ニッケルチタン製ロータリーファイルの光と影
Topcuogluらの最新の論文によると、手用ステンレススティール製ファイル、ニッケルチタン製ロータリーファイルのいずれも根尖部に亀裂を発生する例が見られ、ニッケルチタン製ロータリーファイル群では、再治療による追加形成で亀裂の伸展が認められたという。
Liuらは手用ファイル(Flex Kファイル)とニッケルチタン製ロータリーファイル(K3、ProTaper)で異なった作業長による根管形成後に根尖に亀裂、象牙質の剥離の発生を比較した研究報告を行っている。
その結論は、
1.ニッケルチタン製ロータリーファイルの使用は手用ファイルより根尖部の象牙質を破壊し、欠損を引き起こしやすい。
2.作業長は、根尖孔の手前に設定して根管形成した方が象牙質の欠損を減少させる。
と述べている。
さらに、Liuらは、3つのニッケルチタン製のシングルファイルシステム、Reciproc、OneShape、SAF、およびロータリーファイルProTaperを使用した根管形成後の微小亀裂の発生数を比較した研究を行っており、ReciprocとSAFでの根管形成は、ProtaperとOneShapeに比べて亀裂の発生は有意に少なかったという。
(参考文献)
Topcuoglu HS, Duzgun S, Kesim B, Tuncay O : Incidense of apical crack initiation and propagation during the removal of root canal fillingmaterial with ProTaper and Mtwo rotary nickel-titanium retreatment instruments and hand files. J Endod, 40(7) : 1009-1012,2014.
Liu R, Kaiwar A, Shemesh H, Wesselink PR, Hou B, Wu MK : Incidense of apical rooot cracks and apical dentinal detachments after canal preparation lengths. J Endod, 39(1) : 129-134,2013.
Liu R, Hou BX, Wesselink PR, Wu MK, Shemesh H : The incidense of root microcracks caused by 3 different single-file systems versus the ProTaper System. J Endod, 39(8) : 1054-1056,2013.
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歯内療法に根管形成はなくてはならないものですが、その根管形成時に根尖部にマイクロクラックが入ることがあれば、その歯の予後は不良になります。
現在は、効率を重視するために、ニッケルチタン製ロータリーファイルが根管形成の"主役"のような印象があります。
しかしながら、今回紹介する研究論文では、ニッケルチタン製ロータリーファイルの方が歯内療法時に根尖部にマイクロクラックを発生しやすいということが明らかになりました。
もちろん、『作業長は、根尖孔の手前に設定して根管形成した方が象牙質の欠損を減少させる。』というのは、容易に想像できる内容です。
また、使用するシステムによっても、マイクロクラックの発生リスクが変化するようですから、ReciprocとSAFを選択するのもいいかもしれません。
ただし、この手の研究報告は、それぞれの業者が自分に都合の良いデータを出してくるのが常なので、もう少し慎重に使用するシステムを選択する必要があるといえます。
個人的には、効率が悪かろうとまだ手用ファイルを使用し、然るべきタイミングで、ニッケルチタン製ロータリーファイルに切り替えたいと考えています。
歯内療法をしっかりと行わず、インプラントを勧めることはあってはならないことですが、歯内療法をしっかりと行うことにより、逆にその歯の予後が悪くなる場合があること、マイクロクラックが発生しやすい歯種では、インプラントも視野に入れた治療計画を立案することが、これからは重要となるかと思います。