている。
カルシウムバランスは骨組織の健康にとって不可欠であるため、カルシウムバランスの不均衡はオッセオインテグレーションにある程度の影響を与えると信じられていることは妥当かもしれない。
・インプラントの失敗率は、PPI使用患者で12%(250本中30本)、PPI非使用患者で4.5%(33.9本中148本)だった(P<0.001)。
・PPI使用患者間ではブラキサーと降圧薬・抗うつ薬・抗血栓薬服用患者が有意に多かった。
性別、インプラントの直径、インプラントの表面性状、インプラントの埋入位置、過去の喫煙歴、骨造成術式、抗菌薬の予防投与、ビスフォスフォネート製剤の服用、免疫抑制薬、ならびにインプラントブランドと種類はPPIの使用の有無にかかわらず同じだった。
・2008年ごろ、PPIを長期にわたり使用すると骨粗鬆症による骨折リスクが増大することが、欧米の大規模臨床研究で報告されてきた。
・PPI服用と骨粗鬆症による骨折リスクを報告した論文では、5年以上PPIを使用すると股関節部骨折リスクが62%増大し、7年以上では4倍以上になることが報告されている。
(参考文献)
Intake of proton pump Inhibitors is associated with an increased risk of dental implant failure. Chrcanovic BR, Kisch J, Albrektsson T, Wennerberg A ; Int J Oral Maxillofac Implants 2017 ; 32(5) : 1097-1102.
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逆流性食道炎や胃潰瘍の治療として、PPIが使用される場合があります。
PPIの使用者に対して、インプラントを行った場合に、非使用者と比較して、その喪失率は有意に高いことが明らかになりました。
また、PPI使用患者間ではブラキサーと降圧薬・抗うつ薬・抗血栓薬服用患者におけるインプラント喪失が有意に多いという結果も得られたようです。
インプラントの治療に関しては、幅広い知識が必要であり、今後も研鑽を続けなくてはならないと感じました。