垂直性歯根破折を生じた歯内治療歯の評価

・垂直性歯根破折を生じた歯内治療歯の評価
上顎第二小臼歯(27.2%)と下顎大臼歯近心根(24%)は、もっとも破折を生じた歯であった。
これらの破折歯67.4%において、孤立した歯周ポケットが頬側に存在し、34.8%において、瘻孔は根尖部よりも歯肉炎付近で頻繁に出現した。
半数以上の症例で、根の側方のエックス線透過像を認めるか、あるいは根の側方と根尖部の両方にエックス線透過像を認めた。
一般開業医は、本調査の破折歯92%のうち1/3のみ、垂直性歯根破折と正確に診断できた。
(参考文献)
Diagnosis and possible causes of vertical root fractures. Meister F Jr, Lomme TJ, Gerstein H. Oral Surg Oral Med Oral Pathol 1980 ; 49(33) : 243-253.
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垂直性歯根破折が原因して、インプラント治療を希望される方は少なくありません。
今回のデータからも、歯根破折はいわゆるパワーゾーンの部位に発生しているようです。
正常咬合であれば、上顎第二小臼歯と下顎第一大臼歯の近心辺縁隆線部が咬合しますから、この部分に破折が生じるのは理解しやすいです。
一方、同じく正常咬合であれば、上顎第一大臼歯の中央窩と下顎第一大臼歯遠心根部も咬合しますが、この部分に破折がそれほど生じていないのは、咬合部位が歯の重心に近い部位同士であることが考えられます。
また、下顎第一大臼歯の近心根と遠心根では、近心根の方が湾曲した形態をしていることが多いために、比較的円形をしている遠心根よりも破折が生じやすいのかもしれません。
次に、破折歯に生じた瘻孔の位置を考察すると、瘻孔は歯槽骨の厚みが相対的に薄いことが多い頬側歯肉縁部に発生することが多かったと推測できます。
最後に、歯根破折歯を一般開業医が正確に診断できる割合が3割程度ということですが、予想通り低いですね。
歯科業界をあげて、歯根破折の診査・診断に力を入れていかなくてはならないでしょう。

2016年1月15日

hori (08:54)

カテゴリ:インプラントと歯内療法

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